ハーゲンダッツをはじめて食べた時に、ものすごく衝撃的だった記憶がある。
それまで食べていた代表的な市販のアイスクリームは、バニラブルーだった。
バニラブルーは、木のスプーンが抵抗なく、スっと入り、口溶けが良かったのだが、ハーゲンダッツは専用のプラスチックスプーンでないと、うまくすくえなかったのが、まずひとつ。
ハーゲンダッツはカップを持った時に、ずっしりと重みがあった。
そして、舌の上でサラリと溶けない代わりに濃厚なミルクの味が長く味わえた。
それまでのアイスクリームの概念がガラリと変わった瞬間である。
近頃のスーパーには、近隣の街で作られた独自のアイスクリームが売られるようになった。
しかしその街の牛乳で作られたからといって、どれもが美味しいわけでもない。
しかしこのアイスクリームは、私の中で一番である。
なぜなら、材料がめちゃくちゃシンプル。
そして、フレーバーの種類もこれしかない。
乳製品というものが、何を指しているかはわからないが、こんなに原材料の少ないアイスクリームは、他にない。
アイスクリームの美味しさは、ふわりとした口溶けにある。と海原先生が言っていた。
なので、海原先生は、アルミ缶の中に生クリームと砂糖を入れて、氷の中でグルグル回し、その中で凍りついた部分をすくって食べるのが、究極のアイスクリームだと言っていたのだが、まさにそう。
市販のアイスクリームが柔らかいのは、その出来立てのふわふわ感を安定剤や乳化剤という添加物を入れて、長時間保存の際に氷の結晶ができることを防いだり、脂肪の均一性を保って泡立ちをよくしているためだ。
なので、ハーゲンダッツやこのアイスクリームのうにそのような添加物を使わないとなると、どうしても口溶けの良さは置き去りになってしまう。
子供たちが園で、冬になると空き缶の中に生クリームと砂糖を入れて雪の中で転がして遊んだあとに、その中身を食べて遊んでいるのだが、じつはこれが、ホンモノのアイスクリームである。
このように雪国の子供たちにとって、雪はこの上なく楽しいおもちゃである。
私も玄関が開かなくなるほどに雪が積もった日は、嬉しくて仕方がなかった。
小さなかまくらを作って、中にアイスや果物を入れて、天然の冷蔵庫だ!と言ってよく兄弟や友達と遊んだものだ。
振り立ての雪をガラスのお皿に入れて、かき氷シロップをかけて食べて、親に怒られたりもした。
降った雪が時間と共に押し固められ、表面に5cmほどの板状になったものを切り出して組み、箱のようなものを作った。
雪を掘って、弟を埋めて泣かせたこともあった。
登校時には家の前にぶら下がったツララを折って、口に入れていた。
どれも今思えば、危ないし、汚い。
けれどもそんなことをしながら、何が危険かも知った。
大人の目を盗んで、危ない遊びを教えてくれたのは、年上の子達だった。
子供は本来、命を失うギリギリの危ない遊びが大好きだ。
なのにそれを忘れて、自分が大人になったら、それを回避させるように、すべてを管理してしまう。私もそうだった。
でも川や雪の恐ろしさは、そこで実際遊んでいないとわからなかっただろう。
だから師匠が生き残っているのは、強い命の証拠なんだと思う。
あんなに危険な人の手付かずの山々、川、そして野生動物たちが、遊び道具だったのだから。
それはもう、私たちのあとに続く子供たちが、味わうことの出来ないリアルな命の躍動の瞬間の数々だ。


