三月に入り、餌場にやってくる鳥たちも少なくなったから、しばらく脂身を付けるのをやめていた。
先日の吹雪で、土が再び雪に覆われ、森で目覚め始めた虫たちを探せなくなったからなのだろうか。
空っぽの脂身の網のそばにヒガラとコガラが交互にやってきた。
窓のそばの私を認識しているのか、時々近くまで飛んできては、ぴーぴーと鳴いている。
エサをせがまれた気分になって、窓のすぐそばの屋根から落下した雪山の上に口笛を拭いてから、無造作に脂身を置いた。
それを見ていたヒガラはすぐに飛んできて、周囲を警戒しながらつつきはじめた。
ヒガラはこころなしかやせ細っているように見えた。
後頭部の毛はボサボサとしていて、羽の色もくすんでいる。
換羽の時期に暖かい羽毛を失ったそばから、あんな吹雪だ。
寒さと飢えを耐え忍んできた逞しく、美しい命がこんなそばにある。
↑顔の毛まで換羽しているぴー様。
ぴー様の抜けた羽根を毎日拾い集め、散らばった脂粉を拭き取る。
毎日、習慣のようにお気に入りの枝の上で、おしりを擦り付け、野生の本能をひとりで昇華しているぴー様を見ていると、なんだか切なく申し訳ない気持ちになった。
それでも私が帰ってくると、ぴーちゃん!と叫び、気まぐれにそばに寄ってきては、歌を歌うぴーちゃんは愛おしい。
私もぴーちゃんと同じだ。
服と暖房器具と栄養を与えられ、野生下にあるはずの自由を差し出している。
ぴーちゃんは、私に教えられた歌をうたい、自然の歌を忘れた。
ヒガラが私にはわからない歌をうたう。
あの小さな身体から発せられる歌声が、青空に向かって響く。
どこからか、その声に答えるように違う歌が聴こえた。
彼等の濃く、短い季節がはじまる。
