ぶりっこ | 想像と創造の毎日

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写真は注釈がない限り、
自分で撮影しております。

  昔、同級生だった子が、職場に来た。

  あまり話したことはないが、共通の友達がいるのでお互いに存在していることは知っている。

  

  なにせ20年ぶりなので、互いの顔すらすっかり変わっていて、一目では思い出せなかった。

  

  彼女は私が持っていた印象とはガラリと違っている。


  見た目も話し方の中にも、私の中にある彼女の記憶とは程遠かった。


  それにしても、みーちゃんの素朴な疑問に私はいつも吹き出してしまう。


  もういい歳で、仕事のキャリアもそれなりに積んでいて、社会経験も豊富だ。

  しかも、他人を鏡にして自らの行動を振り返る賢さを持っているくせに、人に対しての許容範囲が狭い…というよりも、人の感情に対して無関心であるように私には見えた。


  しかし付き合っていくうちにそれは、無関心であるのではなく、他人と濃密な関係を結んだ経験の少なさや、他人の感情を拾いやすいがゆえに自らを無意識に守るための拒絶という彼女なりの生きるためのスキルなのかもしれないとも思ってきた。


  昨日のみーちゃんの質問はこうだ。

  私の同級生の彼女は、どうしてあんな喋り方なんだ?あの甘えたような話し方は、わざとなのか?それと元々ああなのか?ということである。


  私の記憶の中の彼女は、あんな話し方ではなかった。けど、わざと、というわけでないと思う。と答えた。


  みーちゃんは、テレビを見ていてもブリッコのようなキャラクターの芸能人にいつも嫌悪の目を向ける。


  前にびっくりするぐらいブリッコな話し方をする後輩がいて、その子が彼氏でもない男から何十万もするブランドのジャケットをもらったという話を聞いた時も、普通にドン引きしていた。


  みーちゃんは、媚びる人が嫌いだ。

  それは仕事で目上の男が、さらに目上の人の機嫌を取る人にもそうだし、男に対してそうする人もなんだろうと思う。

  だから単純に甘えたような話し方に対しても、そう思うのだろうと思う。


  私は、こないだ彼女と遊んで、いろんな過去の話を聞いているうちにどうしてあんな話し方になったのかを勝手に結論付けていた。

  みーちゃんと同じ疑問を私も持っていたのだろう。


  彼女の過去は、いろんな男で彩られているように私には思えた。

  夜の街で働いた経験もあるから、彼女は彼女であの話し方が生きるスキルなのだとも思った。


  夜の街のことはよくわからないが、仕事の前や後にお得意さんと食事に行ったり、そのお客さんの中から彼氏ができたりしていた。

  でも付き合う男は暴力的だったり、ストーカーに変貌したりするから、私はクズ男ばかり捕まえるんだ。と笑ってもいた。


  たぶん、みーちゃんには彼女の気持ちは理解できないだろうから、そういうことは言わないでおいた。


  もちろん他人のプライバシーみたいなものを私が無許可で話す訳にはいかないと思ったからでもあるけど、深く男の人と付き合ったような経験がなく、(本当のところはわからないが)経済的にも精神的にも自立しているみーちゃんには、女が男に媚びることで、男を喜ばせ、自分に惹き付け、それで金を引き寄せるという生き方のことは理解できないだろうと思ったからだ。


  彼女の仕事の仕方についても気に入らない部分があるみたいだった。

  積極的ではなく、自分から何かをしようとする気迫に欠けているように見えるという。


  それはそうだ。と私は答える。  

  彼女は正職になりたいと思っていないし、手伝い程度の仕事でいいと私が彼女から聞いていたからだ。


  なんでみんな、正職になりたくないんだ?と、みーちゃんは時々怒ったように言った。


  みんなが正職だったら、誰が正職の穴を埋めるんだよ?と私は答える。


  仕事の責任が重い人の万が一の穴埋めのための人材として、お金に困っていない子育てに重きを置く人のお小遣い稼ぎ程度の人の軽い(というのは多少語弊があるが)労働力は、正職にとっても都合のいい存在なんじゃないのか?


  家事や育児の片手間でいいと思う人に、正職と同じやる気やスキルを求めるなんて無理な話なんじゃないかと私は思う。


  あんまり人に期待すんなよ。

  そんで、あんまり簡単に人を見限るなよ。というようなことを私が言うと、みーちゃんは不貞腐れたような態度を取った。


  だけどさ、私。  

  これでも大分、丸くなったんだよ。

  今までは子供たちを枠に嵌めよう嵌めようとしてたけど、仕方ないんだ。って思うことも多くなった。それは、職場の人に対しても。

  

  みーちゃんがそう言うから、お互い、歳なんだ。と私は笑った。


  昨日、困ったことがあって気の合わない同僚と二人きりになるのが嫌で、助けてくれようとしたのを断ったんだよね。


  みーちゃんは、時々、そんなふうに公私混同する。


  バカ!せっかく助けてくれようとしてんのに、頼れよ!

  そういうとこから、ほら、ちょっとお互いに頑ななところが、柔らかくなったりするんだよ!

  彼女だって、頼られたいんだからさ!あんたと同じで!


  私が遠慮なくそう叫ぶと、みーちゃんは、やだ!わかってるけど、できない!とさらに頑なな態度を取る。


  わかってるよ。私だって。

  これは押し付け。そして、みーちゃんを好きであるがゆえの期待だ。


  みーちゃんだって、感情もコンプレックスも、変なプライドもある人間だもんね。


  私だって、そうだ。