夜寝る時に息子はぴーちゃんを寝室に連れていくのだが、その際に明かりを遮る布をかけると歌を歌いはじめる。
最近まで、ぴーちゃんは真っ暗な場所に閉じ込められるのが好きだから、喜んでいるのかと思っていたんだけど、もしかしたら違うのかもしれない。
オカメインコは、故郷のオーストラリアで、小さな集団を作って暮らしている。
絶対にひとりぼっちになることはなくて、常に他の個体と寄り添っているのだそうだ。
夜中に地震をはじめとする、予期しない大きな音や振動を察知すると、ぴーちゃんはゲージの中でひどく暴れ出す。
羽根は大量に落ち、その折れた場所から血が流れる。
一度、ひどいパニック状態になると、それを止めることは不可能に近い。
なので、夜中に地震が起きた時にはすぐに部屋の電器をつけて、ゲージの扉を開ける。
パニックが小さいうちにこうすると、ぴーちゃんはすぐに息子の肩に乗って、細かく震えながら呼吸を整えるようにして、心を落ち着かせることができるのだ。
布をかける前にぴーちゃんが歌うのは、夜の孤独の不安を紛らわせ、誰かに傍にいて欲しいと訴えているのかもしれないなと思った。
サルの孤児にある実験を施したそうだ。
まず二体の代理母を用意する。
一体は針金でできた母親に哺乳瓶を取り付ける。
もう一体は、木で作って布をかけ、本物の母親に似せて作ったが、哺乳瓶は取り付けない。
サルの赤ん坊たちのほとんどは、栄養を一切与えない布の母親にしがみつく。
そしてその後、実験されたサルの赤ちゃんたちは、必要な栄養を与えられたにも関わらず、大きくなると情緒が不安定になったそうだ。
↑冠羽をピン!と立てる時は、何かに好奇心を刺激されているときだ。
ぴーちゃんは、ペットショップの透明なプラスチックのゲージの中で、セキセイインコのひなの群れの中、たったひとりでぽつんと震えていた。
視点は定まらず、羽根はボロボロで、ひどく痩せていた。
息子が買ったときに、店員がプラスチックゲージの中のぴーちゃんを取り出そうとすると、大きな鳴き声を上げて、ひどく怯えて、必死に抵抗した。
人の手に慣れていない。
そして、ひとり餌になってから同じ仲間とも一緒にいられずに放置され続けてきたのだった。
ぴーちゃんを日中、放鳥すると真っ先に、食器棚の暗闇に逃げ込むことにいつも私たちは小さく傷つくのだった。
そして、布をかけるときに、息子を求めるように歌を歌うときも。
息子がお風呂に入る時に、一緒に連れていき、浴槽のふちに止まらせている。
するとその温かさと誰かがそばにいる安心で、目を閉じて、身体をゆらゆらと揺らし始める。
決して、差し出した手に自分からは滅多に乗らなくても、本当に怖い時には真っ先に肩に飛び乗った。
もうキミは、オーストラリアの仲間たちの場所には行けない。
それでも互いのただ唯一持つ同じ持ち物、ぴーちゃん!の言葉で、私たちは仲間として繋がっているのだ。
玄関を開けると、ぴー!と声がする。
リビングの扉を開けるタイミングで、ぴーちゃん!と、ぴーちゃんは叫ぶ。
寂しかったよ!
まるでそんなふうに言ってるみたいに。
