その女、ジルバ | 想像と創造の毎日

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  久しぶりに今やっている連ドラを見た。
  主人公が地味な40歳だから、共感したのだ。

  アパレル会社の販売員だった新は、婚約破棄された直後に倉庫勤務に回される。

  夢もなく、お金もなく、恋人もいない新が、ひとりぼっちの誕生日に偶然街で見かけた40歳以上のホステスを募集するバーの扉を開けたときから、彼女の運命は変わる。

  自分よりも年上のホステスたちが、それぞれに辛い過去を背負いながらも、今を美しく明るく気丈に生きる姿に新は生きる楽しさを見つける。

  ストーリーは至って単純なのだが、池脇千鶴がやはり良い。

  映画、ジョゼと虎と魚たちの彼女もすこぶる良かった。
  スタイルが良いわけでもなく、顔はかわいいけれどそこまで美人でもない。  
  演技もうまいか?と言われれば一瞬悩むけど、それでもこういう役は彼女にしかできない。
  そう思わせるような何かがある。
  彼女は、等身大の"人間"を演じるのがとても上手いのだろうと思う。

  新の職場のチームリーダーを務めるすみれを演じる江口のりこがまた秀逸だ。
  嫌味を言ったり、愛想がなく、ズバズバと思ったことを口にするが、ヤンキー上がりの彼女は、新たちが掃き溜めだと口にする自分の職場を誇りに思っていて、この職場にいる弱い立場の者を守ろうとするあまりについ、言葉がキツくなるのだ。

  不器用で、でも、生きることに一生懸命なキャラクターがたくさん出てくる。

  その不完全な姿の人間たちの他愛ない日常の中にある小さなドラマを見るのが私は好きだ。



 
  中学生ぐらいの頃に夢中になって見ていたが、改めて今見ると、そんなことしていいの?と、いちいち脳内でツッコミを入れてしまう自分にも驚いた。

  例えば、浅野温子に一目惚れした布施博が、タクシーで後をつけて自宅を調べたり、待ち伏せしたりする光景に、これは、ストーカーじゃん!と真っ先に思うのだ。

  エレベーターの中で、まだ知り合ったばかりの浅野温子が三上博史に唇を不意に奪われるシーンなんて、強姦じゃん!とドキドキする前に身震いするのである。

  その女、ジルバ。で、客とホステスが手を取り合って夜中まで踊る場面なんて、罰金30万円取られますが?!と、気が気ではない。

  こんなことを真っ先に思う自分は、自分を脅かすものに対して、常識で防御しようとする今の時代の常識というか、価値観にすっかり毒されているのだと愕然とするのだ。

  肉体とそれに伴う精神を大事にするために、人と人がこうやってぶつかり合ったり、傷付いたり、何かを失うことで、未熟な自分が成熟に向かう過程を実感する機会が失われて行く危機感に、同時に苛まれる。

  あらゆる事件は将来、スクリーンの向こう側でしか起こらなくなるのかもしれない。

  それが平和だというならば、肉体はもういらないんじゃないか。
  というよりも、平和ってそもそもなんの事だっけ??

  朝から私の職場では、なにやら険悪なムードが漂っていた。

  それとなく耳に入った情報では、どうやら職員同士が昨日帰り際に派手に口喧嘩をかましたようだった。

  60代の職員同士がお互いの人格まで罵りあっていたそうだ。
  それをとりあえず仲裁したのが、30歳ぐらいの若い新人正職員だったことに吹き出しそうになって、ぐっと我慢した。

  浅野温子さんもそのぐらいになるだろうか。
  彼女の役柄のまっすぐに怒る場面が好きだ。

  その女、ジルバ。のホステスさんも、そのぐらいの年齢の人たちが、自分の感情を惜しげもなく外に出していたっけ。

  自分が触れられる距離に人間らしい営みがまだある。

  そのことに少し、ホッとしたことは誰にも言えなかったのだが。