午後7:00の車内は、悔しさと悲しみと憎悪の感情に支配される。
「遠征の前の日の貴重な練習時間を削って、ミーティングだっていうから、待ってたらさ。
アイツ(顧問)、いつまで経っても来ないから職員室に迎えに行ったら、ブスっとした顔で、ふんぞり返ってる。
なんで、時間になったのに来ないんだ?だってさ。
こっちは、職員会議が長引いてると思って、練習して待ってたのにさ。
そんな態度ある?
そんで、ミーティングの内容が、コロナ対策。
それ、大会のたびに毎回、耳にタコができるぐらい聞かされてるよ。
そんなことに一時間も費やすなら、まだ練習できた!」
「それ、全部、言ったのか?」
「言ったよ。そしたらさ?
だって…とか、だから…とか、モゾモゾしだしてさ。
結局は、ミーティングの時間に練習を終わらせない俺らが悪いって言うんだぞ。
しかも、練習の効率が悪いとかさ。
だったらさ。
練習メニュー、おまえが考えろって話じゃん!
自分の好きな化学部には顔出すくせにさ。
オレらの練習場所の確保も、見学にすら来ない。
なんでオレらがアイツに怒られなきゃいけないんだよ!!」
「そうだよ!
その顧問は最低だよ。
なんでコロナのミーティングを何回もするかわかるか?
誰かがコロナに感染したときに、責任を問われたら、自分はしっかりミーティングして徹底したって言えるからだ。
なんで、不機嫌な態度で待ってたか、わかるか?
おまえたちに威厳を示して、おまえたちをコントロールしたいからだよ。
世の中は、最低なんだ。
最低なヤツらで出来てるんだ。
ママもおまえも、少なからず、そういう最低さの部分で、守られたり、逆に搾取されてるんだ!
世の中なんてな。汚ねーんだよ。
清く、正しく、美しく?
なんだ、それ。うるせーよ!って、ママは小学校の体育館にデカデカと書かれてた字を見て、心でそう思ってたね。
大人なんて、ずるいんだよ。
みんな、自分がかわいんだよ!
それは、おまえもママも実は一緒なんだよ!」
久しぶりに荒らげた声に、息子は反論も出来ずに絶句する。
「いいか。
おまえ。
ここ1ヶ月、おんなじこと言ってるぞ。
おんなじこと言っても、アイツは変わったか?
むしろ、どんどん頑なになってるだろうよ。
おまえが嫌いな気持ちで言ってることが、伝わってるからだ。
アイツは変わらない。
おまえたちが何を言っても変わんねーよ!
ママが言えば、ちょっとはなんか変わるかもしんないけど、それじゃあダメなんだ。
だいたい、自分の子供が本来の仕事の外で世話になってるのに、何が言えるってよ?
親の権力にビビって、表面的には変わるかもしれない。
でもそれじゃあ、意味ないだろ?
おまえたちが変わるしかないんだ。
憎しみだけじゃ、何も伝わらないし、むしろ自分たちを傷つけるだけだ。
先生だって、いろいろいるんだ。
上にはヘコヘコして、子供には威圧的なやつ。
でも、子供らのことを本当に考えて、校長に嫌われても、好きなことをさせてくれた先生だっていただろ?
賢くなれ。
ずるくなれって言ってるんじゃないことは、わかるな?
自分たちが間違ってない。譲れないっていうのなら、おまえたちが大人になれよ!
頭、使えよ!
おんなじことばっかし、やってんじゃねーぞ!
社会に出たら、そんなもんじゃないモンスターみたいな大人がたくさんいるんだぞ!
あえて言おう!社会は、クソであると!
けどな。そのクソさに負けるんじゃねー!」
そう言いつつも、心の中ではそのうち、その顧問にお礼の挨拶をしなければと考えてもいた。
子供に好きなようにぶつかれよ!と言うのなら、その尻拭いはいつでも親がしなきゃなんない。
めんどくさいな。
けど、息子の生意気さを肯定してきたのは、自分だ。
暑苦しくなってしまって、すぐに恥ずかしくもなる。
そのあとに、息子が忘れ物をして、学校まで届けろと言ったから、また私にヤキが入ることになる。
傲慢でバカで、愚かな、しかしまっすぐであることが美しさであると信じて疑わない、まだまだ若い我が息子であった。
萬田緑平@ryokuhei
子供達が可哀想だ。女性も。強気の男性は飲みにも行けるし、マスク無しでも出かけられる。子供は文句言えない従うだけ。何に従ってるんだ。教師に。教師は学校に。学校は行政と世間に叩かれないように。世間とは何か。テレビしか信じない国民だ。最終的にはその国民を代表してテレビが裁きを入れる。
2020年07月21日 21:47

