北海道北東部の知床、
オホーツク海に今年も流氷が
やってきました。
地平線の向こうから岸まで
びっしりと氷に覆われています。
つい二日前までは、
遥か遠い沖の向こう側にあったそうです。
流氷は、風の向きや強さによって
たった一晩で
消えたり現れたりする
不思議な現象なのです。
毎日、毎日、
岸を叩きつけていたあの波は、
一体どこに行ったのかと思うんです。
一定のリズムを刻んで
絶えることなく寄せては返すあの波。
海は氷に閉ざされて、
音を失います。
春が一斉に命を爆発させる前の
静けさで。
海に注ぐ滝も
時を止めたように
流れる水の瞬間を
氷点下の世界に閉じ込めています。
熱が急激に下がる合図で、
すべての命の動きが
一斉に封じ込められる冬。
流氷は毎年ごとに
少しずつ小さくなっているようにも
南下する距離が短くなっているようにも
思えます。
初めてのスノーシューで
息を切らして歩く友人が
シャッターをしきりに切っている
私に尋ねます。
撮ったのは、どうするの。
撮って、何が楽しいの。
それは、生まれた赤ん坊を
どうして撮るの?と
聞くことと同じだと思うんです。
今見た光景を
鮮明な色のままで
未来に持って行きたい。
振り返ったときに
そのときの感情を
もう一度同じ温度で感じるために
カメラに閉じ込めているのです。
それは、思い出という財産。
なんてクサいセリフは
もちろん口には出しません。




