バカでかいスーツケースには、
大量の教科書やノート型のパソコンが
入っていました。
帰宅早々それらをリビングの
テーブルに広げて、
大晦日も元旦も関係なく、
黙々と勉強している娘です。
そこまでしなくちゃならないほどの
大量の宿題があるの?と尋ねると、
追い詰められることが嫌だから。
と答えました。
娘を見ていると可哀想だなと
思ったり、
逆にとても羨ましいなと思います。
羨ましいなんて言うと娘は、
ママは呑気で羨ましいよ!と
叱られます。
休み明けには病院実習があるそうです。
そこは机上の勉強とは違って、
娘の苦手なコミュニケーションスキルが
試される場所です。
どうしたら、
怒られても凹まないでいられるのかな。
どうしたら、感情をコントロール
できるようになるんだろう。
娘が私に言いました。
私だって
怒られたら今でも泣くんだよ。
だって、その人の
私への怒りや落胆の感情を
口調や表情から感知すると
自分が否定されてるみたいで
そりゃあ悲しいし、ショックだもん。
でもさ。
その人が私にどんな感情を
抱いたかなんて、
本当は関係ないんだって思う。
その人が私の何がダメで、
どんな行動や言動に対して、
注意をしているのかを
思考を使って分析するんだよ。
その人は私自身を
否定しているわけじゃない。
その人は私の一部分に対して、
自分の経験や価値観と照らし合わせて、
違うと思う部分を指摘してくれている。
その場で答えられないことは
あとで考える。
自分で考えて、
自分に否があるときは謝る。
すぐに直せるところは
今後の行動で示す。
自分に否がないと思うことは
勇気を持ってその理由を
伝わるように話す。
学校の先生たちに
娘はどんどん質問するそうです。
そうすると、その分だけ
たくさんのダメだしをされるそうです。
だから時々凹んで、
もう先生方には話しかけないほうが
楽なんじゃないかと
思う時もある。
でも、今、わからないところを
素通りしてしまったら、
私はきっと先には進まない。
だから、怒られても、
先生が忙しくて、不機嫌でも、
関係なく話しかけに行くんだよ。
それって、勝手かな?
コイツは不器用だけど、
本当はとても賢いなと
親バカだけど、こういうことを聞くと
感心します。
人の心の機微には鈍感かもしれないけど、
本当に大事なことをいつも
意識している。
見栄を捨てたんだと思います。
自分を探すことなんて、
とうにやめたみたいだった。
理不尽も不平等も常識も評価も
今、目の前にある課題の前では
無意味であるのでしょう。
私は自分の力でお金を稼いで
生きて行きたい。
だから、結婚はしないかもしれない。
それでもいい?と
娘は私によく聞きます。
私はいいよ。と答える。
自分の人生なんだから、
自分だけのために生きなさい。
それだけが私の望みなのです。
自分が誰かに必要とされる人生。
娘が欲しかったのは、
それなのかもしれないと
思うのです。
ずっと自分は助けられるばかりで、
誰の役にも立たない何もできない人だと
嘆いていた。
なりたいものもなく、
誰かに勝ちたいと必死になったこともない。
好きではない剣道で、
初めて勝ったときのあの
ぼんやりとした表情を思い出します。
ママ。人に勝って何が楽しいの?
娘が米津玄師が紅白に出ているのを見ながら、
私、lemonじゃなくて、
この曲だけが好きなんだと
言いました。
私はこの人のことを名前しか知らなくて、
でもこの曲を聴いて、
少しだけ好きになりました。
アイムアルーザー
ずっと前から聴こえてた
ポケットに隠してた声が
私が何度も何度も再生する
この曲の歌詞を一言一句間違わずに
口ずさむ娘は、
あんなに大人しそうな顔をして、
ポケットの中に密かな野望を
ずっと隠していたんだって思うんです。
娘は誰かに勝ちたいんじゃなかった。
彼女はいつでもすぐに
自分を否定してしまう自分に
勝ちたかったんだな。