繰り返しながら徐々に
音の層が厚くなる。
粒のような音の周りに
流れるような線の音が重なる。
物語の始まり。
最初の一瞬の印象。
クライマックスよりも
イントロ部分の興奮が好き。
これから一体
何が起こるのだろうという
ワクワクとドキドキ。
不安と期待が入り交じる瞬間こそ
一番の官能だとすら思う。
娘が昔の曲っていいよね。と言って、
私からすると恥ずかしいような青春を
思い出させるような音楽を
大音量で聴く。
娘が好きだという曲は
たいていドラマチックなイントロで
始まっていた。
音の粒に乗って
言葉が風景を作る。
主人公の心情に自分を重ねながら
感情が動き出すのを楽しんでいる。
音。言葉。風景。心。
幾つもの要素が重なり合って
響くもの。
心を揺らして、
その変化を味わうことは、
人が持つ、最高の幸せであり、
最高の苦しみだ。
一度振られた
離れた距離にいる先輩と
遊ぶ約束をしたのに
ドタキャンされて、
落ち込んでいる娘。
一度その彼を見かけた息子が
あの人、かっこいいよ。
と珍しく言った。
背が高くて、顔もかっこいいけど、
雰囲気がいい。
そう言うと娘が
そうでしょ!そうでしょ!
選ぶ言葉もなんか、いいんだよ。
おしゃべりじゃないし、
気も利かないけど、
なんかいいの。
いいぞ。
どんどん恋をしろ。
たくさんたくさん傷つけて、
傷つけろ。
自分を好きにさせることよりも、
自分が好きになれ。
音楽も風景も言葉も
恋をするととても美しくて
とても残酷に見えるんだ。
その変化を味わうために
キミたちは生きてる。