薬屋さん | 想像と創造の毎日

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写真は注釈がない限り、
自分で撮影しております。





我が家には三ヶ月に一度ぐらい
不定期ですが、
置き薬の点検に薬屋さんが
いらっしゃいます。
地区の担当者がそれぞれいるらしく、
何年かに一度代わります。
辞める人も多いらしく、
入れ替わりの激しいところなのだとも
思います。

今、我が家に来ている担当の人が
一番長いです。
しかし私はこの方が
大変苦手です。

私はこの通り。
優柔不断でありまして、
あまり知らない人に対しては、
はっきりものを言えないところが
あります。

この方はご自分で以前、
精神を患ったことがある。
そうおっしゃってもいて、
だから尚更、
私は腫れ物を扱うように
彼に接してもいたんだと思います。
そんな自分がめんどうだと
そう感じるから苦手だと思うのでしょう。

この方はあまり人の目を見ません。
いえ。見ているとしても、
どこか人に対して怯えているのに
それを頑張って払拭している。
そんな目でした。

彼は、同情のために
優柔不断になっていた私に対して、
この人は話を聞いてくれる人だと
思ったのでしょう。

毎回、話があれこれ長くなり、
しつこく営業してくるようになったのです。
私はそれでも必要ではないものは、
断ってもいたのですが
夫が在宅していたときに
彼の強引な営業手法と
私の中途半端な態度に
業を煮やして、
彼に対してキツい言葉と態度を示し、
ある日追い返してしまったのです。

その時の彼はとてもかわいそうでした。
私が、
「わかるけど。あんな言い方はないよ!
   彼だって、営業が仕事なんだからさ!」
そう言うと、夫は
「俺が営業職だから、余計にわかるんだよ!
   あんな営業の仕方は失礼すぎるし、
   失格だよ。
   おまえも買う気がないなら、
   最初から拒絶しろ。
   相手に期待させんなよ。」
と言いました。

その通りだと思うけど、それでもどこかで
割り切れない自分がいました。

ああいうタイプは良くも悪くも
鈍感なんだとも思いました。
だから、気づかせなくちゃ
いけないのかもしれない。誰かが。

私はもう彼がうちに
来なくなるのではないか?
傷ついて、仕事をやめちゃうんじゃないかと
少しだけ心配でした。

けれども何ヶ月かしてから、
また彼はやってきました。

少しだけ怯えているようにも
見えましたが、
私は相変わらず、
全部の話を聞いて、
いらなかったら、
いらない。ごめんねー!と言います。

彼はそうですよね。
と残念そうにもするけど、
少し笑って答えました。

それでも彼がずるいのは、
夫が在宅していると営業をかけずに
薬の点検だけをして、
すぐに帰ることです。

しかし私はそんな彼を
嫌いになりきることは
できなかった。
夫は
「早く担当代われや!」
と彼が帰ったあとに
毒づいてはいるのですが。

不器用なんだと思います。
彼は。
息子でさえ、その様子を見ながら、
「あの人。空気を読むのが苦手なんだね。」
と言います。

きっと人が怖くて、
それでも日々なんとか
頑張ってもいるのでしょう。

薬を入れ替える作業をする手の甲が
湿疹で荒れているのが
痛々しかった。

顔にもその跡が残っていて、
彼は自分が病んでいたときの話を
私が聞いてもいないのに
延々と話すこともありました。

「あいつはな!そうやって、
   同情を買うっていう
   一番やっちゃいけない方法を
   使ってるんだよ!」
夫はそうは言いますが。

私はおかしかった。
けど、その手法が通じてる場所も
たくさんあるんだとも思いました。

田舎には退屈で
やさしいお年寄りが
たくさんいるから、
こういう営業方法が
成り立っている側面は
あるのかもしれない。
そんなふうに思いました。

別にいいじゃないの。
お金がある人は買えば。
騙されてるってわけでもないんだしさ。

夫は自分に重ねてもいたんだと
思います。
時にきれいごとだけでは、
成り立たない自分の仕事と。

どんな仕事でも
みんな生きるために
必死にしている作業であることは
間違いないのでしょう。


いつまでもフラフラと
非正規社員として働く私の弟に
昨日、夫が正社員の試験を受けろ!
と言いました。

向上心など欠片もなく、
結婚にも興味のない
半分ニートの我が弟は、
それを笑って聞き流します。

「責任重くなるからなー。
   今、一人で食べてくには困ってないし。」
弟は責任よりも
ひとりの自由を選んだんでしょう。

「末っ子だからな。
   うちのババアが
   甘やかしてたんだ。」

私があとでそう言うと、
夫は苦笑いしました。

バカな子供ほどかわいい。
まあ。それでも。
誰にも迷惑かけてないんだから、
それで、いいだろう。

しかし。
母親的な目線は、
時に甘い毒だ。