連結納税の導入を検討している皆様、
連結納税はリスクが高いので導入にはくれぐれも注意して下さいね。
何せ導入コストが高い。税理士報酬が高い。
そのくせ、落とし穴がいくつもある。
しっかりとシミュレーションの上導入して下さい。
大方の会社の場合、導入する必要がありませんので、あんまり関係のない話かもしれませんが。
で、連結納税というのは、簡単に言うと、親会社と、その100%子会社を一つの会社とみなして課税主体とする納税制度のことをいいますが、メリットは、
・親会社の黒字と子会社の赤字(ないし、親会社の赤字と子会社の黒字)をぶつけて、納税額を下げられるということが挙げられます。
通常は、赤字会社は税額がゼロになり、黒字会社はフルフルで黒字分に対応する税金を納めますが、黒字と赤字を相殺した残りだけの分だけ税金を払うということは、税額が安くなることを意味しますね。
また、親会社の繰越欠損金(条件によっては子会社の繰越欠損金)を、今後のグループで獲得する黒字とぶつけて納税額を下げれるというメリットもあります。
過去に親会社が多額の繰越欠損金を保有している場合、それらを今後の子会社も含めた黒字とぶつけられたら、グループ全体の税額が下がるメリットがあるでしょう。
逆に、過去も未来も親会社も子会社もずーっと黒字を予定してる会社にとって、連結納税の導入は何のメリットもありません。税理士報酬もバカ高いものになりますので、はっきり言ってやめた方が良いでしょう。
確実に導入を検討した方がよい会社は、
①親会社が多額の黒字体質であって、100%子会社が多額の赤字体質である企業グループ
②親会社が多額の赤字体質であって、100%子会社が多額の黒字体質である企業グループ
③親会社に多額の繰越欠損金があり、100%子会社が今後多額の黒字体質となる企業グループ
そんなところでしょうか。
(多額に限定したのは、少額だと税務メリットも少なく、運営コストの方が上回る可能性があるためです、この辺はシミュレーション次第です)
なお、
④親会社に多額の繰越欠損金があり、親会社が今後多額の黒字を獲得する企業グループ
は、導入をしない方がよいかもしれません。
なぜなら、住民税が掛かってくるからです。
住民税は、連結納税導入前の「連結欠損金」が無視されるようでして、多額の繰越欠損金があったとしても、連結納税を導入することにより、住民税の計算上、親会社が保有していた繰越欠損金は「連結欠損金」となり、単年度の黒字額の分だけ住民税が掛かってしまうこととなります。
例えば、
・親会社の連結納税導入前の欠損金:100億円
・子会社の連結納税導入前の欠損金:0円
・親会社の今年の利益:10億円
・100%子会社の今年の利益:1億円
・利益に対する法人税率:30%(厳密にはもっと低いですが、計算の便宜上)
・利益に対する住民税率:6%(同上)
・事業税率:今回は無視
だとし、連結納税が適用されるとします。
法人税は、
利益:10億円+1億円-11億円(繰越欠損金から充当)=0円
⇒利益×法人税率=0円
と計算されますが、
住民税は、それぞれ算定されることとなり(住民税には連結納税の概念がないので、それぞれの個別利益を元に算定)、
☆親会社住民税:10億円(親会社利益)×住民税率(約6%)=6千万円
☆子会社住民税:1億円(子会社利益)×住民税率(約6%)=6百万円
⇒合計:66百万円
となります(均等割とか細かい話は割愛します)。
ん???
親会社に住民税???
はい。ここで疑問に思った方は非常に直観力がある方ですね。
連結納税を導入しない場合、親会社は繰越欠損金がありますので、住民税が掛かりません。
つまり、連結納税を導入しない場合、
・親会社の法人税及び住民税=0円 (【利益<繰越欠損金】であるため)
・子会社の法人税及び住民税=1億円×36%(法人税率+住民税率)=36百万円
ということになります。
なのに、連結納税を導入すると親会社の繰越欠損金は無視されてしまう。。。
うーん。連結納税って微妙(笑)
いかがでしょうか。
☆連結納税を導入した結果の税額=66百万円
☆連結納税導入しなかった結果の税額=36百万円
ということで
④親会社に多額の繰越欠損金があり、親会社が今後多額の黒字を獲得する企業グループ
は、連結導入をしない方がよいかもしれないのです。
これ、僕のクライアントで実際に起こった現象です。
しかも、子会社が赤字でして。。。連結納税をしなければ税額がゼロだったのに、連結納税を導入したばっかりに、親会社の利益分だけ住民税が掛かってしまった。。。
因みに僕は税理士としてでなく、決算コンサルとして関与していたので、この辺はアンタッチャブル。
でも、全然盲点でした。税理士も全く気付かずに、住民税ゼロ円として申告していたのでおそらく盲点だったのかと。。。
都税事務所から電話が掛かってきて判明した事実。
親会社に多額の繰越欠損金があったのに、まさか連結納税を導入したことが原因で、住民税がかかるとは。。。
僕的にとても衝撃的だったので、連結納税の導入を検討している企業は、是非色々な角度からシミュレーションしてみてくださいね。
手間がかかるし、色々盲点があるし、コストがかかるし、やめられないし。。。
デメリットが色々ある中、それを上回る便益があるか、慎重に見極めたうえで導入して下さい!
ではまた☆