- 名前 マリルリ(C){フェアリー}
- 収録パック サン＆ムーンシリーズ 拡張パック「超爆インパクト」
- 購入価格 50円
- イラストレーター 木村直代
今回は木村直代氏の描かれたマリルリのポケモンカードを鑑賞します。
木村直代氏はポケモンカード初期の頃からイラストを担当してきたベテランのイラストレーターさんです。
イラストの世界観
まず、マリルリとはどんなポケモンか、ポケモン図鑑の説明をまとめると以下になります
- 長い耳がセンサーになっている。水中の音で動きを探る
マリルリの耳は、潜水艦のソナーのような役割を果たしているわけです。
私の勝手な推測ですが、水中の動きを探るのは魚などを探す狩りの為でしょうから、「マリルリって肉食なのか？」と意外に思いました
（ウサギのように敵から逃げる為とも考えたのですが、地上にいるマリルリが水中の敵から逃げる必要もないので、やはり水中の獲物を探す為と考えるとしっくりきます）
今回のイラストは、まさにその長い耳をセンサーにして、水中を探っている様子が描かれています
マリルリのイラストは可愛くポーズを取っているものが多いので、マリルリの耳を活用する生態にここまで迫ったイラストは珍しいと言えます。
イラストの構図
奇をてらった構図は取らず、動物の生態を記録した写真のように、耳を水辺に傾けたマリルリにフォーカスした構図になっています。
また、背景の岩場と川が斜めになっていることで、激しい流れを表現しています。
イラストの配色
灰色の岩場と濁った白い水の流れなど全体的に地味な配色の中で、鮮やかな青色のマリルリがとても目立ちます。
影をほとんど使わず、光沢で肌の質感を表現することで、明るさが増しており、より鮮やかな印象を強くさせています
以下は余談なので、読まなくても問題ありません
絵画鑑賞に知識は必要か？
絵画を鑑賞する時に、その絵についての知識が必要かどうかはよく議論になります。
絵画についての知識や時代背景、テーマやコンセプトが分かっていればより深く鑑賞できるという意見があります。
例えば ヤン・ホッサールトの描いた「ダナエ」は、何の知識もなく見れば光の雨を受けている半裸の女性でしかありませんが、ギリシア神話を知っていれば、ゼウスが黄金の雨に変身してダナエを妊娠させた一場面であることが分かり、ルネサンス期にキリスト教絵画から離れて神話を題材に官能的表現に挑戦した作者の意図が分かり、絵の見方が変わります
現代芸術に至ってはコンセプトが全てと言っても過言ではなく、ただの空き箱やジャガイモの写真が、「コンセプト」を持つことで数億円の価値を持つ芸術に変わります。
これらの芸術作品について、コンセプトの説明をしてもらわない限り、見ただけで理解することは不可能でしょう
一方で、「歴史やコンセプトを説明しないと価値の分からない芸術なんて、ニセモノである。彼らは絵を見ているのではなく、情報を見ているだけだ」という意見もあります。
何の知識もなく見ても感動できる作品が本物であるというわけです。
この意見もよく分かります。子供の頃にバーンズコレクション展で見た名画の数々は、何の知識もない私に大きな衝撃を与えました。
ここでポケモンカードに話を戻すと、ポケカは何の知識もない人にポケモンを紹介するのが目的の１つなので、説明なしで分かるイラストがほとんどを占めます。
ポケモンカードは、基本的には説明なしで楽しめる芸術であります
生態記録としてのポケモンカード
ここで今回に鑑賞するマリルリのイラストを見てください。マリルリが何をしているか、予備知識なしで見て分かる人はいないでしょう。
それでは、このイラストはポケカのイラストとして不適切なのでしょうか？ 私はそうは思いません
ポケモンカードは芸術であると同時に、生態記録でもあります。
動物の生態を記録した写真について「何の知識もなく、見て分からないといけない」と言う人はいません。
動物の生態について勉強して、写真に記録された動物の行動を分析するのが楽しいわけです
ポケモン好きの人達は、ポケモンについては遊んでいる内に自然と「勉強」しているので、ポケモンの知識が豊富な人も沢山います。
ポケモンカードで、自分の知識通りの行動をしているポケモンを見るのは楽しいことです。
確かにポケカは知識なしで楽しめる芸術作品でありますが、ポケモンマニアが見て楽しめる生態記録でもあるのです。
ポケモンマニアを喜ばせるような、マリルリの生態を捕えたこのイラストは、ポケモンカードに相応しいものなのです