感動作というよりは,切ない作品だ。
東ドイツ国家保安局のエージェントが,作家の自宅を盗聴する。その暮らしぶりを盗み聞く一方で,大臣や保安局の実態を目の当たりにし,次第に・・・。
原題は,「他人の生活」だったらしい。邦題は,作品中で作家が弾く,ベートーベンの曲のタイトル。
それまでに迷いが生じていたエージェントは,この曲を聴いたことが決め手となって,心が揺れる。
「この曲を本気で聴いた者は,悪人になれない」(スターリン)
危ない橋を渡り始めたエージェントにハラハラする。主演のおじさん,ウルリッヒ・ミューエは,表情だけで魅せる,とても良い演技。
女優役のマルティナ・ゲデックも,すこし退廃的な感じがいい。ただ,なぜ恋人の作家を国家保安局に売ってしまうのかが,伝わらなかった。麻薬がほしいから?
クスリと笑わせるところもあるなど,とても完成度が高い。
ラストも秀逸。最後のセリフもイカしてる。
号泣するような映画ではないけれど,心に染みる作品。
今の日本映画に欠けているものが,ここにはある。
- アルバトロス
- 善き人のためのソナタ スタンダード・エディション