先日、母の誕生日だった。
弟夫婦の行きつけのイタリアンの店で
父、母、弟夫婦、弟の娘、私と下の娘、
総勢7名でランチをした。
弟と母はものすごく酒を飲む。
喰道楽なところも
2人はよく似ている。
母は元来、おしゃべりなのだ。
ただアスペ全開なので
内容は全然面白くないけれど。
私は母の向かいに座っていた。
お祝いにみんなが集まって、
賑やかな会食。
本日の主役とあって、
始終母はご機嫌だった。
盃が進み、喋っていると
「私は夜、あれこれ考えちゃって
眠れないのよ」と母は言った。
眠れないのは本当は
昼酒を飲んで、昼寝し、
夕方起き出し、
身体を全く動かさないまま、
夕食をとって
寝ようとするからだと思うが、
どうせ私の言うことは聞き入れないから
黙っていた。
だが、何の悩みがあるというのか。
思春期にグレて高校中退した弟も
今やすっかり立派な親方となり、
建築現場で人を使うほどになった。
弟の奥さんもウチの両親に
いつも気を遣ってくれるいい人だ。
私もとりあえずは普通に暮らしてる。
お金にも困ってないし、
母も数年前に乳がんになったが、
再発もなく、他に持病もない。
何を悩むのか。
「あれこれ考えて眠れないって
どんな事を考えるの?」
「まぁ、要は、鬱よね」
母は続ける。
「昔、住んでたところの近くに
大きなブロック塀があったの、
覚えてる?
私があそこに原付バイクで
ぶつかって死ねば、自殺じゃなくて
事故だと思うかな、と思ったり…」
弟がグレて大変だったとき、
母の日記に
「◯(弟の名前)が問題を起こしたら
私はバイクでぶつかって死のう」と
書いてあったと、弟が昔、言っていた。
その頃の話かな。
かなり飲んで喋ってるから
要領を得ない。
眠れないあれこれの話は続く。
「お父さんはいつも私を見下して…
でも離婚して1人でやっていくのも
無理だなぁと思って、そうすると、
自分の気持ちを切り替えるしか
ないんだなぁ、と思ったりさぁ…」
父は母を見下している。
それは事実だ。
普通の奥さんらしくできなくて
アル中になっている母やその兄弟を。
でも、父だって
融通のきかない昔の男だ。
娘の私からみると
タイプの違うアスペ同士の夫婦で、
どっちもどっちなんだけどな。
母は祖母(母の実母)とも
折り合いが悪かった。
だから、離婚して実家に戻ることも
できなかったのだろう。
父は結構、高給取りだったし、
だから離婚しなかった。
気持ちはわかる。
離婚する勇気も持てず、
夫への不満も消えず、
ただ毎日を過ごしてる。
私と同じだ。母もカサンドラ 。
でもさ。
弟と私、
もう実家を出て20年以上だよ。
母、77才。
死ぬまで父を恨み、
酒に逃げる生活を
続けていくのだろうか。
死ぬまであと何年、
恨み、苦しみ続けるのか。
私だって、
夫も、娘も、
家族全員が嫌いだと思う日は
いつもあるけど。
あんな年まで、
寂しさややりきれなさを
私の人生の柱にするのは嫌だ。
母のカサンドラぶりを目の当たりにして
あんな風にはなりたくない。
痛切に思った。
私はカサンドラの終身刑は受けない。
少しずつでも、私は私の人生を
楽しんで生きてやる。
小林麻央ちゃんの人生の全てを
病気が占めなかったように。
私は私の人生を
カサンドラでいっぱいにはしない。
心に誓った。