(額装事始➀より続き)

そこから、
男性店員との額縁探しがまた始まった。
私もせっかくなら
作品にピタリと合うものを選びたくて
彼の話に耳を傾ける。

その人は
先ほどの女性店員や
別の若い店員にあれこれ言って
在庫の額を持って来させたりした。
…でもね、
なんかちょっと…場当たり的…?

女性店員がメジャーを使って
サイズが額に実際に入るかどうか
確認したのに比べて、
男性店員は自分の中のイメージ先行で
探し回る感じ。

「これはどうかな?
   ○さん、あの額持ってきて」と
他の店員に指示を出すのも、
なんだかちょっと上からだ。

手持ち無沙汰に
女性店員たちを眺めると、心なしか、
ヤレヤレという表情にも見えなくもない。
ため息の気配すら漂うよう。
気のせいかもしれないけど。

オシャレなナイスミドルは
だんだんかすんで行った。
客の希望にすり合わせる、というより
自分の思いだけで動いてるような…
最後はそんな気がした。

私の額縁は結局、
女性店員の提案通りと相成った。

女性店員はあくまでも
「お客様のお好みで」を貫いていた。
試されてると感じるほど。

額選び。
私はどの額があの絵に似合うと思うのか。
本当にこれでいいのか。
私の心の中の、
美意識や価値観、お金。
いろんなものが対峙した時間だった。

芸術家って、しょっちゅうこんな
真剣勝負みたいなことやってるのかな。
自分の絵は、
この線、この色は
本当にこれでいいのか。
思った感じと出来上がりに
違和感はないのか。
この作品にいくらの値段をつけるのか。
この絵は売れるのか。
受け入れられるのか。

額縁が出来上がるまで、
そんなふうに、
作品の作り手側のことなんかを
ぼんやり考えたりして過ごした。

2週間ほど経って、
額縁が出来たと電話があった。
作品を店に持って行くと
例の男性店員がいて、
作品を額縁に収めてくれた。
「この表のアクリル板のフィルムは
    お客様の方で剥がして下さい」
ガラス板の代わりに
透明なアクリル板が入っていて、
保護用の茶色の紙が貼ってあった。

帰宅して、いそいそと箱を開ける。
フィルムを剥がす。
いざ!ジャーン!

…?

全く男って奴は…と
思わず、ため息が漏れた。
フィルムは、アクリル板の両面に
貼ってあった。
額の内側のフィルムは
お店がその場で
剥がしていいんじゃないの?
結局、入れてもらった絵を外し、
内側のフィルムを剥がして
再度セット。…完成。

彼の左手薬指には
指輪がはまっていた。
見てくれはいいけれど
ちょっと上からで、こだわりが強そうで
何を言っても聞き入れなくて
空回りも多そうだ。
こんなダンナさん…
奥さん大変だろうなと
ひとりごちた。