吉田伸夫 著『時間はどこから来て、なぜ流れるのか?ーーー最新物理学が解く時空・宇宙・意識の「謎」』を読みました。
ブルーバックスです。





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今回の本のお供はドラえもんの貯金箱でーす。

時間と言えば、タイムマシン!
やっぱこの手の本にはドラえもんがピッタリですねー!




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『時間の正体は、宇宙の起源につながっている

時間とは何か?
時は本当に過去から未来へ流れているのか?
「時間が経つ」とはどういう現象なのか?
先人たちが思弁を巡らせてきた疑問の扉を、いま、物理学はついに開きつつある。
相対性理論、宇宙論、熱力学、量子論、さらには神経科学を見渡し、科学の視座から時間の正体に迫る。』
(カバー裏より)







私、最近、エントロピーとか相対論とかに関するブルーバックスを何冊か続けて読んでおりまして、その流れでこの一冊です。

この手の本を読んでいるうちにだんだんと「時間」に対しての考え方が自分の中で変化してきたので、私の認識を確かめてみたくなって、面白そうなタイトルのこの本を旦那さんに買ってもらいました。

(私も一応大学は理学部の物理学科に進学したんですけど。
当時は正直たいして物理に興味がなかったので、あんまり理解していなかったのですよねー…
大学生なんて大抵はそんなもんですよね 汗)





相対論についての本を読んでいると、時間の空間に対する優位性などはないことーーーニュートン的な宇宙全体に均一に流れる時間などはないこと、が理解できます。

そうなると、「時間が空間と同じように扱われるならば、時間って実は流れてないんじゃないの?」って疑問が浮かんできました。



エントロピーについての本を読んでいると、「エントロピーを持つということを、擬似的に、非常に短い時間にあらゆる可能なパターンを遍歴する性質だと思うと、時間というのは点として扱うことができず幅を持ったものと考えなければいけないのではなかろうか、つまりはそもそも時間で微分するってことはできないんじゃないのか?」という疑問が浮かんできました。

そんな疑問から、「人間の意識が時間の流れを作り出しているというのは、どうやら本当のことっぽいなぁ」と考え始めまして。
要は、私も遅ればせながらやっとこさ、自然に感じる日常の感覚を捨ててもいいんじゃないか、時間の流れを否定してもいいんじゃないかと、覚悟ができたのでした。

で、この本を読み始めることになるわけです。






本書は二部構成になっております。


第一部にあたる第一章から第三章までは相対論のお話です。

ニュートン的な斉一な時間の流れはこの世界にはなく、重力の作用によって時間の尺度は変化するし運動状態に応じて異なる時間座標が必要だし、場所によってそれぞれの時間があること。
それから、時間と空間は区別されるものではなく、時空として考えるべきものであること、だから時間は空間と同じように拡がりをもったものであり、流れるものではない。
つまり絶対的な現在などというものはなく、過去も未来も現在と同じようにただ拡がっているものであること。
 
…そんなお話が書かれています。

このあたり、第二部を語るための準備みたいな感じです。
本書のメインは第二部なのです。






第二部では、第四章から第七章までかけて、時間の謎に迫ります。

第二部をまとめると…

宇宙の始まりであるビッグバンというきわめて均一性の高い整然とした高温状態から、エントロピー増大の法則によってこの完璧な状態が崩れていくことで時間に過去から未来への向きが生まれる。

現在の宇宙では、自然界の最低温度である絶対零度(零下273℃)の近くまで冷えた広大な宇宙空間の所々に、表面温度が数千から数万度という熱い恒星が点在しており、この大きな温度差が光の放射という形で熱の流れを生み出す。
(ここでは、極端な高エネルギー状態から低エネルギー状態へと熱が流れる過程なので、急激なエントロピーの増大が起こる。
急激なエントロピーの増大の渦中では部分的にエントロピーの減少が起こることがある。)

恒星を中心とする惑星系が形成されると、点在する恒星からの光が奔流となって惑星に流れ込み、この流れが(液体の存在や多様な元素の存在など一定の条件が揃えば)分子のヒートポンプを利用して部分的なエントロピー減少を実現することができて、生命の発生を可能にする。

そのようにして生まれた生命である我々の意識というものは、脳の神経活動の様子から、瞬間が連続して連なっているものではなく、共同現象とみなせる持続的な神経活動のパターンに由来する時間的な広がりを持つ構成要素がいくつかの要素を共有することでつながり、総体として時間方向の変化がある一連の意識となることで形作られていると推測できる。

そして、著者はこれこそが心理的な時間の流れ、つまり時間は流れておらず向きを持って拡がっているだけなのに我々には流れているように感じられることの実態ではないだろうか、とまとめています。







第二部、すごく面白かったです。


時間のお話なので量子論にまで話が及ぶのは当然ですが、時間の感じ方を探るために神経科学まで延びていくのが、すごくワクワクしました。

ビッグバンから始まって私たちの神経細胞のお話までつながってくるなんて、本当に壮大なお話ですよね。
なんか超大作映画でも観た気分になりました。
あるいはミルトンやダンテの叙事詩でも読んだみたい。

そして、どうやらここ最近の読書で私が考えていた時間の謎、それほど的外れなことではなかったみたいで安心しました。


物理の本を読むと、この世界はなんて不思議なんだろうって今更ながらに驚きますね。
ファンタジーの魔法の世界よりも、この世の方がずっと不思議な世界なのだなー…






ところでその他に、第二部では時間に関することとして、いわゆるラプラスの悪魔的な決定論を量子論によって否定するお話とか、タイムマシンのパラドクスなどについても寄り道してくれていて、その辺りもなかなか面白いですよ。


そして、相対論の話を読むたびに私の脳裏に思い浮かぶプルーストの『失われた時を求めて』が、なんとこの本の第二部で取り上げられていました。
私は時間の拡がりを持って人間を考える時、ベケットが『プルースト』で書いていたように、『失われた時を求めて』に出てくる登場人物たちのことを実は時間の幅にまたがる怪物のような姿でプルーストが描いているということ、それが思い浮かぶんですけど。

本書では有名なマドレーヌ入りの紅茶から拡がる回想を取り上げて、時間が流れるのは現実でなく心の中のことなのだということが書かれていました。

時間について語るときにはやはりあの偉大な小説『失われた時を求めて』が誰でも思い浮かぶみたいですね。








時間についての本、とても面白いです。

他にもブルーバックスから時間の本が何冊か出ているみたいなので、色々読んでみたいと思います。
















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