矢部嵩(Takashi Yabe)著、『保健室登校』を読みました。
角川ホラー文庫です。












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今日の本のお供は、3年前くらいかな?に、作ったクマちゃんのマスコットです。

セリアでキットを買って作りました。

子供向けのキットだったんですけど、可愛いですよねー?






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『とある中学校に転入した少女。
新しい級友たちは皆、間近に迫るクラス旅行に夢中で転入生には見向きもしない。
女子グループが彼女も旅行に誘おうとすると、断固反対する者が現れて、クラスを二分する大議論に発展。
だが、旅行当日の朝、転入生が目の当たりにした衝撃の光景とはーー!
19歳で作家デビューを果たした異能の新鋭が、ごく平凡な学校生活を次々に異世界へと変えていく。
気持ち悪さが癖になる、問題作揃いの短編集。』
(カバー裏より)






保健室に集う保健委員の女の子3人達の、中学生活を描いた学園連作短編集です。

上に引用したカバー裏の紹介文を読むと、なにやら謎めいたミステリっぽいような印象を受けると思うんですけど。
その印象で本書を読み出すと、戸惑うことになると思います。

本書は、いわゆる普通のホラー小説ではありません。
ナンセンス小説とか幻想小説とかSF小説とか、そっちのカテゴリーの要素の方が強い小説と思われます。

もちろん、角川ホラー文庫に収録されてるくらいですから、ホラー要素としてスプラッタな血肉飛び散る表現は大盤振る舞いなんですけど、そういうのがどうでもよくなる程度には、この小説はナンセンスです。



近いテイストで言うと『姉飼い』の遠藤徹とか、けっこう似てると思います。
少し雰囲気は違いますけど飴村行の『粘膜人間』も広い意味で同じジャンルかなぁ。

ホラー要素を抜いてしまったら、ナンセンスぶりは福永信にも似てます。

あとはエドガーアランポーのナンセンス小説とか。

円城塔とか。筒井康隆とか。



文学作品だとソローキンとか?
ボルヘスとかバロウズとか…

エログロを抜いたら尾崎翠も似てるかなー?

ああ、ナンセンスといえばもちろん、不思議の国のアリスなんかも?



とにかく、その手のちょっと(というかだいぶ)クセのある作家さんたちと同じ程度にナンセンスでSFでファンタジーしています。
それに少女風味とか若者文化的な味付けを加えると、本書の描くような世界になるかと思います。



ちなみに私はこの小説を怖いとは思わないのですけど。
ちょっと狂ったようなこの世界を気持ち悪いとか怖いと感じる人もいるんでしょうね、ホラー小説ってことになってますから。

なんていうか…この小説に描かれているのは(文字通りの意味で)悪夢みたいな世界なので、私みたいに面白いって感じる人もいれば、怖いって感じる方達もいらっしゃるでしょう。



若い作家さんが書いてるものだけあって、言語感覚が尖っていて、文体も面白いです。
人物の名前が微妙におかしかったり、セリフに句読点がなかったり話し言葉の音便を(読みやすく整えず)そのまま表現していたり、地の文も急に妙な表現が挟まれて自分の目を疑う羽目になったり。
言葉をつかって不気味な世界を形作っています。


ユーモアもあって、けっこう笑える場所もあります。
まあ、ブラックですけど。
日常生活がへんてこりんにデフォルメされてたりして、面白いです。

ギャグ漫画とかコントっぽい要素が使われてます。

スラップスティックな展開もあったりして(スプラッタでグロテスクですけど)読んでいて気分が上がって楽しかったりもします。







私はナンセンス小説が大好きなので、内容を知ってこの本を取り寄せて読みましたけど。
知らずに読んだらビックリしたでしょうねー。

かなり好みの小説です。
とっても面白かったので、この作家のほかの本、3冊買ってしまいまして、ただいま読んでおります。


まだまだ面白い本はあるし、私よりも若い作家さんたちも面白いもの新たにどんどん書いてくれるので、楽しみはつきませんね。


















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