井川楊枝 著、『封印されたアダルトビデオ』を読みました。
彩図社の文庫本です。










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今回の本のお供は、何年か前に私が作ったソックモンキーです。
この子は男の子のつもりでつくりました。

男性用の靴下を使って作ったぬいぐるみなので、大きめです。

女性用の靴下よりも渋い、カラフルだけどくすんだボーダー柄が可愛いです。









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Caution!

今回の本は性的な内容や倫理に反する内容が沢山含まれているものです。
人によっては気分を害する可能性があります。

エロティックなものやグロテスクなものが嫌いな人は、以下の内容は読まずにこのページを閉じてくださいね。











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なかなか好奇心をそそる刺激的なタイトルです。

巻末記によると、このタイトルが単行本として出版されたのは2012年で、その4年後に文庫本化され本書が出版されたそうです。

今から10年くらい前に書かれた本ですね。
そして、書かれた当時でもすでに過去となっていた事件をまとめて書いたものですから、内容は今となっては古き良き昭和・平成のアダルトビデオ業界の世にも奇妙な昔話…ってことになります。


この手の扇情的なタイトルの本って、悪戯にショッキングな内容を大仰な表現で煽り立てたり、匂わせ表現で事件を過剰に謎めかせてみたり、社会問題化させるような方向に持って行ってみたものの作者の思想があまりに浅薄だったりして読んでるこっちが恥ずかしくなってしまったりと、とにかく安っぽい演出で書かれたものが多かったりする印象がありまして。

私はそういうのはあまり好きではないので、この本を読み始めた時ちょっと心配したんですけど、嬉しいことに杞憂でした。

本文は、きちんとした文体で書かれており、過剰な演出はなく、しかしユーモアはちゃんとあって、読み物としてとても読みやすいものです。
扇情的な内容であるだけに、普通に書かれているところがありがたい本です。









で、肝心の内容ですが↓




『ビデ倫の審査拒否、発売禁止、回収騒動…

あの作品はなぜ消えたのか?
発禁AVの真相に迫る!

幻の自衛隊AV『戦車とAVギャル』、国際問題になりかけた『SMワイドショー マゾに気をつけろ‼︎』、やりすぎた実録系AV『北陸少女監禁事件』、禁断のタブーを犯した『全裸のランチ』など、多数の問題作を収録!』

(帯より)




『ポルノ大国、日本。この国では、日々、おびただしい数のアダルトビデオが作られている。そんな中にあって、密かに消えていく作品があることをご存知だろうか。直前になって発売できなくなった、あるいは、一度は店頭に並んだものの回収されたーーー「封印されたアダルトビデオ」である。
出演させてはいけない者を映してお蔵入りした作品。異国の宗教儀式に参加し、国際問題になりかけて抹消された作品。出演者の不慮の死や失踪によって発売延期した作品。そして、女優の訴えによって犯罪行為が明らかになり、闇に葬り去られた作品……。本書は陰のAV史に刻まれた18の作品を取り上げ、その裏側を明らかにしようとするものである。』

(カバーより)




↑こんな感じです。






本書を読んでいると、そもそもアダルトビデオってなんなんだろう?と、まずそういうAVの定義からして揺らいできます。

殿方の世界のことはどうしても私には分かりにくい部分が多くありますが、しかしまあ多分常識として、普通はアダルトビデオというと…可愛い綺麗な女の人がエッチなことをしている映像(が主流で、しかし、中にはマニアックな人向けのマニアックな人に受ける内容のものや女優さん男優さんが出ているものもあって)で、それを見て「性的な興奮を得るもの(←ここが一番大切)」…みたいな認識を皆さん持っていると思うのですが。

本書で取り上げられる封印されたAV群の中には、どうもそういうものとは違うんではないか?…としか考えられないものが沢山紛れ込んでいます。




フィリピンのカトリックの儀式で十字架に磔にされたキリストの苦難を実際に行って追体験するという真面目なお祭りに、日本のドMのAV男優さんが「癌に蝕まれた弟のために祈る」という嘘をついて参加して磔にされ…それがバレて国際問題になりかけたり。

包茎手術で切り取った人体の一部や、脂肪吸引手術で取り出した脂肪を食べるカニバリズムの作品があったり。

実際にあった事件をなぞって撮ったAVが(AVのくせに)真に迫りすぎてしまって、(エロとは関係ないところが社会的に)ショッキングすぎてNGになってしまったり。

内容がどう考えても、AVというよりもスプラッタホラーとしか思えないものがあったり。

若くして亡くなった女優さんが生前にSMのビデオに出たがっていたことを理由にして、彼女の眠るお墓を相手にSMプレイをしてみたり。

障害者の人達に募集をかけて集めた男優さん達を使ったAVは、本人達が希望納得して出演したAVであったにも関わらず、障害者というだけで倫理的にNGが出てしまったり。



もちろん、本書の中には未成年が出演してしまったとか、無許可で撮影されたとか、当然の理由で発売できなかった作品も取り上げられているのですが。
なんだか、もう、これはそもそもAVなのか?これは性的興奮を誘うものなのか?AVという枠の中で違うものを作ってないか?何がしたくて何を表現したくてこのAVを撮ったのだ?と、AVというものの定義から考え直さなくてはならなくなるような奇妙な作品がたくさん混ざっています。






私が少女時代を過ごしたのは90年代でした。
90年代というと、エログロなサブカルチャーがやたら元気だった時代です。

ロバート・K・レスラーの『FBI心理分析官』とか、鶴見 済の『完全自殺マニュアル』とか、中高生のころ、クラスメイトの間で回し読みしたりしましたし。
オマセな子は『危ない1号』とかの雑誌もドヤ顔で勧めてきたりしてました。

やたらエロティックなものやグロテスクなもの、なんていうか…よく言えば「形骸化した既存の常識や倫理を問い直す」、悪く言えば「わざと良識ある人達をおちょくって楽しむ」…みたいな、そんな真面目なのか不真面目なのかわからない価値観があった時代なような気がします。
人体改造とかドラッグカルチャーも流行ってた思い出がありますし…今の若い人たちはどうなんでしょうか?そういうの、あまり興味なさそうに見えますけど。

まあ平和でぬるい時代だったんだと思います。

私が以前に感想文を書いた↓


↑村上龍の『インザミソスープ』が書かれたのもこの時代ですし。

まだバブルを引きずったなんだか生きるにはぬる〜い社会が続いていて、でも就職氷河期なんてのにぶち当たって酷い目に会ったのも私達の世代だったりする、若者達の間ではなんとも言えない妙な空気が流れていた時代だったのだと思います。

まだネットも今みたいに誰もがSNSで世界に何かを発信できるほどに利用されている時代ではなく、世に何かを出したいならメディアを通すしかなくて。
だからそういう「世に何かを出す」ことは一部の特権を持った人達にしかできないような、そんな時代でしたね。
だから世の中がもっとおおらかだった…もちろん今と比べると、です。





そんな頃に作られた変なAVは、それを撮った監督や出演していた女優男優もまあとにかくユニークで面白くて。
バクシーシ山下監督とかカンパニー松尾監督とか、サブカル好きな方なら必ず名前を聞いたことのあるだろう人達がたくさん登場します。

倫理的には眉をひそめることばかりですけど、でもだからこそ抱腹絶倒ものの可笑しさがあります。
今の時代にはそぐわないでしょうけれど…まあ昭和は遠くなりにけり、平成もまた然り、です。
今は(良くも悪くも)良い子ちゃんが増えました。

しかし、2000年代を過ぎた頃からの本書に取り上げられているAV作品は、ちょっと雰囲気が違います。
年齢詐称だとか、芸能人AVとか、女優の自殺とか、ポルノとどこがちがうのか理解できないようなジュニアアイドルのイメージビデオとか、なんだか(私にとっては)笑える要素がなくて心に刺さるようなものばかりで。

同じ封印作品でも、90年代のものって芸術性とか思想性…とまでは言えないかもしれませんが、とにかくまあ少なくとも「作品」として成立してるような気がするんですけど。
そこを過ぎた2000年代のものって、なんか本当にただの消費されるためだけのお手軽なポルノになってしまってる印象を私は受けました。

まあ、この手のAVってノンケの男性をターゲットにして作られてるものだろうから、私の印象は的外れなものなのかもしれません。
しかし、封印理由が時代を表してるような気がして仕方ないのです。
AV作品に余裕がなくなって、売り上げ重視なものばかりになっちゃってるような…芸術よりも生活、みたいな。思想よりも経済、みたいな。

私は本書を90年代のAVっておもしろーい!と思って、不謹慎に笑いながら読み始めたんですけど。
章が進むにつれてだんだんとAVがリリースされた年代も進んで行くと、雰囲気が暗く重苦しいような感じになってきて…ついに最終章では、鬼畜な犯罪行為によって撮られてしまったAVの事件が載っていました。
いわゆるバッキー事件というやつです。
女優さんを騙して酷い目に合わせていた事件です、かなり胸糞の悪い禍々しい凄惨な事件でした。

この本の筆者、実はバッキー事件の会社の関係者だったそうで。
おかげでこの事件についての記述には鬼気迫るものがあります。
フィクションや都市伝説でなくて、現実にこんな事件があったってのが本当に怖いです。
たった一人の犯罪ではなく、集団で商業活動の一環として、ある意味で真面目に、一生懸命に、勤勉に、行われていたっていうのが怖すぎます。

現代の日本で暮らしていると忘れがちですが、人間ってそもそもろくでもないことがやらかせる生き物なんですよねー。
人も「動物」なんです。
特別な犯罪者だけがやらかすわけでなく、条件が揃えば普段は善良な市民である誰だって、ろくでもないことやらかしちゃう心理状況に持ってかれる可能性があります。
悪名高いマリーナ・アブラモビッチ(Wikipedia)の『Rhythm 0』然り、です。
もちろん、私自身も条件が揃えば何やらかすかわかりません。
被害者にも加害者にもなり得ます。

自分の住んでいる社会は決して素晴らしいことしか無いような絶対安全な天国ではなく、問題をたくさん抱えた歪なものであること、忘れないようにしなくてはと思います。







あ、なんか、変に真面目で明後日な方向に感想が向かっちゃいましたね。
戻って来ましょう。


本書は90年代にサブカルチャーにどっぷりつかって生きてきた、かつての少年少女や青年達には、懐かしくも面白い、胡散臭いアンダーグラウンドな世界を思い出すことのできる楽しい本でありましょうし。

最近の若い人達にとっては「昔ってなんでもありだったんだなー」と呆れるような、古き良きおおらかな時代を垣間見れるレトロな世界の本であるかと、思います。

面白かったです。
少なくとも、カニバリズムを扱った文章を読んで、ここまでショックを受けずに、心底馬鹿馬鹿しいとしか思えない本は少ないと思います。

誰もが何かを世に発信しうるようになったこの現代社会は、不正が見逃されにくくなったなど良いところもたくさんある反面、古い時代を知る人々にとっては、ちょっと監視の目が厳し過ぎて堅苦しい時代なのではないかという気もします。
たまにはこういう気負わない本を読んで、今となっては昔話となってしまったお話に不謹慎な馬鹿笑いをするのも、悪くはないと思います。

























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ランドセル、何色だった?

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私の通った小学校はランドセルではなく、黄色いナップサックが指定でした。

だからランドセル持ったことないんです。
そんなわけで、ランドセルは憧れですねー照れ




最近は可愛いランドセルやかっこいいランドセルや、色んな色やデザインのお洒落なものもたくさんあるみたいで。

うーん、子供達がちょっと羨ましい!