大原まり子 著、『スバル星人』を読みました。
角川文庫です。













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今日の本のお供は、漫画本です。

今日取り上げる本の表紙や挿絵を描いているのが、漫画家の岡崎京子なので。
岡崎京子の漫画『うたかたの日々』と一緒に撮ってみました。










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本書はSF小説です。

80年代バブルの頃の、皆が浮かれてキラキラしている東京を舞台に、主人公の漫画家の女性ミャコと異星人スバル星人との出会いから始まる物語を、ミャコを取り巻く人々の群像劇として表したのがこの小説です。

SFと言っても小難しい科学用語やSF用語などは殆ど出てこない、ポップでキャッチーな雰囲気で描かれた大人の青春ーーー的人間模様、トレンディドラマが面白い作品です。
…スバル星人が紛れ込んでいるところだけが、ただのトレンディドラマからは一線を引く要素になってますけれど。


作品の、今ではちょっと流行遅れで古臭いバブルの雰囲気が、逆に今となってはすでに懐かしくオシャレに感じられます。
ボディコン、巨大な携帯電話に10円玉でかける公衆電話、毛皮に宝石、高級車、高級シティホテル、プールバー…ナウくてオサレでトレンディな東京、良いですねー。







本書の著者、大原まり子は今回初読みのはずでした。

が、どうもページを繰れば繰るほどに、既読感を強く感じました。
最初は、挿絵が馴染みのある漫画家の岡崎京子のものなので、そのせいでなんだかデジャヴを感じてしまうのかしら?なんて不思議に思ってましたが。

しばらくして思い出しました。
私、岡崎京子の漫画で、大原まり子が原作を担当したものを読んだことがあったんです。


↑この漫画です。

そのせいで、本書『スバル星人』の、登場人物たちの個性的なキャラ作りや独特のノリ、80年代のキャッチーな東京の描写に、既読感を覚えたのでした。

例え小説でなく、他人が漫画化した原作ストーリーであっても、同じ作家の手になると雰囲気は共通するものなのですね。








本書で描かれるSF物語は、主人公の漫画家ミャコが三軒茶屋の細い道でホンダシティカブリオレペパーミントグリーンなる車にドッカーンとぶつかるところから始まります。

ホンダシティカブリオレペパーミントグリーンは実は本物のホンダシティカブリオレペパーミントグリーンではなく、スバル星人の乗る宇宙船エジェリー号の擬態した姿だったのです。

スバル星人(ミャコの命名)はプレアデス星団からやってきた異星人で、外見は昆虫、大きな蟻に似ています。
が、スバル星人の乗る宇宙船エジェリー号同様、自分の姿は透明にしたり人間に化けたり、自由自在です。
テレパシーを使って声を出さずに会話したりすることもできます。
異星人だけあって、たくさんの人間には無い特殊能力を持っています。

スバル星人はミャコに対してとても礼儀正しく振る舞い、丁寧な言葉遣いで話します。
曰く、自分はプレアデス星団からなんらかの目的で地球にやってきたはずだけれど、記憶喪失でその目的を忘れてしまったのだ、と。

ミャコはすっかりこの異星人にハマってしまい、しばらくの間、周りにバレないように食事の世話をしたりして彼の面倒を見てやるのですが…










以下、ネタバレありのあらすじが続きます。
この作品は話の展開が面白いので、ネタバレ無しで読んだ方がいいと思います。

『スバル星人』読んでみようかな?と思う人は、以下は気をつけて閲覧してくださいね。
キリのいいところで、閲覧をストップしてください。


















↓↓↓ネタバレ注意↓↓↓

















『スバル星人』は、ミャコを中心とするグループの群像劇です。
主要登場人物は、

主人公である女性漫画家のミャコ。
ミャコと同じマンションの部屋に同居するミャコの妹のチョコ。
ミャコの担当編集者であり、恋人でもある、山田源三郎。
山田源三郎の美しい既婚の姉、波子。
波子の別居中の夫であるやり手の実業家、大場仁。
大場仁の浮気相手でモデルの山城ちえみ。
山田源三郎と波子姉弟の異母妹、佐田ちえみ。
佐田ちえみの息子、空気が読めて気遣いができる、関西弁の天才小学生ヒロユキくん。
ミャコの友人の美人超能力者、姫野裕子。
姫野裕子の同僚であり友人である、美人で性格の良い神崎智恵美。

このくらいかな?
他にも何人か登場人物はいますけど、この物語に直接関わってくるのは上記の10人、それから一人のスバル星人という異星人です。



ミャコ達のグループは、みんなで集まって楽しんだり喧嘩したりしながら、和気藹々として仲良く付き合っています。
ただし、上述した登場人物紹介を見ただけでもわかると思いますが、いくつか不和を呼ぶ要素もはらんでいます。

そのグループの付き合いの中に、ミャコを頼りにしたスバル星人が、姿を消してミャコ以外にはわからないようにしていますが、参入してきます。

ミャコはスバル星人と宇宙人エジェリー号で空を飛んでみたり、イケメンおじさまに変身させたスバル星人と共に高級毛皮店に赴いて4500万円もする毛皮を姿を消して盗んでみたり、夢のような時を過ごすうち、スバル星人に恋に落ちます。

このあたりまでは、ミャコ達グループやスバル星人の、楽しく平凡な(?)日常が描かれているのですが。
しかし、やがて物語が急展開を迎える時がきます。






ミャコ達グループがヒロユキくんのマンションでクリスマス・すき焼きパーティをしていた時のこと。
その時も姿を消したスバル星人は、こっそりと誰にもバレずに、すき焼き鍋をみんなと一緒に突いていたのですが。

ミャコの友人姫野裕子が連れてきた同僚の神崎智恵美だけに、なぜか、見えないはずのスバル星人の姿が見えていることに、ミャコとスバル星人は気づきます。
神崎智恵美はスバル星人を見て怯えています。

ここで、ミャコは自分以外にもスバル星人が見える人がいると知ってビックリして、思わず皆の前で、スバル星人に姿を現わすように求め、また、皆に自分はスバル星人という宇宙人と知り合いなのだとも告白するのですが。
神崎智恵美は部屋から逃げ出してしまうし、スバル星人も消えてしまい、ミャコは皆からとうとう頭がおかしくなってしまったと思われただけで終わってしまいました。

その後、一ヶ月間、スバル星人はミャコの前から姿を消していましたが、ある日、ふらりと戻ってきます。
スバル星人はこの一ヶ月間で地球に来た目的を思い出し、それを遂行していたそうです。
それから、ついでにミャコが温泉に行きたいと思っていたから、ミャコのためにスバル星人が温泉に行っていたそうです。
なんだか理屈があわない話なので、ミャコはなんで私が温泉に行きたいのにあんたが温泉に行くのか?と尋ねますが、スバル星人はおいおい理由はわかってくると、流してしまいます。

スバル星人の地球訪問の目的は、スバル星人の世界から地球にやって来た3人の小鬼を捕まえることでした。
この小鬼達は人間の姿をしてミャコ達のグループに取り付き、彼らの運命を変えようとしている、とのことです。
神崎智恵美は小鬼の一人でした、ですからスバル星人の姿を見て怯えていたのです。
そしてこの一匹目の小鬼はすでにスバル星人が捕獲し終えていました。

ミャコは山田源三郎にスバル星人の正体を明かして、ミャコと山田とスバル星人の3人で二人目の小鬼を捕獲します。
二人目の小鬼は、山田の姉の波子の夫の浮気相手、の山城ちえみでした。

その後、スバル星人はミャコをアストラル界(精神世界)に導いて、そこで自分が本当は何者であるかを話します。
スバル星人は、なんとミャコが産まれた時に亡くなってしまった、ミャコの双子の兄弟なのでした。
元々二人は双子で、一つの魂を二つに分けた二人だから、引かれあったのです。
そして二人は元々同じものだから、ミャコの欲望「温泉に行きたい」を、かわりにスバル星人が満たしたなら、ミャコの欲望は充足されることになるのです。

スバル星人の説明によると、スバル星人は精霊だそうです。
そしてミャコを守る守護霊のようなものだそうです。

この世の人間たちのグループは、彼らの抱える問題=カルマを解決するために、何度も同じグループで生まれ変わりながら、解脱を目指している。
ミャコ達のグループもそんなグループの一つなのだそうです。
そのグループに取り付き運命を変えてしまう、ある種のエネルギー体である小鬼どもを取り除き、ミャコ達の運命を守るため、アストラル界からスバル星人=ミャコの兄はやって来たのでした。


ところでミャコ達のグループには、3人のチエミがいます。
すでに捕獲した二匹の小鬼は両方ともチエミでした。
もしも小鬼は皆チエミを名乗っているのだとすると、残りの一人はヒロユキ君のお母さんである山田姉弟の異母妹の佐田ちえみ、ということになります。

先に捕獲した二匹の小鬼のチエミたちがスバル星人によってエジェリー号に閉じ込めてしまうと、皆の記憶からチエミたちの存在は見事に消えてしまいました。
チエミが存在していたこと自体、全く覚えていないのです。
小鬼達のせいで狂ったミャコ達のグループの運命は、スバル星人が皆の記憶からチエミ達を全く消し去ることで、元に戻ったのです。

ならば。
3人目の小鬼である佐田ちえみを捕獲したなら、その息子のヒロユキ君も消えてしまいます。
ヒロユキ君はとても良い子で、みんなの人気者です。
ミャコも彼のことが大好きです。

ミャコはヒロユキ君を守るために、なんとかスバル星人をごまかそうとしますがそれは徒労に終わり。
見事に3人目の小鬼も捕獲したスバル星人は、ミャコの記憶も全て消して元の世界へ帰って行きました。

その後。
ミャコは山田と新しい漫画の打ち合わせをしています。
漫画のタイトルは『スバル星人』。
消されたはずのミャコの記憶はフィクションとして蘇り、そしてそのフィクションを前にしてミャコは、自分の記憶を取り戻します。
このストーリーはフィクションではない、本当に私たちに起こった出来事だったのだと。









と、こんな具合に、ハッピーエンドですけど、ちょっぴり切ない幕切れとなるのです。











この小説は、なんか雰囲気が良いですね。
懐かしい感じ。

そして、なんていうか、すごくドラマとか漫画っぽいんです。
映像が脳裏に浮かびやすいです。

それはこの小説が群像劇だからでもあるでしょうし、物語を彩る小物や背景がいかにも80年代のトレンディドラマな雰囲気だからってのもあると思います。
キャラのたてかたも大げさなくらいにポップで、みんな個性的ですしね。
いい意味で薄っぺらくて漫画っぽいです。

とってもポップな小説で、ジュヴナイル小説とか、ライトノベルなんかの感覚に近い、軽快なストーリー展開が心地よいです。

この小説が、今の若い人の目にはどう映るのかはわかりませんけど。
80年代を経験したバブルを知る大人達には、懐かしく愛おしい作品だと思います。








私は70年代から80年代くらいの、ちょっと軽いノリの日本のSF小説が好きです。
例えばこの『スバル星人』のような。
独特の雰囲気がありますよね。
本書の著者の大原まり子は今回初読ですが、同じくSF作家である大原まり子の配偶者の岬兄悟のラブペアシリーズというSF小説は、私、大ファンです。


あの頃のライトなノリのSF小説は、きっと今ではラノベあたりに場所を奪われちゃったのかなー?
最近は見かけない気がします。

ちょっと残念だな。
ラノベはラノベで面白いんですけど。
ちょーっと違うんですよね、やはり。


しかし、今回読んだ大原まり子もまだこの本が一冊目。
まだまだ70年代80年代日本SFの小説は未読のものが沢山ありますから。
これからも私はまだまだ楽しむことができるのです。
































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過去記事より、ライトノベルのSF小説の読書感想文です↓


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嫌いでもないですけど。

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