乙一 著、『暗黒童話』を読みました。
集英社文庫です。








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今回の本のお供は、私が生まれて初めて作った羊毛フェルトマスコットのパンダちゃんです。
ダイソーさんのキットで作りました。
キットはパンダの頭だけのセットだったので、別に羊毛を買い足してボディも作ってみましたよ。

初めての羊毛フェルトちくちくだったので、お顔がちょっと歪んでしまったところが、愛嬌であります。

ニードルの刺し加減がわからなくて、ガッチガチに固めてしまいました。
柔らかさはありませんが、型崩れには大変強そうでありますよ。









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私が乙一の著作を読むのはこれが3冊目です。

1冊目は『天帝妖狐』。
もう10年以上前に、確か下北沢のヴィレッジヴァンガードさんで買ったんじゃなかったかなぁ。
なかなかよくできたホラー短編集だった…という記憶があります。
もう、内容はあまり覚えていませんが。

2冊目が『夏と花火と私の死体』。
これはほんの数年前に、今住んでいる家の近所のブックオフさんの100円コーナーで買って読みました。
これは、面白かったですねー。
主人公が◯◯って言うのが斬新でしたし。
それより何より、一応カテゴリーとしてはホラー小説にはいるのかもしれませんが、私はホラーというよりも子供達の冒険物語として読みまして。
小学生の頃の…あの長い一日、ギラギラ輝いていた太陽、地面の近くを駆ける感覚、青すぎる空に白い雲、暑い日に食べたアイスクリームの美味しさ…今となっては二度と手に入れることの出来ない子供の頃だけに感じられた世界に対するノスタルジアが刺激されまくる作品で、本を読んでいる間は私もあの頃の自分に戻ったような気持ちになって、懐かしくて涙がちょちょぎれそうになりました。

で、今回読んだ『暗黒童話』が3冊目となります。






以下ネタバレありの感想文です。







この『暗黒童話』は、長編ホラー小説、ってことになってます。
でも、あんまり、ホラー小説っぽくはないなぁ。
どちらかと言うと、ミステリの方に近いですね。
怖い怖い!って思いながら読む感じではなくて、このモンスターは一体誰なんだろう?と推理しながらワクワクと読んでいくような感じです。




『突然の事故で記憶と左眼を失ってしまった女子高生の『私』。
臓器移植手術で死者の眼球の提供を受けたのだが、やがてその左眼は様々な映像を脳裏に再生し始める。
それは、眼が見てきた風景の「記憶」だった……。
私は、その眼球の記憶に導かれて、提供者が生前に住んでいた町をめざして旅に出る。
悪夢のような事件が待ちかまえているとも知らずに……。
乙一の長編ホラー小説がついに文庫化。』
(カバー裏より)




事故で左眼と記憶を無くした主人公の白木菜深(しらきなみ)は、左眼は移植手術で取り戻すことができましたが、記憶がなかなか戻りません。

記憶をなくす前には、明るい性格のクラスの人気者、成績優秀、ピアノの演奏も得意…と、かなり優秀な女子高生だったようなのですが。
記憶を無くした「私」は、まったく正反対の性格で、成績も振るわないし、ピアノの弾き方もわかりません。

家族や同級生達は、まったく違ってしまった菜深にとまどい、「菜深はこーだった、あーだった」と、記憶があった頃の菜深と今の菜深を比べてばかりで。
「私」はどんどん、自分は一体何なのか?と、追い込まれていくことになります。

その時に、「私」を救ってくれたのが、移植された左眼が見せる「記憶」でした。
臓器提供者が見た風景の記憶を、時々、ふとした何かを見たことがきっかけとなり、左眼が菜深の脳裏に再生してくれるのです。
記憶喪失の菜深には過去の思い出がありませんから、この左眼の記憶は、やがて彼女自身の失われた思い出の代わりに、彼女を癒してくれることになります。

菜深は左眼が見せてくれた記憶を、紙に書いて記録し、バインダーに挟んで貯めて行きます。
記憶の再生が進むにつれて、徐々に左眼の持ち主の名前や、家族、友人なども、わかってきます。

しかし、ある時、この左眼は、恐ろしい光景を再生させました。

青いレンガの家で地下室が見える窓を覗き込む記憶の映像です。
地下室には行方不明の女の子の姿がありました。
そして、自分が窓をこじ開けようとする映像、何者かがこちらにやってくるらしい映像、自分が逃げ回る映像。
最後は、必死で駆けて道路に飛び出して、ちょうどそこに走ってきた車にはねられる映像。

左眼の記憶を見るうちに、臓器提供者の男の子に親しみを抱いていた菜深は。
彼を交通事故にあわせた犯人=行方不明の女の子を監禁している人物をこのままにはしておけない、左眼の持ち主だった男の子を死に追いやった償いをさせ、監禁されている女の子を救わなければならない…と、臓器提供者の住んでいた町へ、向かったのでした。




そして、ここから先はミスリードあり、どんでん返しありの、菜深が犯人を追い詰めるミステリです。

ただ、この小説がミステリではなくホラーとなってしまうのは、まずは自分に移植された眼球の元の持ち主の記憶が見えてしまうファンタジー要素があることと。
犯人が、普通の人間ではなく、特殊能力を持った人である…ということの所為です。

犯人の特殊能力は、自分が傷つけた生き物から死を追い払ってしまう、不思議な力です。
犯人によって傷つけられた生き物は、痛みの代わりに恍惚を感じ、どうやら犯人が生命の源と思えるような脳や心臓を破壊しない限りは、死から解放されてしまいます。

犯人はこの特殊能力を使って、生命の実験をしているのです。
人の身体をパズルのように組み直したり、時には複数の人体を合体させたりして。
しかし、被害者達は犯人には敵意を持たないようです、犯人によって作られた傷口から溢れる生命の力に、陶酔してしまうからです。

犯人は正体不明の童話作家としても活躍しており、この小説には犯人が書いたとされる童話も作中作として収められています。
盲目の少女のために、人語を解する烏が、人間の眼球を集めてくるという…グロテスクですが、なかなか切ない童話で、面白いです。





菜深が犯人と対決するシーンは、作者のミスリードが上手で、あっと言わせられますよ。
この辺りで、小説中に散りばめられていた伏線が一気に回収されていく様も見事です。

左眼の元の持ち主が見た過去の映像を見ている、という設定をうまく生かした謎もちゃんとありますし。

全体的にミステリとして、綺麗にまとまっている感じです。

ちょっとご都合主義…な感じもなきにしもあらずですが、気になって気分を削がれてしまうほどではありません。
面白いです。






そして、小説の最後は、しっかりハッピーエンドなのですが。
なんだろ、ハッピーエンドなんですけど、ちょっぴり切ない気持ちになりますよ。

失われた記憶を取り戻し、菜深がかつての菜深に戻り、記憶を無くしていた間にあった「私」という人格が溶けるように消え去ってしまいますから。
それまで頑張っていた主人公が、最後には居なくなってしまうのです。

しかし、消え去っていった不器用で卑屈な「私」という女の子がいたことをいつまでも覚えておこうと、記憶を取り戻した菜深は決心します。
そこに、暖かさと清々しさを感じさせてもらえるので、読後感は爽やかです。











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