青空文庫さんを利用させていただきました。

カフカの『審判』を読みました。原田義人 訳です。



『審判』の青空文庫さんのurlはこちら→『審判』
無料で読めます。




『審判』を読むのは…何度目かな?
私がかなり若い頃、中高生とか高校生とかの頃ですね、カフカにハマった時期がありまして。
その頃に何度か読みました。
が。
大人になってからは、カフカにはとんとご無沙汰です。

今回、『審判』は20年ぶりくらいの再読、となりました。







『審判』の感想文を書こうと思うのですが。
文章だけ連ねるのも寂しいので。
本文とはさっぱり関係がありませんが、ちょっと前にお散歩中に撮ったお写真を挟んでみようと思います。
…可愛い野良猫ちゃん一家の写真を撮りましたので、それらを寝かしておくのは勿体無いから、ここでその写真を使おうという腹でございます。













『審判』のあらすじは。

ある朝、突然、主人公のヨーゼフ・Kが自分の部屋で、身に覚えのない逮捕をされることから始まります。
ヨーゼフ・Kは30歳、銀行の業務主任を務めています。
訴訟手続きはすでに取られ、ヨーゼフ・Kは否応無しに(多分)巨大権力機関裁判所との闘いに巻き込まれることになったのです。

ヨーゼフ・Kは、審理中の裁判を抱える身ですが、仕事は普通に続けられます。
なかなか立派な地位のある人ですから、銀行で忙しく働かなくてはなりません。うかうかしていたら、ライバルに出し抜かれてしまいます。
けれども、ヨーゼフ・Kは裁判のことで頭がいっぱいで仕事に身が入らない。

しかも裁判自体も、どんな風に進んでいるのかよくわからない。
ヨーゼフ・Kに有利なのか不利なのか…なんとなく不利な感じはしますが…実際はよくわからない。
そもそも裁判がどんな方向であれ、進展してるのかどうかも、なんだかよくわからない。

ヨーゼフ・Kは裁判を有利に進めるため、助言してくれたりアシストしてくれる人々を訪ねたり、出会ったりします。
弁護士、弁護士の愛人らしき女中、裁判所に顔のきく画家、同じく裁判を持っている人たち…
でも、誰もが、本当に裁判所のことをわかっているのかどうかすら、あやしいのです。
彼らはそれぞれもっともらしいことを話しますけれども、結局は皆裁判所の末端をうろうろしているだけの存在に過ぎない模様。
もっと上位の存在があって、その上位の存在の意向を推測しているだけで、本人達は言われるままに働いているだけのようです。

誰にも、どうしてヨーゼフ・Kが訴えられたのか、訴訟はどこまで進んでいるのか、そもそも一体全体この訴訟は何なのか、裁判所は何なのか、わかっていないのです。

裁判が始まってから、ヨーゼフ・Kには気づくことがあります。
裁判所はこの世界のありとあらゆる場所に潜んでいたのです…これは抽象表現ではなく文字通りの意味です。
自分が裁判と関係ない時には気づかなかったことですが、巻き込まれて初めて、いかにこの世には裁判に関することがあふれていたか知ることになりました。
思いもかけなかった場所に裁判所の施設があり、予想もしなかった人が裁判所と関わりを持っていたりする。
普通に日常生活を送っていても、いきなり、裁判所に関することがひょっこり顔をのぞかせます。
ふと扉を開けたら、そこは裁判所の関連施設だったり。
商談相手をアテンドしようと出かけた聖堂の坊さんが、Kに裁判所の者として説教台から語りかけたり(この内容は『掟の門』として、短編小説になっています)。



Kの31歳の誕生日の前夜、Kの家に二人の男がやってきます。
死刑執行人たちです。
「まるで犬だ!」と言いながら、Kは審理が始まって以来、何もできることなく、死んでいくのです。











さてあらすじを書いてはみましたが。
実はこの作品、あらすじを述べることは、それほど意味のあることではないです。
いや、この作品だけでなく、カフカの作品は全てかな?いやいや、むしろ文学作品は全てかな?
重要なのはストーリーそのものではないです。

(ちなみに、この『審判』は未完です。
カフカの遺稿から、断片をまとめたものです。
それでも読む価値が十分すぎるほどあります。
こういうことも、ストーリーはそれほど重要なものではない…という意見の裏付けに一役買ってくれるかな?
ストーリーだけが重要なら、未完の小説の価値なんて急落してしまうでしょうから。)




ところで、カフカの作品を、怖いとか不気味だと思う人、けっこう多いみたいですね。
私自身はあまりそういうことは感じないのですけれど。
それって、もしかして、理りが通じない世界を彼が描いているからでしょうか?

『審判』の主人公は翻弄される存在です。
なんだかよくわからない状況にいきなり投げ込まれて、その中でなんとか今まで自分が生きてきた理りをもってして、うまく立ち回ろうと奮闘します。
でも、それが通じない。
どうやら、裁判所の理りは、今までヨーゼフ・Kの生きていた世界の理りとは違うらしい。

なので、闘いの相手、裁判所の従う理りにKも従って、闘わなくてはならないのですけれど。
その裁判所の全体が全く見えない。
機構の構造がわからず、そのダイナミクスも目に見えない。
要は、理由がわからず、結果ばかりしか見ることができない…けれどヨーゼフ・Kはその結果だけからなんとか裁判所に近づき、裁判所の理りを探って、それと闘おうとしている。
…最後には『まるで犬』みたいに、負けて(というか最初から相手にもなっていませんでしたが、)殺されてしまうのですが。













人が集まると、必ず権力が生じます。
それが少人数であれば、その権力体系は見渡すことのできるものであるでしょう。
ですが、人の数が増え、人の集まりが社会と呼べるほどの大きさとなった時、権力は我々の捉え切れるものではなくなります。

言葉を使って作った理によって支えられるシステムは、複雑に絡み合い見通しが効かないし、小さな力は狙った場所に作用させたくてもそこに届く前に吸収され消えてしまうでしょう。
そもそも、言葉は、正確に何事かを何者かに伝えられるものではないんですから。

我々は権力に守られているが、何か掛け違いがあると、簡単に犠牲者になる。冤罪なんて一番わかりやすいものです。

私達は群を作って生きる社会性動物ですから、(よっぽど強い意志を持てて、群の中から抜け出せ、一人で生きれるような精神の作りを持つ人でない限り)常に制御不能な権力の中に生きることになります。
全体的にはうまく回っていますが、一部に訳のわからない不条理を生み出す可能性を孕んだ…バグのあるシステムの中で、生きるしかないわけで。
私達は人間であって、神ではありませんから、もとより完全なものは作れませんから。

そして、このスットコドッコイな権力システム、何によって出来上がっているかと言うと…
私は単に欲だと思いますよ。
個人の欲、集団の欲、ありとあらゆる欲が、まるで流体力学における一つ一つの粒子のように力を作用しあって、大きな権力という形で現出し蠢き続けているのだと思います。



『審判』において表されているもの、不条理に不安、不気味さ…まとめて気持ち悪さは、個人の心の底に眠る、この(massとしての)欲と権力と社会に対して感じる絶望的な自らの無力さの自覚、人の群には必ず付いて回るものへの恐怖、なんではなかろうかと、私は思います。



考察の舞台は二つあります、人の群=社会と個人です。
群を舞台とすれば、権力の孕む不安定な恐ろしさを。
舞台を個人に移せば(流体全体の力の作用から、流体を構成する粒子一粒の力の作用に、考えの場所を移すように)、人という動物の持つ不安と欲望の底を。
覗き見れるのではなかろうかなんて、思ってもいます。

(…なんかこれ、始まりというものが必ずあるという因果律ありきの場所に立っての考えですけど。これ以上のこと考えてたら、なんかまた別の問題になっちゃうので、私はこの場所から、考えようと思ってます。
物理に例えるなら、ラプラスの悪魔のいる世界で、古典力学的な世界で考えます。量子力学は、また、別の場所で考えましょう。シュレディンガーの猫ちゃんみたいに、二つの世界は繋がってるものではありますが。全体を見渡すのは今の私にはまだ合理的な手段で無いし…いやむしろいつまでたっても私には不可能な気もしますけど。あ、すいません、この括弧の中は私の独り言です、ブツブツブツブツ…)















…と言ったところが、とりあえず、今の私の『審判』への感想です。
が。




ところで、



『審判』理解のために、少し、本を読んでみようと思いまして。
エリアス・カネッティの『もう一つの審判』、エーリッヒ・フロムの『夢の精神分析---忘れられた言語---』、ミラン・クンデラの『裏切られた遺言』を取り寄せました。
それから、西岡兄妹の『カフカ』という漫画(この漫画は以前に私のブログにすでに載せましたが、実は最近私がカフカを追っかけ始めたのはこの漫画の影響です)および、電子書籍でこの漫画の著者自身による解説本も買いました。
ナボコフの『文学講義』も読みたいのですが、それはまた私のお小遣いの余っている時に注文しようと思います。

しばらくの間、色んな意見を読みながら、カフカのこと、すこし深く考えてみたいと思っています。
何冊か本を読んで考えることで、自分の感想がどう変わっていくか、楽しみであります。








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よろしくお願いいたします。









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今朝の体重は、

x+3.7kg

でした。


…ここ最近で一番重いです。
実は昨日から私の姪っ子1号が我が家にお泊まりで遊びにきていまして。
調子に乗って姪っ子1号と一緒にご飯を食べたり、オヤツを食べたり…胃がはちきれんばかりに食べまくってしまったので。
この有様です。

大丈夫!
今は体内に大量の消化物がしまわれていますけれど…きっと出すものを出したら、もとの重さに戻るでしょうから!
一日くらい食べ過ぎたって、そんなに簡単に太りゃしません。きっと。