小説 都営大江戸線の六本木駅で抱きしめて ──その2── | Berryz LogBook

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Berryz工房を中心とした、ハロプロについてのブログです。
彼女たちを登場人物にした、小説も書いてます。

彼女ら四人は、同じマンションに住む幼馴染だ。

大規模開発で建設されたマンション群で、ほぼ同時期に入居し、同じ年ごろの娘が居るということで、棟は別々ではあるが、家族ぐるみの付き合いを続けていた。

そのおかげで、学年こそ違えど、互いにため口での遠慮のない関係を築き上げていた。
紗耶と汐里がこの高校を選んだのも、伶奈やりかが通っていたからだ。


ちょっと寄り道していこうと、高校の最寄り駅近くにあるコーヒーショップに、四人揃って入った。

伶奈が抹茶ラテを注文する。
それを汐里が不機嫌な表情で見つめていた。

「なに?」

視線に気づいた伶奈が尋ねる。
汐里は何も言わなかったが、りかが笑いながら

「ニシ、京都生まれなのに抹茶、苦手なんだよね」

と汐里の頬を突いた。
その反動で、汐里は真顔のまま首を揺らせた。
そんな様子に伶奈も、子供じゃんと馬鹿にしたように笑う。
汐里の顔が、ますます不機嫌になった。

それぞれ注文を済ませ、いつものお気に入りの窓際四人席を陣取った。
窓側の席を伶奈と紗耶が占める。
そして通路側、伶奈の隣にはりかが、紗耶の隣には汐里が座るのが、四人揃った時の暗黙の了解になっていた。

「いっちゃん、彼氏とは最近どうなの?」

たわいもない会話の中で、りかが訊いた。

「大学生だったけ」汐里が呟くように言う。
「いいなぁ」

クラスメートの男子なんてみんなガキだもん、と頬杖をついてため息を吐く。
すると伶奈が

「私からしたら、ニシだって子供だけどね」

抹茶も飲めないしとニヤつく。
対抗するように汐里は、テーブルに手をついて顔を伶奈に近づけた。

「伶奈ちゃんにだけは、言われたくないんですけど」
「『だけは』ってなに」

伶奈は口元を歪め、汐里を睨み返した。が、

「だよね、天然のいっちゃんに言われたくはないよね」

と、りかも腕組みをしてうんうんと頷く。

伶奈が抹茶ラテのカップをドンと乱暴に置いた。
ストローの先から、ほんの少し液体が飛んだ。

「もう、怒んないでよ」

りかが呆れ顔で言う。
そういうところが、子供っぽいんだと。
一番年上なんだから、ちょっと煽られたくらいでキレないで欲しい。

が、伶奈は身を乗り出すと、三人の顔を見回した。

「ちょっと聞いてくれる? カレのことなんだけどさ」

どうやら、玲奈のスイッチが入ったのは、子供っぽいと言われたことではなく、大学生の恋人が原因だったようだ。
 

 

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