夕暮れ時の下足室。
1年C組出席番号3番、江口沙耶が、上履きからローファーに履き替えている最中
「一緒に帰ろう」と声を掛ける人物がいた。
3年C組出席番号1番、女子バスケ部部長の一岡伶奈だ。
そこに「えっ?」と声を揃える2人。
2年C組出席番号13番、島倉りか。
そして、紗耶と同じ1年C組の出席番号19番、西田汐里。
信じられないといった表情で、伶奈を見つめる。
「うん、いいよ」
紗耶がそう応えると、2人は「はぁ?」と驚きの表情を彼女に向けた。
「どうしたの?」
伶奈が怪訝な視線を2人に送った。
りかと汐里は、互いに目配せし、なんでもないよと首を振った。
四人揃って、校舎を出る。伶奈が紗耶に訊いた。
「紗耶ちゃんって、部活入ってたっけ?」
紗耶は、うつむき加減で首を横に振った。
こんな時間まで、何をしていたのか尋ねる伶奈に、図書室で調べものをしていたのだと答える。
りかが、紗耶の顔を覗き込んだ。
「いいの?」
「何が?」
「待たなくて」
りかの問いに、今度は思いっきり縦に首を振る。
ロングヘアーのポニーテールが、宙を舞った。
「何の話?」
伶奈が尋ねる。
りかは、まじまじと伶奈の顔を見つめた。
「いっちゃん、マジで言ってる?」
問われ伶奈は、真面目顔で首を捻った。
りかは、ため息を吐いてうなだれた。
知らないのならいいやと呟く。
「なにしてんの、早く!」
先を歩く汐里が手を振った。
歩行者信号が点滅している。
りかは、ヤバイと言って紗耶の手を取り、駆けだした。
急に手を引かれた紗耶が、転びそうになった。
「もう、ちょっと置いてかないでよ!」
そのあとを、伶奈が慌ててが追った。