「ひょっとしたら、あれかも。
呪文唱えながらだったら上手くいくかも」
あたふたしながらアイリが呟いた。
「呪文?」とモモコが尋ねる。
「うん、呪文」とアイリがおうむ返しに応えた。
魔力のないミヤビが、呪文を唱えたところで
意味があるとは思えなかった。が
「そろそろ発たねばならぬ。
今、できることは、なんでもやっておきなさい」
と団長が急かすので
取り合えずやってみることになった。
取り合えずやってみることになった。
アイリが地面に古代文字を書いて、ミヤビに説明する。
「これが、『氷の精霊』で、こっちが『我に力を』
でぇ、ここがね、意味はないんだけど
ここを強調する…」
ここを強調する…」
そして文字の読み方、呪文を耳打ちする。
すると、それまで真剣に聞いていた
ミヤビの表情が、一変した。
「えーっ、ウソでしょ!?」
「ううん、ホント」
「マジで言ってんの? ウチのことからかってない?」
ミヤビの反応に、周りはなにがあったのだろうと訝った。
彼女は呪文を教わっただけだ。
なにに対し、不快感を示しているのか、理解できなかった。
「ホント、別にミヤビちゃんを困らせようと
思ってるんじゃないよ。
思ってるんじゃないよ。
たまたまだから、ホントに偶然。
ミヤビちゃんを観察しててこの魔術が
一番、合うって思ったからだよ。
ミヤビちゃんを観察しててこの魔術が
一番、合うって思ったからだよ。
だって、呪文唱えないといけないなんて
思ってもいなかったんだから」
思ってもいなかったんだから」
アイリは眉を下げ、困り顔で必死に言い訳した。
が、ミヤビはガックリうな垂れ、かぶりを振った。
「言えない、絶対にそんなこと言えないよ」
団長が声をあげた。
「なにをしておる、早くせぬか!」
真っ直ぐ国境へ向かえば、もう着いているころだ。
長居はできない。
だが、剣の出来栄えは見てみたい。
そんな苛立ちが表情に浮かんでいる。
「もう…」
ミヤビがため息をついた。
「わかりました、今すぐやりますから…」
地面に書かれた文字を確認し立ち上がる。
剣を握り、刻まれた印に指を添えると、剣身が光った。
その剣を、引きずるようにして一歩、前に出る。
振り返りアイリに目をやると、彼女は拳を握り頷いた。
相変らず眉が下がっている。
ミヤビは恨めしそうな視線を送ると
前を向いて瞳をギュッと瞑った。
覚悟を決め、呪文を唱えながら、剣を空に振り上げた。
「ミヤ、ビーム!!」
「ミミミ、ミヤビーム!?」
モモコが目を見張り、声をあげた。
サキがポカンと口を開け、唖然とした表情を作った。
「もう! 絶対、ムリなんですけど!?」
耳まで真っ赤にしながら屈むミヤビをよそに