Berryz Quest 第八話 ──その10── | Berryz LogBook

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Berryz工房を中心とした、ハロプロについてのブログです。
彼女たちを登場人物にした、小説も書いてます。

「でも凄いよね、まだ若いのに
 伝説の錬金術師だなんて」
 
サキが感心したように言うと、アイリの顔が
明るくなった。

照れ笑いを浮かべながら身体をくねらせる。
モモコが駆け戻ってきてアイリの肩を抱いた。
 
「凄いでしょ! だってね、初めて王さまに
 剣を献上したのが八歳の時なんだよ」
 
その出来の良さが評判を呼び、ついには
皇族から依頼があったのだという。
 
「そんな、そんな。そう言うモモだって、この若さで
 やり手の武器商さんじゃん」
 
そう言いながらモモコの肩を突いた。
サキとミヤビは目を丸くした。
 
「えっ、モモってやり手なの?」
「マジ? 信じらんない…」
「もう、アイリったらぁ! やり手だなんて」
 
実際、そうなんだけどね、とまんざらでもなさそうな
モモコの顔を、サキとミヤビはまじまじと見つめた。
 
「でも、アイリの方が凄いよ。えっと、なんだっけ」
「カッパ」
「そうそう、カッパの生まれ変わりなんだって」
 
モモコを見つめていたふたりの視線が、アイリに移る。
「かっぱ?」と呟き、揃って首を傾げる。
 
「あっ、カッパっていうのは、東方の島国に棲む
 魔物なんだって」
 
モモコがそう説明するが、アイリはそっと身体を寄せ
「魔物じゃないよ、妖怪だよ」と囁いた。
 
サキとミヤビは、またもや「ようかい?」と揃って呟いた。

「そうそう、妖怪ね。水の中に棲んでるだっけ」

「そうだよ、水神さま」

「だよね、だからアイリは水や氷に関係する
 錬金術が得意なんだよね」
 
なので氷の刃の作製に、彼女は最適なのだとモモコは言った。
 
カッパとか妖怪についてはよくわからなかったが
水神の加護により、水に関する錬金術に
優れているということは、サキとミヤビにも理解できた。
 
「ところでさ、剣創るのはいいんだけど
 買い手とか決まってるの?」
 
アイリが尋ねる。

モモコが掌でサキとミヤビを指した。

自分の住む町で、モンスターハンターを営んでいるのだと
ここに来て、ようやくきちんとした紹介が行われた。
 
アイリがふたりに顔を向けた。
 
「どっちの人が使うの?」
 
サキが、あまり剣は得意じゃないからと答えると
アイリは身を乗り出し、ミヤビの顔を覗き込んだ。
 
あまりにも真剣な表情で見つめられ
思わずミヤビは恥ずかしそうに下を向いた。
 
「ヤダ!」
 
突然、アイリが声をあげた。
腕組みをして、プイと顔を逸らす。
 
ミヤビは弾かれたように顔を上げた。
 
「えっ、なんで!?」
 
モモコが叫ぶように言った。
横向きに座り、顔をアイリに近づける。
その表情に焦りの色が浮かんでいた。
 
「だって弱そうなんだもん」
 
アイリは困ったように眉を下げ、頬を膨らませた。
 
「はぁ……」
 
ミヤビの口から、気の抜けたような声が漏れた。
上目遣いに、探るような視線をアイリに送る。
 
モモコが、ミヤはこう見えて結構な腕前なのだとか
ここはモモの顔を立ててなんとかなどと
言ってアイリを説得している。

だが、アイリは頑として受け入れない。
 
「もう、ミヤもなんとか言って。キャップも!」
 
とふたりに反論を求めるが、自分で強いだなんて
言えるはずもなく、ただ苦笑いを浮かべるだけだった。
 
「でもでも、剣を使うのはミヤだけじゃないよ。
 キャップだって使うかもしんないし、他にも…」
 
「えーっ! でもこの人も、あんまり強そうじゃないし」
 
そう言ってアイリがサキを指差した。
 
ミヤビの顔色が変わる。

なにか言おうと口を開きかけたが、その前に
サキが立ち上がった。
 
「じゃ、帰ろっか」
「キャップ! なに言い出すの!!」
 
モモコが目を丸くする。
サキはチラリとミヤビを見やり、口元に笑みを浮かべた。
 
「だって、ねえ。剣、創ってくれないんじゃ
 居てもしょうがないじゃん」
 
するとミヤビもスッと立ち上がった。
無言のまま、首を縦に振る。
 
「ちょっと、ふたりとも怒んないで!
 モモがちゃんと話するから、機嫌直して」
 
「別に怒ってないよ、用がなくなったんなら
 早く戻んないと。
 だって、チィとリサコだけじゃ、心配だし」
 
サキの言葉を受け、ミヤビは無言で頷いた。
焦るモモコの隣で、アイリが笑顔を作る。
 
「まあまあ、夜も遅いことだし、今夜は
 泊まっていったら?」
 
だが、サキは笑みを浮かべ首を振った。
 
「いや、ご馳走になった上に、用もないのに
 これ以上、ご厄介になる訳にはいかないから」
 
今度もミヤビは黙ったまま、ただ頷いた。
 
「ほらぁ、やっぱり怒ってるじゃん!」
 
モモコが声を荒げる。

が、サキはそれを無視してアイリに頭を下げた。
「行こ」とミヤビに声をかけ、さっさと歩き出した。



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