Berryz Quest 第八話 ──その7── | Berryz LogBook

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Berryz工房を中心とした、ハロプロについてのブログです。
彼女たちを登場人物にした、小説も書いてます。

「あのぉ、なんの御用ですか?」
 
少女が眉を下げ、困り顔で首を傾けた。

来客が、自分と同年代であるとわかり、扉を開けたが
それでもまだ、完全に警戒心を解いていないようだ。
 
「あの、この家の子ですか?」
 
ミヤビが遠慮がちに尋ねる。
少女は上目遣いでコクリと頷いた。
 
「お家の方、どなたかいらっしゃいます?」
 
サキがそう言いながら、軟らかい笑みを浮かべた。

少女が小首を傾げる。

一旦、家の中を振り返り、顔を戻すと
おずおずと自分の顔を指差した。
 
「うん、それはそうなんだけど、お父さんか
 お母さん、居ないですか?」
 
サキが重ねて尋ねる。

少女は困り果てたように、無言で
ぼんやりした視線を宙に泳がせた。
 
ミヤビがサキの耳元で囁く。
 
「ちょっとさ、この子、頭弱いのかな?」
 
少女に聞こえないよう小声で言ったつもりだったが
どうやら彼女の耳にも届いていたらしく
鋭い視線をミヤビに向けた。

しっかり結ばれた口元が、怒りをあらわにしてる。
 
「ちょっとミヤ、失礼でしょ」
 
ミヤビの肩を突き、サキがたしなめる。
 
「ゴメンなさいね、変なこと言って。
 あたしの名前はサキ。よろしくね。
 この子はミヤビっていうの。
 で、向こうに居るのが……」
 
そう言ってサキは身体を馬車に向けた。

幌のついた荷台に上半身を突っ込み
鉱石を引きずり出そうとしているモモコのお尻が
右に左に揺れていた。
 
「モモ!」
 
サキの肩越しに馬車に目をやった少女が
突然声をあげた。
手を振りながら、プリッとしたモモコのお尻に
向かって走り出す。
 
モモコが荷台から身体を上げた。
前髪を小指で直しながら、真顔をこちらに向け
目を細める。

が、駆け寄ってくる少女に目を留め、表情を崩した。
 
「アイリィ~! 久しぶり!!」
 
サキは唖然とした表情でふたりを見つめた。
 
「お尻、見てモモってわかるんだ」
「ねっ、びっくりだね」
 
ぽかんとするサキとミヤビをよそに
二人は手を取り、抱き合って再開を喜んだ。
 
「遅かったじゃ~ん。
 お昼前には、着くと思ってたのにぃ」

「ゴメンねぇ、ふたりにさぁ、お城見せたくってぇ」

「そっかぁ、遠回りしちゃったんだねぇ~」
 
頷くモモコに、少女は、だったらしょうがないね
と破顔した。

が、その発言をサキは聞き逃さなかった。
 
「えっ、遠回りだったの!?」
 
どうやら、山道から真っ直ぐここに向かえば
遅くとも昼過ぎまでには着いていたらしい。
 
「城なんて、どうでもいいよ…」
 
ため息をつき、サキは膝に手を突いてうな垂れた。

どっと疲れが出たと言って
ミヤビもその場にしゃがみ込んだ。
 
「ちょっとぉ、ずっとモモが馬車、操ってたんだよ。
 ふたりは後ろで座ってただけじゃん!」
 
「そうだけどさぁ」
 
「後ろだって、キツイんだよ」
 
モモコの荷馬車は、御者台以外に座席がない。
なのでサキとミヤビは、荷台に藁を敷いて
その上に座っていたのだ。
 
乗り心地は快適とはいえず、腰やお尻が痛い。
 
どうせ、しばらくは滞在することになるのだから
見物はいつでもできる。

少しでも早く着いてくれた方が
サキやミヤビにとってはありがたかった。
 



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