Berryz Quest 第壱話 ──その5── | Berryz LogBook

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Berryz工房を中心とした、ハロプロについてのブログです。
彼女たちを登場人物にした、小説も書いてます。


「そうだ、このコ連れてけば」薬を探す手を止めマーサが言った。
「戦うとかムリだけど、見張りぐらいはできるでしょ。そしたらミヤも眠れるじゃん」

「うーん、でもなぁ…」

足手まといにならないか、それが心配だった。
せっかく獲物が現れても、下手に騒がれて逃がしては元も子もない。

「大丈夫だよ。意外としっかり…は、してないかもしれないけど
 少なくとも邪魔にはなんないでしょ…たぶん」

「なに、なに、なに?」

リサコが目を輝かせふたりの顔を見回す。

自分の話をされてるとは思ってないらしい。

「リサコさ、ハンターの仕事したくない?」

マーサが訊ねると、リサコは「したい、したい、したい!」と何度も頷いた。
嬉々としてなにをすればいいのか訊いてくる。

「畑の見張り。でさ、魔物が現れたら寝てるミヤを起こすのさ。できる?」

リサコは笑顔でうんうんと頷きながら親指を立てた。
カウンターに突っ伏したままミヤビは冷ややかな視線をリサコに送った。

「ホントにできんのぉ。ゴブリンだよ、ゴブリンが出るんだよ?」
「アタシ、平気だよ! ゴブリンぐらい」
「朝まで見張るんだよ、ウチと交代で。できるの?」
「できるもん!」


ムキになって返してくるリサコに

本当に理解しているのかとミヤビは不安になった。
だが、寝不足で働きの鈍っている頭で、これ以上考えるのは面倒だ。

「わかった、着いといで」

そう言って立ち上がる。手を叩きながら跳ねて喜ぶリサコに
遊びに行くんじゃないんだとミヤビは苦い表情を作った。

「ちょっと待って」

カウンターから外へ出ようとするリサコを、マーサが呼び止めた。
大股で奥に向かい立てかけてある数本の杖から一本を選ぶ。
リサコの元へ戻るとそれを差し出した。

「これ貸したげるよ。この前教えたじゃん、雷の呪文。ここ…」
と言って杖にずらりと並んだ魔法陣のひとつを指差す。
「この一番上の印を押さえながら唱えると雷が落ちるから」

「へぇー、すごい技持ってんじゃん」

よくも数日という短期間で習得したものだと、ミヤビは素直に感心した。

「じゃ、一回やってみようか」

とマーサが言う。ミヤビは「ここで!?」と素っとん狂な声を出した。
「危ないじゃん」

「平気。さ、ここ立って。で、向こうの扉に向かって…」

マーサは左手をリサコの肩に添えながら右手で玄関扉を指した。
真剣な表情で頷いたリサコは、杖の印を親指で押さえながら前を突き出した。
部屋の隅に身を寄せミヤビは不安げにそれを見守った。


口の中でもごもごと呪文を唱え、リサコは「えい!」と杖を振った。
すると扉ではなく隣の窓の前に、チッという小さな音と共に
糸のように細い閃光が天井から床へと走った。

「はっ? 今のが雷!?」

ミヤビは唖然とした顔をふたりに向けた。
が、マーサはよくやったとでも言いたげに微笑みながら手を叩いていた。
リサコが得意げな表情でミヤビに笑いかけてくる。

「あとね、ここを持ってこう振るともっと命中率が…」

ミヤビの落胆をよそに、マーサはリサコに魔術の指導を始めた。

「やっぱ、ひとりで行くよ」そう呟き、ミヤビはカウンターから薬の包みを掴んだ。
「請求はキャプテンに回しといて」

ふたりに背を向け、手にした包みを振りながら玄関扉へと向かう。
まだ指導を続けているマーサの「うん、わかった」という生返事が聞こえた。

「あっ、待って!」

呼び止めるリサコの声を無視し、ミヤビは扉を開いた。





「がんばっといで」

ミヤビの後を追って飛び出したリサコに、マーサは手を振って送り出した。
一旦外に出たリサコだったが、扉から顔を見せると
片目をつぶって手を振り返してきた。

留守居は真ん中の武器屋で待機する決まりになっている。
扉が閉じるのを確認して、マーサは武器屋に足を進めた。
が、ふと立ち止まって首を傾げる。

「そういや、ミヤってなにしに来たんだっけ?」

一瞬、思いを巡らせるが、まあいいやと言って歩き始めた。
が、カウンターに散らばる薬の包みが目に入り再び立ち止まる。
ひい、ふう、みいと数を数え、顔をしかめた。

「なにぃ、十つくれって言ったのに九つしかないじゃん」

そうぼやいてひとつ包みを開けると、小指の先につけて舐めた。

「やっぱり。配合が逆になってるよ。こりゃヤバイね。そうとう強いよ、効力が」

ぶつぶつ言いながら包みを全部ゴミ箱に放り込む。
そして武器屋に向かいながら、最後にこう呟いた。

「またムダになっちゃったじゃん、睡眠薬がさ」



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