プロスケーター羽生結弦が明かす「単独公演」の舞台裏…2時間で10近いプログラム、「一人で駅伝を走っている感覚」

田中充さんの記事です
 
羽生結弦さんへの単独インタビュー後記
 
日々のトレーニングやコンディショニングが万全であったとしても、本番ではもう一つの「ハードル」が待っている。それがピーキングをどう合わせるか、である。
 
《抜粋》
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羽生さんは「マラソン」と「駅伝」という例を出してわかりやすく説明をしてくれた。

「僕の公演は、マラソンのようにずっと一人で走っているんですけど、実際には、一つずつのプログラムが駅伝の区間のようになっているイメージです。フリーのような長いプログラムもあれば、短い時間のプログラムもあるのですが、すべての曲に、常にベストの状態でぶつかるように心掛けています」

 

「マラソンのように一人で全部の距離を走っているわけですが、実際にはパートごとにそれぞれを担う『羽生結弦』がいて、それぞれの『羽生結弦』が全力でひとつずつのプログラムを滑っていて、それがすべて合わさったときに一つの『単独公演』という作品になっています」
 
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靴の紐を結ぶときも頭の中はフル回転

 
次から次へとプログラムを演じていくことになる羽生さんに唯一、与えられた小休止は演目と演目の間のわずかな時間だけである。しかも、衣装を着替え、そのために靴紐をゆるめ、締め直す作業が待っている。もちろん、完全に気を抜くことはできない。
 

最たる理由が、靴紐の結び加減はパフォーマンスやケガのリスクに直結するからだ。

 もちろん、誰かに委ねるわけにはいかない。自分がフィットする感覚に調整するための作業には「めちゃくちゃ握力を使うんです」と苦笑するほど、手の力を消耗する。

 

この間にも、頭の中はフル回転で「この身体をどうやって回復させようか」「次の演目に向けて身体の状態とテンポ感をどう変えていこうか」とめまぐるしく考えを巡らせている。

 

そうして創り上げてきた唯一無二の単独公演はいまなお、まだまだ限界をみない。実際、羽生さんはインタビュー時に「『プロローグ』のときは、MCが長くて、プログラムの数もいまと比べると間違いなく少ないです」と正直に話している。

 単独公演を重ねる中で、凝縮度を高めていくには、それだけ負荷がかかる。その負荷に屈しないトレーニングと、想像を超える演出のために考えを巡らせ、「心・技・体」のすべてを高めていく。

 

 

 

 

 

 

『Quadruple Axel』羽生結弦スペシャル