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フォトグラファー・矢口亨のフォトコラム

 

指先の美しさに表れた羽生結弦の“伝えたい”想い 5000人の鳴りやまない拍手が示した祈りの到達

 

 

 
 

 

 幕張公演初日、純白の衣装に身を包んだ羽生結弦は「ダニーボーイ」のピアノの旋律をなぞる様に、眼前に掲げた両手の指を折り曲げた。羽生の表現はいつも丁寧で繊細だ。

 

 自分の気持ちを誰かに伝えるのは難しい。ましてや、言葉よりも曖昧なフィギュアスケートという表現。その難題に向き合う大変さを、羽生自身が一番よく分かっている。だからこそ、一音一音に想いを乗せて舞う。伝えたいという想いの強さが、指先の美しさに表れている。

 

「ダニーボーイ」の音楽が終わり、会場が暗転した。5000人を超える観衆がスタンディングオベーションで29歳の青年を讃えた。鳴り止まない拍手は、希望への祈りを込めたプログラムが会場の人々の心に「届いた」ことを示していた。

 

 

(矢口 亨 / Toru Yaguchi)