羽生結弦が超一流である理由 

ベテラン製氷作業員が証言「必ず僕らにも頭を下げる」

 
 
 

【現場ノート 取材の裏側】

氷が入ったバケツを持ち、リンクの穴を埋めていく。スケーターたちの華やかな競演の裏で、地道な作業は朝から晩まで続く。

「選手が転ぶのが一番かわいそうでね。そうならないように祈りながら埋めるんです」

 昨年末、熱戦を繰り広げたフィギュアスケート全日本選手権(さいたまスーパーアリーナ)。この道60年の製氷作業員・高橋二男さん(84)は早朝の公式練習から夜の本番まで、リンクサイドに張り付いていた。1972年札幌五輪も経験したベテランは、選手がジャンプした場所を頭にインプット。製氷の時間になるとその位置にめがけて行き、熟練の技で次々と穴を修復する。

 リンクの下部はマイナス6度。雪を入れると2、3分で凍り、その上から製氷車が約40度のお湯をまき、平らになる。「大会初日は硬いけど、2日目から徐々に安定してくる。そこからどう維持するかが勝負」。多くの選手が高橋さんを頼り、氷の状態を把握する。

 これまで見た傷跡は数知れない。穴の大きさやキズの長さで選手の技量が分かる。「穴の深さは1センチくらい。女子よりも男子、日本人より外国人の方が大きい」。中でも五輪2連覇・羽生結弦(ANA)が残す傷跡は唯一無二だという。

「普通の選手はジャンプを跳ぶ前の助走で氷に深いキズがつけられる。でも、羽生君は助走の跡がほとんどない。降りたところにちょっと残るくらい。穴は大きめだけど、前後のキズが格段に少ない」

 以前、元全日本4連覇の小川勝氏は「羽生君は力任せに跳ぶのではなく、踏み切りからランディング、降りるまでまでスムーズ。力を抜いて高い質のジャンプを跳ぶってものすごい技術なんですよ」と解説したが、高橋さんの証言と見事に一致。この取材の2日後、羽生は前人未到のクワッドアクセル(4回転半ジャンプ)に挑戦し、6度目の大会制覇を成し遂げた。超一流の証しは氷上にも刻まれている。

 長年、スケーターを支えてきた高橋さん。最後にこんな裏話も教えてくれた。

「いろんな選手を見てきたね。現役時代は全くあいさつしなかったのに、プロになって急に愛想を振りまく人もいた。でも羽生君は違いますよ。製氷ですれ違うと必ず僕らにも頭を下げてくれる。なかなかできることじゃないですよ

 彼がなぜ世界中から脚光を浴び続けるのか。こうして現場の声を聞くとよく分かる。

(一般スポーツ担当・江川佳孝)

 

yahooニュース記事のコメントより

フリーの日、第二グループ後の製氷時に高橋さんに気付きました。

丁度、羽生選手が4Aをする辺りにずっといらしてそれはそれは丁寧に穴の修復をし、製氷車の方に何度も何度もその辺りをきちんとコース取りをして製氷するように指示されていました。
その拘りと選手を想う気持ちが凄くて目が離せませんでした。

羽生選手は製氷の方に頭を下げ場合によっては自ら手伝うという姿勢は、氷がないと出来ないスケートを裏で支えてもらっているといった感謝の気持ち。
演技や容姿だけでなくその姿勢や気持ちの方にも大きく心動かされます。

 

 

 


 他にも製氷中に高橋さんに気付いた方のコメントも照れ


高橋さんの甥っ子さんもコメントされています