私は不思議な出来事を時々体験するのですが、

ちょっとおかしいと思われても嫌なので、

普段は、そういうことを信じている人にしか話しません。

でも、今日は、ちょっとだけ話してみようと思います。

 

奈良市に、里の古民家を改装した、開山も、浅い、

小さな真言宗のお寺があります。私が奈良に転居後ご縁があり、

鍼療院開業前に、毎月の縁日や、ボランティアでお掃除等に行っていました。

ご住職は、とてもお元気な今年70歳の女性僧侶です。

何度も、四国八十八ヶ所霊場へ、奈良の有志を募り

先達(せんだつ)(巡拝案内をする人)をされています。

 

私がボランティアでお寺に伺った時のことです。

他には参拝客もおられなかったので講話ではありません。

 

ご住職が「不思議な話があります」と話してくださいました。

ご住職が先達で、ある遍路宿に宿泊した時の話です。

四国の霊場参拝は車やバスで廻っても何日もかかるので、

お寺の宿坊や旅館、民宿などの遍路宿が四国中にあります。

団体さんは、和室の大部屋に皆で宿泊します。

 

ある遍路宿で宿泊者がご住職一行だけだったときの事です。

大部屋の3部屋に分かれて宿泊されたそうです。

寝床に横になると、人の話し声や笑い声が聞こえたそうです。

「隣の部屋の人達はいつまでもうるさいなあ」と思われていたそうです。

翌朝聞いてみると、両隣の部屋の人は誰も話などしていないということでした。

隣の部屋の人の中にも同じように

「隣はいつまでも、うるさいなあ」と思っている人がおられたそうです。

 

その話をお聞きして、私も思いだしました。

昔、同行者と2人で、歩き遍路もどき、をしたことがあります。

なぜ「もどき」かと言うと、楽な所は歩き、しんどい所はバスで移動したからです。

閑散な時期でした。街以外は宿泊客は私達2人だけでした。

ある広い宿(宿坊だったかも分りません)も宿泊客は私達2人だけでした。

2階の部屋でした。灯りを消して横になると階下で大勢の話し声がします。

楽しそうな笑い声もします。

深夜ではなく、21時か22時頃だったと思います。

近所の人が遊びに来てるんだろうか?

遅い時間だけれど、町内の集会でもあるんだろうか?

ガラガラと戸を開けて入ってくる人の気配もします。

男女の楽しそうな話し声、笑い声がし続けます。

「うるさいなあ」

同行者はお酒を飲んで、すっかり、ぐっすり寝入っています。

あんまり、うるさいので、近所に居酒屋でもあるのかと、起きて外を見ました。

外は薄暗くて静かです。起きると声は聞こえません。

横になると又聞こえてきます。いつまでも。

木造の2階で横になると階下の大きな音は聞こえます。

 

宿の人がカセットで落語のライブを聞いているんだろうか?

宿の人は、うんと年配の女性だったのでカセットと思ったのです。

そのカセット内に寄席の客の笑い声も入っているんだろうか?

宿の人は聞こえづらくて、ボリュームを上げて聞いているんだろう。

などと思いながら、やがて寝ました。

 

翌朝、聞いてみようとしたのですが、

簡単な朝食の用意がしてあり、宿の人は現れません。

味噌汁を持って来たのは昨夜の係とは違う、

朝だけの手伝いの人だったのかも分かりません。

宿代を払ったと思うのですが、

こちらがバタバタと急いでいたのか、

そこはよく覚えていないのですが、

前夜のことは聞きそびれました。

 

奈良のお寺のご住職に「私も」と一通り話すと

宿の人が落語のカセットを聞いていたとか、

そんな風に思っていて良かったと、おっしゃいました。

ご住職は人格者なので、「そんなはずはないだろ! 」

とは言われませんでした。

 

あんまり、はっきり聞こえ続けたので

まさか霊 とは思いませんでした。