宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)は「古事記」に登場する神様です。
「日本書記」では倉稲魂神(うかのみたまのみこと)と記されています。
「ウカ」とは穀物・食物という意味で五穀豊穣を司る穀物神とされています。
出自は古事記と日本書記で異なっており古事記では須佐之男命(すさのおのみこと)と神大市比売命(かむおおいちひめ)の子として、こちらも穀物神の大年神(おおとしがみ)と共に生まれています。
日本書記では国生みの時に伊弉冉尊(いざなみ)から生まれたとされています。
どちらにも名前が出ているのみで実績等の記述は無いようです。
宇迦之御魂神は一般的には商売繁盛の神さま「お稲荷さん」として信仰されています。
お稲荷さんは元々渡来系の一族である秦氏の氏神の穀物神だったそうです。
「稲成り(いねなり)」が転じて「いなり」となったと言われており、「稲生」「稲成」「伊奈利」と表記する神社もあります。
同じ穀物神ということで宇迦之御魂神と結びついたようです。
他にも仏教系の神様である白狐に乗って人肉を喰らう夜叉「荼枳尼天(だきにてん)」、民俗神の「宇賀神(うがじん)」や「白蛇神(はくじゃしん)」と習合しています。
その過程で農耕神から商売繁盛・産業の神様としても信仰されるようになったようです。
「宇賀神」・「白蛇神」は弁財天とも習合していましたね。
「お稲荷さん」には神道系と仏教系とがあります。
神道系のお稲荷さんは「宇迦之御魂神」のことで、総本社は京都の伏見稲荷神社になります。
仏教系の「お稲荷さん」は先に上げた「荼枳尼天」を信仰するもので総本社は愛知県にある「豊川稲荷」になります。
あと修験道系の「お稲荷さん」もあり、長野県の飯縄山における山岳信仰を始まりとする「飯縄権現(いずなごんげん)」という神仏習合の神がそれにあたります。
飯縄権現は一般的に「戦勝の神」とされ白狐に乗った烏天狗の姿で表されますが、その原型は「荼枳尼天」にあるようです。
飯縄権現は主に関東の寺院で信仰されているようです。
一言で「お稲荷さん」といっても様々な神様が習合・同化して現在の形になっているようですね。
「お稲荷さん」といえば狐のイメージが強いですが、狐はお稲荷さんではありません。
「宇迦之御魂神」の別名「御饌津神(みけつのかみ)」を「三狐神(みけつのかみ)」と表記したことが始まりでそのようなイメージになっていったようです。
その他にも元々あった「田の神」としての狐信仰と農耕神としての稲荷伸が同化していったという説もあるようです。
宇迦之御魂神を祀る関西の主な神社には
・伏見稲荷神社(京都)
・瓢箪山稲荷神社(大阪)
・源九郎稲荷神社(奈良)
などがあります。
補足ですが
荼枳尼天を祀る関西の主なお寺には
・比叡山 星峯稲荷(滋賀)
・鞍馬山 吉鞍稲荷(京都)
・了徳院 白髭稲荷(大阪)
・知恩院 濡髪祠(京都)
・建仁寺 興雲庵(京都)
などがあります。
飯縄権現に関しては関西ではあまり信仰されているお寺はないようですが、金比羅神と融合した「金比羅飯綱大権現」という形で大阪府高槻市の神峯山寺(かぶさんじ)に祀られています。
神峯山は修験道の開祖である役小角(えんのおづぬ)が開いたとされるお寺で、日本で最初に毘沙門天が安置されたお寺だそうです。
是非行ってみましょう。