※現在私は、長野県安曇野地球宿というところで宿主の望さん、スタッフの萩麻君とともに働いている。

 

ゲストハウスのホスト側になって何年かたつけど、友だちのように接するのはまだまだ勇気がいる。「やっぱりどこかお金をもらっているのだから丁寧語で話さなければならないんじゃないか」と今もまだ思っているんだろう。無礼な!と思われるのが怖いのかもしれない。

 

 

私が大学を出て初めての会社に就職したとき、仕事とプライベートは完全に分けて考えていたし、お客様は完全に「壁の外の人」と言う感覚だった。友だちにるという発想すらうかばなかった。へこへこしていた。

 

だけどあるとき営業先へ同行してくれた上司から「商談のとき、お客さんとの間にみえない壁があるような気がする」と言われ、はっとした。

 

確かに、私は完全に壁を作っていた。別世界の人として扱っていた。「でもそんな風に扱わなくてもいいんだ、友だちになってもいいんだ。」と気づいた。

 

それからは壁をなくして友人と同じように接する意識で商談に望んだら顧客との距離は縮んだし、プライベートで飲みなどに誘われても楽しく出かけられるようになったし、若かったこともあり良くおごってもらった(私の会社には幸い接待と言う考え方はなかった)

 

 

それでも、サービスを提供する側・される側というのは確固としてあった。だけどゲストハウスではそこがさらにあいまいだ。宿側がゲストにタメ口で話をしたり、時にはお手伝いをお願いしたりもして、ゲストもそれを嬉しそうに受け取る、と言う世界がそこにはあった。

 

 

お金を払って何かをしてもらう、これは簡単。

お金のやり取りなしに、何かをしてほしいとお願いする。これは少しだけ心理的ハードルがあがる。

お金をもらった上に、お手伝いをお願いする。これは相当ハードルがあがる。

 

 

だけど、ゲストハウスにはそれがかなう空気感がある。とはいえ礼儀や感謝の気持ち、気配りは忘れてはいけないし、相手によってどこまでOKかというのも違うし、ゆっくりしたいときもあるだろうから簡単ではない。

 

多分そこは、通常の(お金を介さない)人間関係で意識することとそんなに変わらない。

 

常識的な考え(お金をもらってるんだからサービスしないといけないだろう)にとらわれずに相手が本当に喜ぶのはなんだろう、ということを考え、感じ続けることが大切だと思う。「手伝うことが楽しい」という人だってたくさんいるのだから。