『鬼女』は木嶋佳苗劇場を揶揄したドラマ | 今日もまた日がな一日テレビを観てしまいました

『鬼女』は木嶋佳苗劇場を揶揄したドラマ

 昨日は金曜エンタテイメント『鬼女』を観ました。いや~、なかなか面白かったです、このドラマ。

 ただネットの評判を観てみると、評価はかなり賛否両論。特に視聴後すぐに観た某掲示板の実況版では、否のほうが圧倒的に多かったです。「なんだよこの終わり方!」と、怒ってる人もかなりいました。

 ではなんで、「実況版」にはそういう意見の人が多かったのか? ……というと、その理由はすでに掲示板の書き込みの中にありました。

「え? 木嶋佳苗って無罪だったの?」

 そう、このドラマの元ネタは木嶋佳苗事件。そして、藤山直美のキャラがあまりにもまんま木嶋佳苗だったもんで、元ネタではなく「木嶋佳苗のドキュメンタリー」だと思って観てた方がかなりの数、いたのであります。

 もちろん、そう思って観てた人も大半は、途中で「あ、違うんだ…」と気付いたようですが、実際の事件では死刑判決が出た容疑者を、ドラマとはいえそれを元ネタにしておいて無罪にしたもんだから、漠然と拒否反応が出ちゃった……という感じでしたね、実際に書き込みの内容を見てみると。あ、フジテレビのドラマっていうのも、そこに拍車をかけたのかもしれない(笑)。

 でもですよ、このドラマって、あの当時のマスコミや世間の感じを見事に盛り込んだ内容になってるんですよね。

 例えば前半。真由美(藤山直美)は下品な物言いで誰彼かまわず悪態をつきます。エリート女性検事の岡部貴子(田中美佐子)を「夫婦生活は上手いこといってます?」「旦那に愛されない女房ほど不幸なものはありませんよ?」と上から目線で攻撃し、被害者の娘・浅野緑(小池栄子)からは「このブス!」と罵られ、まさに当時の「なんであんなデブでブスなオバサンがモテるんだ?」という部分を着実に再現。要するに木嶋裁判の一番下世話な部分が目白押しなのであります。

 で、後半になると、これが佐野眞一のノンフィクションを思わせる、彼女のルーツ探し、そして何が彼女をそうさせたのか……という、心理面へと話が進みます。ここで佐野眞一バリに活躍するのが、スポーツ紙の女性記者・野本千明(夏川結衣)。彼女は真由美に養子に出した難病の子供がいることを突き止め、しかも多額の医療費を送っていることも知り、感情的に真由美を擁護して世論を誘導する記事を書くのです。

 もちろん、木嶋事件にはそんなのは無かったですけどね、でも、千明の「難病の子に仕送りしてるんだから真由美は悪い人間じゃない」という短絡的な感情は、佐野眞一が木嶋佳苗本で書いた「木嶋佳苗のルーツ(北海道別海町)と東京とを対比させ、事件の要因をそこにこじつける」という短絡性となんら変わらないんですよね。要するに、事件の本質そっちのけで自分の感情的な主張を押し付けるという、マスコミのもうひとつの悪の面ですね。

 で、このドラマにはそこにもちゃんとオチがついていて、そんな千明を最後の最後で奈落の底に突き落とすのです。実に痛快にして、マスコミの危うさを表す方法でね。

 だからこのドラマって、好きか嫌いかはともかく、本当に当時の状況をよく理解して、その上で当時のマスコミや世論を揶揄した、見事なアナザーストーリーになってたな~と私は思ったのでありました。

 あ、それとね、とにかくこのドラマ、出演者がみんな本当に良かったです。主演の藤山直美は演技はもちろんのこと、本当にデブでブスなオバサンなのに、変に下品な色気がある所が本当にピッタリでした。いくら演技の上手いブスなオバサンでも、泉ピン子じゃあの色気は出ないですよね。それと迫真の絶叫を見せた田中美佐子も小池栄子も良かったし、その他みんな文句なく良かった。だからこそ、みんなハマって、最後に無罪になって「ふざけんな!」と実際の出来事のように思っちゃったのかもしれませんな(笑)。おしまい。