「凄い…綺麗…」
『たまにね
一人でここに来るんだ』
「いつからこの場所
知ってたの?」
『つい最近だよ。
夏休みが明けてから』
「そうなんだ…」
ここに来て
物思いにふけたり
するのかな。
『ここ、座って』
「うん」
建物の陰になっている位置に
壁に寄りかかるようにして座る。
空を見上げると
夕陽に染まった鱗雲が
ゆっくりと動いていた。
『で、何かあった?』
きっとあなたは
私に何かあったと
分かっていて
だからここに連れて来て
くれたんだよね?
「うん…」
『何があったの?』
正直に話して良いのか
分からない。
あなたに頼ったりしても
良いのかなって。
『僕じゃ頼りない?』
「ううん、違うの…」
『たまには僕にも頼ってよ。
いつも僕が
支えられてばかりだから』
「そんなこと無いよ」
『ヌナのことも支えたいって
ずっとそう思ってるよ。
だから、僕で良かったら
話して欲しい』
どうしてあなたは
そんなに私に
尽くそうとしてくれるの?
私があなたに与えたものなんて
これっぽっちも無いのに。
『…ヌナ?』
「…あのね」
『うん』
「彼に少し距離を置きたいって
そう言われたの」
言葉にすると
また哀しみが込み上げてきて
のどがつかえる。
油断するともう
涙が溢れてしまいそう。
『え…』
少し驚いたその後に
困った様な顔で私を見つめる。
『どうして?』
「きっとね…私のせいなの。
私が…わた…し…」
あぁ、だめだ。
もう涙が…落ちそう
『ヌナ』
溢れ落ちる涙を隠そうと
手で顔を覆ったのと同時に
あなたが私をそっと抱き寄せた。
あなたの胸の中で
私は感情のままに
思いっきり泣いた。
ただ涙がとめどなく溢れた。
あなたの優しさに包まれて
安心したのかもしれない。
そんな私を
何も言わずにずっと
抱き締めてくれた。
涙が止まるまで
ずっとずっと
抱き締めてくれた。
終わりが見えてやっと
嘆き始めた私の心には
もうその答えが出ていたの。
いつからか当たり前に
なっていた彼の存在が
本当は自分の中で
無くてはならないものになっていて
こんな風になって初めて
それに気付くなんて…
私は本物の馬鹿だ。
Twitter▷▷「_DazzlingBoy」