「…ヌナ?」
『…あのね』
閉じていた口が静かに開く。
「うん」
『彼に少し距離を置きたいって
そう言われたの』
ドクン…
「え…」
予想以上の事態に
耳を疑った。
距離を置く…?
あんなに幸せそうだったのに?
「どうして?」
『きっとね…私のせいなの。
私が…わた…し…』
ヌナの瞳にどんどん
涙が溜まっていく。
苦しい。
辛い。
ヌナの心はどれほど
傷付いたのかなんて
計り知れない。
僕には分からない。
二人の愛の間に
何が起きているのか。
上手な言葉も出てこない。
こんなにヌナを
想っているのに。
今の僕にできることは
「ヌナ」
行き場のない哀しみを
全て受け止めること。
全てを包み込むこと。
君は僕の胸の中で
まるで子供のように
泣き続けた。
柔らかい感触が腕に伝わる。
僕よりずっと小さい背中。
華奢な身体に
サラサラと綺麗な髪。
優しく鼻をかすめる香り。
君をこの手で抱き締めたいと
ずっと願っていたはずなのに
どうしてこんなに苦しいの?
こんなにも近いのに
心は凄く遠く感じるんだ。
震える身体を
ぎゅっときつく抱いても
僕のものになんかならなくて
愛する人の為に流す涙が
制服に落ちてじわりと沁みる度に
心がズキンと痛む。
好きだよ。
大好きだよ。
だから君の涙が僕の胸を
逃げたくなる程に締め付けるんだ。
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