『あれ?』
「あれ…」
気付けばもう
花火が始まる時間が迫っていて
目の前に居たはずの
カイ達が居なくなっていた。
『はぐれちゃった?』
「そうみたい…(笑)」
カイに電話をしたら
花火が見えるところに
移動してたみたいで
「カイ達、公園の方に
居るみたいだから
そこまで行こっか」
『うん』
向かおうとしたけど
人が多くてなかなか進めない。
「人多いね」
『私たちもはぐれちゃいそう』
そう言って君は
僕のTシャツの裾を掴んだ。
ドキン…
これは…やばい。
女の子に服を掴まれたら
嬉しいって聞いたことがあったけど
想像を遥かに超えていた。
「しっかり掴まってて」
公園に早く
行かないといけないのに
もう少し、もう少しこのまま
人混みに揺られていたいと思った。
歩いても歩いても人ばかりで
公園に着く前に花火が
上がってしまうんじゃないかと
僕は少しだけ足を速めた。
その時だった。
『わっ!』
「!」
ヌナの手が僕の服から
離れてしまった。
その瞬間
僕は無意識に
ヌナの手を掴んでいたんだ。
自分でも驚いたけど
掴んだ手をそのまま
離すわけにはいかなくて
黙って君の手を引いて歩いた。
ドキン…ドキン…
僕の心臓は壊れそうな程に
鳴っている。
ヌナの方を
見ることなんてできなくて
ただ手のぬくもりが
僕を高揚させた。
君の小さな手が
今僕の手の中に収まっている。
すれ違う人々は
僕たちを見てどう思うのだろう。
ねぇヌナ
このまま僕のものになってよ。
他の奴の手に
渡っている君を想ったら
胸が苦しくて仕方ないんだ。
僕だけのものになってよ。
お願い…
ヒュー…
ドーン!!!
「あ」
花火だ。
『始まっちゃったね』
「うん」
動かなくなった人混みの中で
僕らはそのまま花火を見上げた。
離したくないという僕の気持ちに
応えるかのように
その手は繋がれたままだった。
花火の光に照らされて
キラキラと光るヌナの顔が
あまりにも綺麗で
あの夜見惚れていたのは
花火ではなく
君だったのかもしれない。
