ここのところ毎日のように見ていた夢があって。
暗い道路。
アテもなくさまよう私。
そこに一瞬の閃光が走る。
急ブレーキか。
悲鳴のような音がする。
そのまま車とおぼしきものは私の背後に消える。
よく目をこらすと
人間が倒れている。
轢かれたのか?
そう思いあわてて駆け寄る。
助けなければ。
倒れていたのは女だった。
急な出来事にふるえながら懸命に抱き起こす。
何度も声をかける。
女の意識はもうろうとしていたが、
私に気づくとはっと目を開いてこういう。
「お願い、私を超えて。
あなたなら、私を超えられる」
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全く意味が分からない。
意味を何度か尋ねると、彼女は言った。
「これから、いくつかの試練がある。
それを一つ一つ超えていけば、必ず私を超えられる」
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ますます理解が出来なかった。
とりあえずどこかに運ばなければと思い、
彼女が立てるよう姿勢を直す。
左足から出血しているかのように見えたが、
結局どこが負傷しているのかは確認できない。
彼女は続けた。
「彼を引きずり出せるのは…あなたなら、出来る」
「だから、お願い、私を超えて」
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だんだん意識の遠くなっていく彼女。
だが、意味の分からないことを言われている以上、
そのことに対して尋ねるのは難しかった。
そこで聞いた。
「あなたの名前は?」
彼女は目を見つめて
「私の名前は……」
そこで私の目の前が砂嵐のようになり、
彼女の顔と声が掻き消される。
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「名前は…………………・り…さ……」
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点線で区切った箇所は、
日を追うごとに少しずつ見れるようになっていった場面。
一昨日、砂嵐の轟音の中で
少しだけ名前が聞こえたのだ。
唖然とした。
この感じ、前にもあった。
私の試練の幕開けに見る夢だった。
このタイプの夢を見るのは恐らく4度目。
3度目の時にその意味を気づかされることになったのは
恐ろしいことに必ずや知るはずのない
好きな男の元カノの名前が出てくる。
それも、恐らく過去で一番未練が残っていると言える女の名前が。
大体そんな話を何気なくして驚くのは男の方だったりした。
この、リサという女もその可能性が高いと思った。
何となくだが。
だが、ここまでハッキリと試練があると言われたのは初めてだ。
今日はその続きが見れるのかと思ったが、
予想に反して全く違う夢を見た。
以下夢。
私は彼と過ごしていたが、
そんなとき彼の家に女が遊びに来るという。
言葉の意味を理解しながらも私は平然としていた。
携帯もインターホンもなっていないのに、
彼は、来た、と言って玄関に向かう。
どうしてわかるの?と尋ねると、
そんな気がするからだ、と答えた。
彼の言ったとおり、彼女は扉の前にいたようだ。
おもむろに家の中に入る。
リサという女だと勝手に確信して身構えていたが、
予想を反して全く違う女が来た。
「はじめまして~こんにちわ~」
頭の切れそうな、やせ形で、山本未来似の女性だった。
こちらも挨拶を返し、私は席を外して遠くから彼らを見ていた。
鞄から荷物を出す際に一瞬だけ見えた彼女の名刺。
「木下 佳南子」と言う名前だった。
やはり、リサではなかった。
パソコンに向かう彼。
その横で資料のようなものを開きながらあれやこれやという彼女。
それに関して歯切れ良く答える彼。
議論のようなそのテンポの良い会話はとても洗練されていて、
私と彼との間には一度もなかったような空気だった。
それからしばらくして彼らはベッドに横になる。
何のことはない、寝ころびながら彼は小説のようなものを読んで、
彼女はDSで遊んでいた。
そんなときにぼやぼやとした会話が聞こえてきた。
恐らく彼が、仕事で休みがないことについて、かは分からないが、
そんなようなことを軽くぼやいたのだと思う。
彼女は姿勢を寝返らせて、仰向けになりながら言った。
「”絶対”はあなたのボディになる。だから働きなさい」 と。
またしばらくぼんやりした時間が過ぎていったが、
そんな感じで夢が覚めた。
絶対は彼のボディになる。
その言葉が妙にしっくり来ていて、なんだか悔しかった。
本当に彼はそんな人だ。
こうあるべき、やらなければならない、という、その”絶対”こそが、
今の彼のモチベーションのほとんどを支えていると言っていい。
それが無くなった瞬間の彼は、本当にらしくなかった。
私はそれも見ている。
別にそれは彼を縛り付けているわけでも苦しめているわけでもない、
ただ象られたものに過ぎないのかも知れない。
リサ。
あなたを超えるためにはまだいくつもの試練がありそうね。