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翌日。
私は天王寺さんとふたたび誘拐事件の被害者宅へ聴取に行った。
女性 『お願いします。早く犯人を見つけてください。犯人の手がかりはわかったんでしょうか?あの子のことが心配で・・・・』
あず 『残念ながら現時点では何も分かっていません。犯人の目撃情報も未だあがっていません』
女性 『どうしよう、あの子に何かあったら・・・・』
あず 『手がかりを見つけるためにも、大変申し訳ありませんが、あなたの交友関係を一から調べさせて頂けませんか?』
天王寺 『携帯の履歴、アルバムなどを拝見させていただけると助かります』
女性 『わかりました』
女性はその場で私たちに携帯を手渡すと、
棚から何冊ものアルバムを出して協力してくれた。
私たちは携帯の履歴と、
アルバムに写った人物ひとりずつの交友関係を探っていった。
天王寺 『身元照会は電話会社に依頼するしかないな』
あず 『そうですね。それは私がやります』
天王寺 『じゃ、お前に任せたで』
私たちは数百件登録されているアドレス帳の人物までも調べ上げ、聴取を終えた。
電話会社への協力を仰ぎ、
身元照会のリストをしらみつぶしにチェックしていたら、
あっという間に深夜になってしまった。
2課のみんなは明日に続く捜査のため、早めに仕事を切り上げて帰宅していた。
あず 『あー、疲れた』
ひとりっきりの部屋で、大きく伸びをする。
肩も凝るし、目もしょぼしょぼする。
(でも頑張らないと!)
私は深呼吸をすると、ふたたびリストに視線を落とした。
バタン
いきなりドアが開いたのでびっくりして振り向くと、一沙が立っていた。
花井 『夜食買ってきたぞ』
あず 『帰ったとばかり思ってた』
花井 『息抜きも兼ねてふらっと出てきた』
あず 『そっか』
一沙は袋からいくつもおにぎりを出すと、私にも差し出してくれた。
あず 『ありがとう、一沙。いただきます・・・・・・あー、おいしい!』
おにぎりを食べて、ようやくお腹が空いていたことに気付く。
目の前の仕事に一生懸命で、食事のことなど忘れていた。
花井 『電話番号から何か分かったか?』
あず 『まだ何も。過去数ヶ月の履歴も出してもらったから、調べることが多くって』
花井 『そうか。時間がかかるな。でも休み休みやらないと体がもたないぞ』
私に言い聞かせるような口調だけど、まなざしがあたたかい。
そんな一沙を前にしたら、ますます頑張ろうって思う。
花井 『あ・・・・』
一沙の顔が急にきょとんとした。
あず 『なに?』
花井 『ご飯粒がここについてる』
一沙が指で口元を指す。
花井 『ちょっとじっとしてろ』
私へと身を屈めながら、口元をじっと見つめる一沙。
その手がゆっくり、そっと伸びてくる。
(なんかドキドキしてきた)
一沙の指が口元に触れそうになった時、思わず息を止めた。
花井 『取れた』
あず 『あ、ありがとう・・・・』
花井 『なんでそんなに真面目な顔してるんだ?かしこまった顔してどうかしたのか?』
あず 『ううん・・・・なんか、息止めてた』
花井 『なんで?』
あず 『ちょっとドキドキしたから』
花井 『俺がご飯粒取るのが?』
あず 『うん』
一沙は不思議そうに瞬きを繰り返した後、
ぷっと笑って、指で取ったご飯を口に含んだ。
おにぎりを食べ終えたら、いきなり眠くなってきた。
一沙に気付かれないようにあくびをこらえて、
ふたたびリストと格闘する。
文字を追ってるつもりが、いつの間にか目を閉じてしまう。
(いけない!眠ってる場合じゃないんだから!)
頭を振ってコーヒーを飲んで、ペンを握り締める。
でも文字がだんだん形を失って、ぼやけて、まぶたが下がって・・・・
(だめ・・・・起き・・・・ない・・・・と・・・・)
あず 『んん・・・・』
重いまぶたを上げると、私はデスクに突っ伏していた。
(私、いつの間にか寝ちゃったんだ・・・・)
体を起こそうとすると、肩に濃紺の何かが掛かっていた。
(なんだろう・・・・・・あ、一沙の上着だ・・・・)
一沙は隣の席でシャツとベスト姿のまま、すやすや寝息を立てている。
(かわいい)
私は上着を一沙の肩に掛け、そっと髪を撫でた。
いつもキリッとして厳しい一沙だけど、寝顔は無防備。
ずっと側にいて、この寝顔を見ていられたらいいのに。
そのために私がしなければならないこと・・・・
私はふたたびデスクに向かい、リストを目で追い始めた。
翌朝。
京橋 『花井さん、櫻井さん、まさかお2人とも徹夜ですか?』
花井 『多少眠ったが、泊まりだ』
浅野 『櫻井、やる気あるんだ』
あず 『今頃気付いたんですか!?』
天王寺 『まさかリスト全部洗ったんか?』
あず 『いえ、あと半分です。今日中に必ず洗い出します』
八千草 『あずちゃん、すごい頑張ってるね。僕も頑張らないと!』
瑛希くんの言葉にみんながうなずいてくれた。
桐沢 『よーし、みんな今日も全力で取り組んでくれ。犯人逮捕につなげるぞ』
一同 『はい!』
花井 『誘拐事件だけでなく、強盗、詐欺事件でも再度、被害者の交友関係を洗い出そう』
私たちはまた各コンビに分かれて行動を開始した。
リストと格闘しながらも、ときおり息抜きのため廊下をぼんやりと歩く。
でも、頭の中は仕事のことでいっぱい。
(きっと交友関係に何か隠されてるはず。被害者の女性が気付いていないことや、すでに忘れてしまってることかもしれない)
せっかく休憩していたのに、
私の足はまたすぐに2課へと向かって行った。
時間がどんどん流れていき、もう夕方に。
みんなも捜査から戻ってきて、デスクに向かい始めた。
浅野 『花井さん。強盗事件の犯人が被害者と交友関係があったとは考えにくいけど、念のため探ってみる』
八千草 『覆面していたし、案外顔見知りってこともありますしね』
花井 『念には念を、だ。よろしく頼む。京橋、俺たちの詐欺事件に関しても同様だ。1件ずつ見ていこう』
京橋 『任せてください。不審な点はすべて私が浮かび上がらせます』
桐沢 『おーい、差し入れだ。みんな適当に食ってくれ』
桐沢さんが捜査で忙しいみんなを気遣って、軽食を買ってきてくれた。
お互いに協力し合い、一丸となって事件に立ち向かう。
私はつくづく、2課のみんなと仕事ができて幸せだなって思った。