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強盗、誘拐、詐欺事件は同一犯によるものだった。
カフェで人質を取った犯人を無事に逮捕したものの、私はふと不安に陥る。
(事件は解決したけど、一沙、少しでも私を認めてくれるかな。私、一歩ずつでも一沙にふさわしい人になれてるのかな)
自信を持ちたい、大丈夫だって思いたい。
警官と話す一沙の横顔を見つめるけれど、不安はなくならなかった。
2課に戻ると、みんなが一瞬目を丸くした。
八千草 『あずちゃん、髪の毛どうしたの?』
あず 『自分で切っちゃった』
天王寺 『なんでや?なにがあったんや?』
あず 『犯人が女性の髪を切れば女性が傷つくって勘違いしてたから、そんなことじゃ傷つかないってことを証明したんです』
天王寺 『それだけ?』
あず 『はい』
浅野 『向こう見ず』
あず 『・・・・・・』
京橋 『短いのもよくお似合いです。前より色っぽいかもしれませんね』
天王寺 『さすが克之。見てるとこがちゃうわ』
カチャ
一沙が取調室から帰ってきた。
桐沢 『取調べ、ご苦労さん』
花井 『強盗事件、誘拐事件、結婚詐欺事件、すべて自供しました』
桐沢 『よくこれらの事件が繋がってるとわかったな』
花井 『櫻井が変な電話番号に気付いたおかげです』
桐沢 『櫻井、刑事としての勘が冴えてきたんだな?』
あず 『ようやく、ですけど』
刑事として少しずつ認められてきたような気がして、うれしいような恥ずかしいような。
(一人前の刑事になれたら、一沙にふさわしい女性に・・・・)
ふと考えては、そこで止める。
考えてもすぐに答えなんて出ない。
焦れば焦るほど、不安が募りそうだった。
私は理性で感情に蓋をすると、ぼんやりと窓から景色を眺めた。
天王寺 『なに見とるんや』
あず 『遠くの高層ビルです。今日は天気もいいし、屋上にいたら気持ちよさそうだなって』
天王寺 『そりゃあ、気持ちええやろうけど、皇居周辺じゃだめなんか?日当たりええやろ』
あず 『もちろんいいですけど、なんか高い所に惹かれるんですよね』
天王寺 『まったくわからん。どうして女って高い所が好きなんや?』
あず 『遠くを見下ろせるし、なによりもロマンチックじゃないですか』
天王寺 『ロマンチック?夜ならわかるけど、今、昼間やで?』
あず 『昼も夜も関係ないですよ。とにかく高い所はロマンチックな場所なんです』
天王寺 『意味がわからん。でもそれやから通天閣も東京タワーもカップルばかりなんか・・・・』
京橋 『天王寺さん、どなたと行かれたんですか?』
天王寺 『あ?』
浅野 『"女って高い所が好き"って言い切った』
八千草 『つまり女の人ってことですよね、豊さん』
あず 『デートしたんですねー!やっぱり高い所行ってるんじゃないですか!』
京橋 『天王寺さんはこう見えてロマンチストなんですね』
天王寺 『ちゃ、ちゃう!黙れ、うるさい!』
顔がみるみる赤くなる天王寺さんをみんなでからかう。
一沙は桐沢さんのデスク前から、そんな私たちを静かに微笑んで見つめていた。
長かった1日が終わろうとしていた。
事件が解決したこともあって、みんな早くに帰宅。
私は1人残って今日の報告書をまとめていた
とそのとき、メールが入った。
(一沙からだ・・・・)
件名:今すぐ
屋上に来い。一沙
(屋上?だって一沙、もう帰ったはずじゃ・・・・)
私は首をかしげながら2課を後にした。
屋上に出ると誰もいなかった。
(一沙、まだ来てないのかな)
仕方なく夜景を見ていると、遠くから爆音が。
ババババババ・・・・
(何の音だろう?)
ババババババ・・・・
爆音は次第に大きくなる。
とそこで、またメールが入った。
件名:Re:今すぐ
上を見ろ。一沙
(上?それって空?)
きょとんとしながら顔を上げると、なんと上空でヘリコプターが旋回していた。
あず 『えっ?上を見ろって、これのこと?』
ヘリコプターは徐々に降りてきて、爆音と強風を撒き散らして屋上に着地した。
あず 『????』
(意味がわからないんだけど)
立ち尽くしている私の目の前で、ヘリコプターのドアが開いた。
あず 『か、一沙!』
花井 『これがいいんだろ?』
あず 『えっ?』
花井 『迎えに来た。出掛けるぞ』
あず 『ええっ??』
花井 『いいから乗れ!』
あず 『う、うん』
一沙が差し伸べてくれた手を握ると、私はそのままヘリコプターに乗せられた。
ヘリコプターが再び上空を舞い始めた。
警視庁も、周辺の景色もどんどん小さくなっていく。
街の明かりがキラキラ輝いて、宝石を散りばめたかのよう。
あず 『ねえ、一沙、これって一体・・・・』
ヘリコプターの音で声がかき消されないよう、一沙は私の耳元に口を近づけた。
花井 『高い所が好きなんだろ?さっき、みんなと話してたのを聞いた』
私の顔をチラッと覗きこみ、ふわりと微笑む一沙。
(こんなやさしい顔、久しぶりに見た・・・・)
私はそんな一沙に同じように微笑み返した。
あず 『だからって、ヘリコプターってびっくりさせすぎだよ』
花井 『いいじゃないか。ここなら他のカップルもいない。2人きりだ』
一沙の手が髪に伸びて、そっと撫でてくれる。
いとおしそうに、ゆっくりと。
花井 『外、見てみろ』
一沙に言われたとおり窓から景色を見下ろすと、東京タワーの上を飛んでいた。
あず 『東京タワーが眼下にあるなんて・・・・』
夜景の美しさに感動して窓に顔を近づけると、耳元で一沙が囁いた。
花井 『キレイだな』
一沙は私の肩越しに窓の外を見つめる。
時おり頬が触れ合うたび、私の胸がトクンと音を立てた。