:*'゜::*'゜::*'゜::*'゜::*'゜::*'゜::*'゜::*'::*'゜::*'゜::*'゜::*'゜::*'゜::*'゜::*'゜::*'
ヘリコプターが着地したのはどこかの小さな教会だった。
花井 『中に入ろう』
一沙は私の手をすっと取り、教会のドアを開けた。
教会には誰もいなかった。
静まり返る神聖な空気の中、私たちは一歩一歩、祭壇へと歩みを進める。
花井 『あず、ごめんな』
あず 『え・・・・?』
花井 『いろいろ傷つけた』
あず 『・・・・そんなことないよ』
一沙を気遣って言うけど、きっと一沙には見破られているんだと思う。
花井 『ちゃんと話すよ。俺の思ってること。話さないとお前は不安のままだと思うから』
あず 『一沙・・・・』
ずっと知りたかった一沙の気持ち。
でもいざ聞くときが来ると、胸がざわめく。
もし、一緒にいられないって言われたら・・・・。
私たちは祭壇の前で立ち止まると、見つめ合った。
花井 『お前もわかってる通り、俺はキャリアを捨てるわけにはいかない』
あず 『・・・・・・』
花井 『どんなに勉強しても、手柄を立てても、結局は結婚相手の家柄がものを言うということもわかってる』
あず 『一沙・・・・』
花井 『でもそれはこれまでの人たちの話だ。俺はそんなこと、くつがえそうと思ってる』
あず 『え・・・・』
一沙は私をまっすぐに見つめた。
花井 『俺は自分の力でキャリアを築く。他人とは違うやり方で築いてみせる。俺は俺だ。慣習には従わない』
あず 『一沙・・・・』
花井 『そのためにはお前が必要だ。お前のフォローがどうしても必要なんだ』
想像していなかった一沙の言葉。
うれしいはずなのに、なんでだろう、うまく飲み込めない。
あず 『フォローって言われても、私・・・・』
花井 『今日のお前を見て、確信した。事件を解決させるために長かった髪を、何の抵抗もなくばっさり切った。いさぎよくて、強いあずの一面を見たら、俺も俺のやり方で行こうって思えた』
あず 『一沙・・・・』
花井 『上層部からの重圧にときどき折れそうになる。でもお前が側にいてくれたら、乗り越えられる。大丈夫だって思える』
あず 『一緒にいてもいいの・・・・?』
花井 『あぁ。いてほしい』
もちろん一緒にいたい。
そう言ってほしかったし。
でも、側にいるって、いつまで・・・・?
(どうしても聞いておきたい。あのこと・・・・)
あず 『聞きたいことがあるんだけど・・・・』
花井 『なんだ?』
私は大きく息を吐いて気持ちを落ち着けると、一沙を見つめた。
あず 『一沙、お見合いの席で、結婚に興味ないって・・・・』
花井 『・・・・あれか・・・・あれは』
一沙はふっと寂しそうに私から目をそらした。
花井 『ある意味、本当だ』
あず 『え・・・・』
花井 『でも勘違いしないでほしい。あの席を断るための手段だったのもあるし、今はまだ考えられないのも真実だ』
あず 『・・・・・・』
花井 『どうしても今は目の前のことでいっぱいいっぱいなんだ。俺も案外、器用じゃないみたいだ。でも・・・・』
一沙は私をまっすぐに見つめると、そっと手を伸ばし、私の頬を撫でた。
花井 『あずとの将来のことは考えてる』
あず 『え・・・・』
花井 『今すぐ結婚はできないが、ちゃんと考えてる』
あず 『一沙・・・・』
花井 『俺には不釣合いだから頑張るってお前が言ったときは正直、寂しかった。俺は不釣合いとか、ふさわしくないとか考えたことがなかったから』
あず 『・・・・・・』
花井 『不安だったはずなのに、そんな姿を見せずに一生懸命に頑張るお前を見ていたら、今まで以上に絶対に離したくないって思った。もっと早くにこうして言葉で伝えておくべきだった。長い時間、不安にさせて悪かった』
一気に緊張がとけて、こらえていたものがあふれ出しそうになる。
一沙はそんな私にやさしく微笑みかけた。
花井 『あず、目をつぶってくれないか』
一沙は頬をさすっていた手でまぶたを閉じさせると、私の左手をとった。
(え・・・・?)
何かが薬指に触れ、吸い込まれるようにすっと指におさまっていく。
この感触って・・・・
花井 『目、開けてごらん』
ゆっくりと目を開けると、左手にはキラリと輝く指輪がはめられていた。
あず 『か、一沙、これって・・・・』
花井 『今の俺の気持ちだ。将来ずっと歩んでいくのは、あずだけだと思ってる』
あず 『一沙・・・・ありがとう、すごくうれしいよ』
こらえていたものが、やっぱりあふれてしまった。
一沙は何も言わず親指でそっとぬぐうと、顔を近づけてきて、そのまま唇を重ねた。
あたたかい腕の中に抱きしめられながら、甘いキスを交わす。
これまでのどんなキスよりも、一沙の思いを感じる。
(これからも頑張ろう。一沙にふさわしい人だって、誰からも思ってもらえるように)
私は自分にそう誓うと、そっと目を閉じた。