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(・・・・ここ、どこ?)
意識が戻った私はカーテンで閉ざされた部屋にいた。
周りを見渡しても誰もいないし、音もしない。
体を動かそうとすると、手も足も縛られていた。
(そんな・・・・)
カチャ
ドアが開く音がして、体が震えた。
入ってきたのは黒いパーカーを着てフードを被り、マスクをした人物。
手にはナイフを持ち、刀の先を私に向けている。
明らかにこれまでの一連の事件の犯人だった。
(怖い・・・・どうしよう・・・・花井さん・・・・)
犯人は何も言わず私の前に立ち、私を見下ろした。
あず 『・・・・一体、あなたは誰なの?』
犯人は黙ったまま私を見つめながら、フードを取り、マスクを外した。
(うそ・・・・)
私は息が止まるかと思った。
ショックで言葉が出なかった。
なぜなら、目の前に立っている人物、それはパン屋の店員さんだったから・・・・。
女店員 『驚いた?』
私は頭が真っ白で何も答えられなかった。
女店員 『驚いてるはずよね。犯人があなたと花井さんがよく訪れていた店の店員だったんだから』
店での穏やかな笑顔からは想像もつかないほどの暗い表情。
目には敵意がこもっていた。
あず 『・・・・ど、どうしてこんなことを』
女店員 『理由?それは花井さんに聞くことね』
あず 『花井さんと関係があるって言うの?』
女店員 『すべてあの人のせい。花井さんが私たちの人生を狂わせたのよ』
あず 『私たち・・・・?』
女店員 『私と彼よ』
(あ・・・・。この店員と、花井さんが逮捕した鉄砲玉と思われる男のことだ・・・・)
女店員 『彼はあの男のせいで刑務所にぶち込まれたのよ』
あず 『そ、それは花井さんのせいじゃ・・・・』
女店員は私の言葉を遮った。
女店員 『私は花井さんが憎くてたまらない。恨んでるの。だから復習することに決めたの』
あず 『復習だなんて、そんな・・・・。それも罪のない人を襲うなんて』
女店員 『私の彼だって同じなのよ。何もしていないのよ!』
あず 『だからそれは・・・・』
女店員は私の話など聞く気もないかのように、言葉を並べる。
女店員 『無実なのに刑務所に入れられてるの!それがどれほど苦しいことか、花井さんに思い知らせてやりたかっただけよ』
あず 『花井さんを傷つけたくって、身の回りの人たちをわざと狙ったのね』
女店員 『そう。誰と仲が良いか、誰を狙えばあの人が傷つくのか徹底的に調べたわ』
あず 『・・・・・・』
女店員 『後を付けて、行動パターンを見つけて、狙ったの』
あず 『じゃ、どうして私を狙ったの?』
女店員 『最初は花井さんのいる2課全員を狙っていたわ。でも花井さんがあなたを連れてパンを買いに来てから、考えが変わった』
あず 『どういうこと?』
女店員 『最初は明らかに同僚扱いされていたあなたが』
女店員は私を静かに見据えた。
女店員 『次第に息が合う仲間に変化していった。花井さんにとってあなたが大事な人になりつつあると思ったのよ』
あず 『そ、そんなのありえない・・・・』
女店員 『ありえない?あなたが気付いていないだけよ。店の外で仲良さそうにフランスパンを食べていたじゃない』
あず 『あ・・・・』
(思い出した。あの時、花井さんが熱々のパンをちぎって私にくれた時だ・・・・)
女店員 『私、ずっと店内から見ていたのよ。まるで恋人のように楽しそうだった。だから、あなたを標的に加えたの。あなたを狙えば、花井さんが傷つくと思って』
私は女店員の身勝手さに対して、怒りが込み上げてきた。
あず 『あなた、大きな勘違いをしてる』
女店員 『バカ言わないで。何を勘違いしてるって言うのよ』
あず 『花井さんのことを勘違いしている』
女店員 『私の彼に手錠をかけた男のどこに勘違いしてるって言うの!』
あず 『花井さんは・・・・』
私は女店員をまっすぐに見つめた。
あず 『あなたの彼を犯人だなんて思ってない』
女店員 『逮捕したくせに何言ってるのよ!』
あず 『警察トップは彼が犯人と確定していたわ。でも花井さんは今でもそれを疑ってる』
女店員 『・・・・なにそれ』
あず 『あなたの彼は鉄砲玉として、他の誰かをかばって自首してきた』
女店員 『え・・・・』
あず 『だから彼は真犯人じゃない。花井さんはそれを知ってるのよ。彼が真犯人じゃない・・・・。あなたは知らないでしょ。花井さんが時々、刑務所にいる彼に話を聞きに行ってることを』
女店員 『う、うそよ。彼はそんなこと言ってなかった』
あず 『花井さんは彼にも自分が会いに行ってることを口止めしているの』
女店員 『口止め?』
あず 『そうよ。あなたを傷つけたくないからって』
女店員 『私を傷つけたくない?そんなの、うそ。さんざん傷つけたくせに!』
あず 『あなたが本当のことを知れば、今以上に辛い思いをする。だからずっと黙って1人で真犯人を追ってるの』
女店員 『・・・・・・』
あず 『花井さんはまだ諦めてないの。あなたの彼を救うために』
女店員 『・・・・・・』
あず 『パン屋さんによく通っていたのも、パンが美味しかっただけでなく、あなたを気遣ってのことなの』
女店員 『・・・・私を・・・・気遣って』
あず 『花井さんはそれを誰にも言わなかったし、あからさまに優しさをアピールするような人じゃない。だから、あなたには分からなかっただろうけれど・・・・』
女店員はその場に崩れるように両膝をついた。
女店員 『そ、そうだったの・・・・。知らなかった・・・・。何てことを・・・・私、何てことを・・・・』
手からナイフが落ちると、両手で顔を覆い、肩を震わせた。
とそのとき・・・・
バンッ
乱暴にドアが開いた。
あず 『え・・・・』