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メガネ男子、克之さんです





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バレンタイン前日。

京橋さんが何やら大荷物を抱えて登庁した。


あず 『・・・・・』


京橋 『睨まないで下さい。私が催促したわけではありません』


どさりとデスクにそれを降ろすと、京橋さんは眉間を指で挟むようにしてため息をついた。


あず 『はいはい』


まだ前日なのに、山のようなチョコ。

睨みたくもなる。


花井 『これだけもらっておいて、明日もまだ来るのか』


桐沢 『毎年毎年よくそんなに貰って来るなぁ』


天王寺 『ホンマや。なんやねん、メガネのくせに』


(もっと言って、天王寺さん!)


京橋 『メガネを侮ってはいけません。人は二面性というものに惹かれる生き物なのです』


天王寺 『はぁ?』


京橋 『私は普段メガネをかけていますが、24時間かけているわけではありません』


浅野 『当たり前』


八千草 『ハハ。一瞬、曇ったメガネで湯船に浸かる克之さん想像しちゃった』


あず 『それウケる!』


京橋さんは私たちを一瞥してから、先を続けた。


京橋 『限られたシーンでのみ、私はメガネをはずします。そしてメガネをかけている時と外している時では、当然印象が異なるはずです。つまり、メガネの下の素顔は、女性の下着と同等の価値があるのです』


天王寺 『・・・・は?』


花井 『なんだそれ』


あず 『・・・・今、ありえないくらい話が飛んだ気が・・・・』


八千草 『うんうん』


桐沢 『京橋お前、頭大丈夫か?』


京橋 『至って正常です。みなさん交通課のバービー巡査をご存じでしょう』


あず 『ああ、あの超美人で八頭身の・・・・バービーじゃなくて中村さんでしょ』


京橋 『あのバービー巡査が、もしブラウスの上からブラジャーをつけていたらいかがですか』


一同 『・・・・・』


京橋 『そそられますか』


一同 『・・・・・』


京橋 『おそらく、その下着に対する興味は失われるはずです』


八千草 『・・・・確かに・・・・』


天王寺 『丸出しにされたら台無しやん』


京橋 『つまりはそういうわけなのですよ』


桐沢 『さっぱり分からないんだが』


花井 『俺は言わんとしているところが分かってきました・・・・』


京橋 『簡単に言えば、ミステリアスな部分が大事ということです。普段明らかになっていないものだから興味がわく。服の下にあるからこそ暴きたくなる。分かりますか』


あず 『京橋さんが相変わらず変態ってことが分かりました』


八千草 『アハハ!なにそのまとめ!』


ポンと瑛希くんが二の腕を叩く。


花井 『・・・・よしよし、なかなかハイセンスだ』


花井さんは私の肩に手を置いて、ウンウンと頷いた。


(え・・・・絶対そんなことないと思うけど・・・・)


あず 『えー・・・・』


天王寺 『櫻井、こんなドエロの言うことなんて聞かんでいい』



京橋 『櫻井さん、あなたは私の話の何を聞いていたのですか。これはれっきとした哲学なのですが』


あず 『・・・・はぁ』


花井 『そうだ。お前は、こんなドSで変態なメガネなんか見なくていい』


あず 『え・・・・』


(そんなドSで変態なメガネと付き合ってますけど・・・・)


八千草 『あー、みんなバレンタイン前だからって~』


あず 『・・・・・』


天王寺 『そ、そんなんやない!交通課のバービーがなんや!そんなんどうでもいい。それを言うなら、櫻井は二課のビーバーや!』


八千草 『えーカピバラですよ』


あず 『・・・・・』


みんな、なぜか私を持ち上げようとしてくれているっぽい。

方向性が間違っているけれど。


あず 『みんな、どんなチョコが欲しいんですか?』


天王寺 『いやチョコ自体はどうでもいいやろ』


花井 『問題は本命か義理かなんだよ』


八千草 『そうですか?僕はウィスキーボンボンとかがいいなぁ』


浅野 『俺はテリーズのオレンジチョコレート』


桐沢 『俺は食えればなんでもいいぞ』


京橋 『・・・・・・みなさん盛り上がっていらっしゃいますが・・・・櫻井さんは、どなたにチョコを贈るのですか?』


あず 『そりゃあ・・・・京橋さんだけにあげるに決まってるじゃないですかぁ』


語尾に"★"がつきそうな声で答える。


京橋 『そうですか。それではありがたくいただきましょう』


京橋さんは眉ひとつ動かさない。


八千草 『ええっ・・・・!!』


天王寺 『な、なんやって・・・・!?』


あず 『って、本気にしないで下さいよ。んなわけないでしょ、みんなにあげますよ』


京橋 『なぜですか?一人に絞って下さい』


あず 『えっなんでですか!』


京橋 『その方が、スリルがあるでしょう。みなさんも、勝負が面白くなっていいのではないですか?』


あず 『勝負?』


京橋 『男というものは、無言のうちにそのチョコの数を競い合うものです。さあ、誰にあげるのですか』


一同 『・・・・・』


視線が突き刺さる。


あず 『な、なんでそんなの選ばなくちゃいけないんですか!誰にもあげませんっ!』












(あ~あ、勢いであんなこと言っちゃったけど、どうしよう)


デパートのバレンタインコーナーをブラつく。

ふと、鮮やかなサクランボの写真が目に入る。

"チェリーチョコレート"


(そういえば・・・・サクランボって疲れ目に効くって昨日テレビで言ってたっけ)


京橋さんが、最近眉間とかこめかみを指で押さえているのを最近よく見る気がする。


(でも・・・・野菜どころか果物も好きじゃないしな~・・・・京橋さん・・・・いいや、これにしちゃおう。眼精疲労対策の糖衣錠よりずっとマシだよね!)


そういう問題じゃないような気もするけど、深く考えないことにした。