ボルテージさんの恋愛ゲーム【特別捜査★密着24時】
愛する桐沢しゃんの完全レポです!
ネタバレありです!
麻薬密売組織の大口取引が行われるという情報を得た私たちは、
今まさしくその現場で息を潜めていた。
一課、二課合同の捜査。
事前に取り決めた時間ちょうどに、私たちは一斉に廃墟になだれ込んだ。
桐沢 『そこまでだ!!』
男 『な、なんだお前らは!?』
桐沢 『動くな!』
あず 『警察です!』
その場にいた男たちは5人。
四方から花井さん、天王寺さんたちが一気に取り囲んで、銃口を向ける。
桐沢 『手を頭の後ろに組め』
男たちは、抵抗するか屈服するか決めかねているような、ぎこちない動きで・・・・
それでもおとなしく手を頭の後ろに組んだ。
桐沢 『お前ら、ワッパかけろ』
花井京橋 『はい!』
私たちが銃を構える中、2人が5人を確保。
後ろ手に手錠をかけていく。
桐沢 『・・・・・堺警視監、ご無事でしたか』
ガムテープで口を塞がれ、椅子に縛り付けられていた堺警視監。
堺警視監 『い・・・・・・っ』
桐沢 『これは失礼。力の加減が解らなかったもので』
堺警視監 『・・・・ど、どうでもいいから、早くその連中をぶち込め!』
堺警視監は、まるで道端のゴミを見るような目で男たちを一瞥すると、
忌々しげに言い放った。
桐沢 『・・・・あなたもじきに彼らと同じところへ行く運命ですよ』
堺警視監 『なんだと!?』
桐沢 『逮捕状が出るのも時間の問題でしょうね』
桐沢さんは、堺警視監の縄をほどき始めた。
天王寺 『ボス!その縄ほどいたら・・・・』
花井 『逃亡の恐れが・・・・・』
桐沢 『いや、そこまで落ちてはいないだろう・・・・・ですよね、堺警視監』
堺警視監 『な・・・・・・』
桐沢 『桜刃組の連中が吐きました。証拠も揃っています。まさか見に覚えがないとは言えないでしょう』
堺警視監 『・・・ああ、そうだ。捜査情報を桜刃組に流した。捜査を誘導もした。ちまちま件数を稼いで、上り詰めるためにな!・・・・・これで満足か!』
解放され、桐沢さんに対峙すると、堺警視監は自棄気味にそう吐き捨てた。
桐沢 『ええ』
堺警視監 『くそっ・・・・お前さえ余計なことをしなければ・・・・・!!』
桐沢 『ご自分さえ、汚いことをしなければ、とは思われないんですか』
桐沢さんは、恐ろしいほどに静かな口調だった。
堺警視監 『・・・・地位と名誉を求めて何が悪い?』
桐沢 『地位も名誉も、求めて悪いとは思いませんよ。あなたのように、罪を犯さなければ』
堺警視監 『正義だ何だと綺麗事ばかり言っていても上には行けん!桐沢、お前の父親がいい例だろ!』
桐沢 『・・・・・・・』
あず 『・・・・・・・!』
桐沢さんを見上げると、桐沢さんは落ち着いた目で堺警視監を見下ろしていた。
他のみんなも、固唾を飲んで二人のやりとりを見守っている。
堺警視監 『お前、あの広島県警の桐沢警視の息子だそうだな。いや、元警視か』
桐沢 『ええ。ご存知でしたか』
堺警視監 『ああ。お前のことは調べさせてもらったからな。お前の父親は、清く正しかった。くだらない理想を掲げて下の者からも慕われた。ご立派なことだな』
堺警視監は小馬鹿にするように笑った。
堺警視監 『かたや私は、暴力団と組んで汚いことをやりながら上手く立ち回った。その結果はどうだ?』
ピリッと緊張感が高まった。
二課の誰もが、今にもあふれそうな怒りを堪えた目で、堺警視監を睨んでいる。
そんな中、桐沢さんだけが1人冷静な瞳をしていた。
堺警視監 『お前の父親は県警からお払い箱、私は警視庁の刑事部長にまで上り詰めた!』
桐沢 『・・・・そうですね、堺警視監』
堺警視監 『だったら正しくあることに何の意味がある!?正義など、泥にまみれてまでも上を目指す度胸のない小者の言い訳にすぎん!』
天王寺 『・・・・・なんやと!?』
堺警視監 『お前らなど所詮ただの負け犬だ。そこにいるはみだし二課の連中も、桐沢、お前も、お前の父親もな!』
天王寺 『・・・・お前っ!』
桐沢 『っ!!』
天王寺さんが、我慢の限界を超えたとばかりに、拳を握りしめて前に出る。
と、桐沢さんが天王寺さんを押しのけるように、その前に立ったかと思うと・・・・・・
思いっきり、堺警視監を殴りつけた。
一同 『!?』
堺警視監は弧を描くようにバッタリと倒れると、それっきり伸びてしまった。
桐沢 『・・・・・ああ、さっぱりした!』
桐沢さんが笑顔で振り返る。
桐沢 『しかし、よくしゃべる奴だな』
天王寺 『ボス・・・・』
桐沢 『はは。上司でもある被疑者を殴りつけちまった』
花井 『笑ってる場合ですか?』
八千草 『上にばれたら、謹慎になりますよ・・・・?』
桐沢 『ハハ。・・・・・ま、ハクがつくってもんだろ!』
京橋 『ハクならもう充分ついてると思いますが』
桐沢 『細かいこと気にすんな』
花井 『けして細かくはないと思いますが・・・・』
浅野 『完全に気を失ってる』
床にだらしなく延びた堺警視監を見下ろす。
天王寺 『・・・・ボス』
天王寺さんが浮かない顔で桐沢さんに歩み寄った。
桐沢 『ん、どうした?』
天王寺 『・・・・俺が、堺警視監を殴ろうとしたから・・・・・』
桐沢 『何の話だ?』
天王寺 『・・・・すいません』
頭を下げる天王寺さん。
桐沢さんはとぼけるように肩をすくめた。
桐沢 『・・・・ちょっとカッコつけてみただけだよ』
冗談めかして笑う。
(そっか・・・・桐沢さんは天王寺さんを庇うために・・・・・)
被疑者を殴れば、謹慎処分になると分かってたから。
だから代わりに殴って・・・・代わりに謹慎処分を被ろうとした。
(・・・・ほんと・・・・・カッコつけすぎだよ・・・・)
私は、なんだかよく分からないけれど泣きたいような思いで桐沢さんを見つめた。
その時・・・・・・
男 『・・・う、動くな』
突然、物陰から人影が飛び出してきた。
一同 『・・・・・・!?』
振り返ると、銃を手にした男が立っている。
男 『そ、その5人を解放しろ』
慣れないのか、銃を構えたその手は、傍目に見ても分かるくらいガタガタと震えている。
桐沢 『・・・・・落ち着け』
男 『うっ、うるさい!お、お前らの銃を全部こっちによこせ!』
桐沢 『・・・・・・・・』
男 『は、早くしろっ!』
桐沢 『・・・・・わかった』
桐沢さんは自分の銃を床に置いた。
男 『全員だ、全員の銃をよこせ』
桐沢 『・・・・おい、お前らも、言う通りにしろ』
一同 『・・・・・・・・・』
全員、一瞬足りとも男の銃口から視線を外さないまま、用心深く銃を床に置いた。
男 『な、仲間の手錠を、は、外せ!』
桐沢 『・・・・落ち着け』
桐沢さんがゆっくりと一歩前に出る。
桐沢 『・・・・・独りじゃムリだ』
男 『う、うるさいっ!』
桐沢 『銃を下ろせ』
また一歩、桐沢さんは男に近づいた。
男は相当取り乱している。
男 『い、いやだ、こっちに来るな・・・・・』
桐沢 『発砲すれば、それだけ罪が重く・・・・・・』
バアンッ!!!!!
破裂音が、空気を切り裂いた。
あず 『っ!?』
花・天・京・浅・八 『!?』
一瞬、なにが起こったのか理解できない。
男 『・・・・・う、うわぁっ』
熱いものを触ったかのようなしぐさで、男が銃を取り落す。
床に落ちた銃。
その銃口から、煙が細く立ち上がっていた。
(え・・・・・・?)
桐沢さんの背中が傾く。
八千草 『ボス!!』
あず 『桐沢さんっ!?』
桐沢さんの体が、糸の切れた人形のように崩れ落ちる。
それはまるでスローモーションみたいに見えた。
京橋浅野 『ボス!!』
一斉に桐沢さんに駆け寄る。