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床に崩れた桐沢さんは、ピクリとも動かない。

(う、うそ・・・・)

あず  『桐沢さん・・・・!?』

息をしているかどうかも、解らない。

『俺は....お前が好きだよ』
そう言った桐沢さんの顔が浮かぶ。

あず  『・・・・桐沢さん・・・・っ!!』

無我夢中で駆け寄って、頭を抱き上げる。
・・・・あったかい。

あず  『う、うそでしょ・・・・』

誰か、嘘って言って・・・・!

あず  『 ・・・・や、約束したじゃないですか?みんな無事に帰るって約束したじゃありませんか!....桐沢さん!』

「約束する」
桐沢さんは力強くそう言って頷いた。

あず  『・・・・ねぇ・・・・目を開けて下さい!』

涙が零れて、桐沢さんの頬を濡らした。

あず  『 私、まだ"好き"って言ってない!!』

自分は好きだって言っておいて、私には言わせてくれなかった桐沢さん。

あず  『自分ばっかりズルい!!』

言うだけ言って、手の届かないところに行ってしまうなんて・・・・
そんなの、ズルい。

あず  『お願いだから....死なないで・・・・!』

ほとんど悲鳴のようにそう言って、思い切り抱き締める。

神様でも仏様でも、悪魔でもいい....誰でもいいからなんとかして!
祈るような思いで、桐沢さんを抱き締める。

その時・・・・


一同  『お、おおーっ!!』



背後から感嘆の声が上がる。

しかも、能天気な響きで。


あず  『・・・・・え?』


涙も拭かずに振り返ると、二課のみんなが驚いた顔で私を見ていた。


あず  『え?』


(た、確かに大胆なことを、みんなの前で言っちゃったけど・・・桐沢さんがこんな状態の時に・・・)


桐沢さんに視線を戻して、はた、と止まる。


(・・・・ん?)


桐沢さんの、頬が赤い?

口元も、ちょっと笑いとこらえるように震えている?


あず  『・・・・え?』


もう一度二課のみんなを振り返ると、全員が一斉に胸元を開く。


あず  『!?』


そして、防弾チョッキを指差して・・・・。


あず  『っ!!』


(ぼ、防弾チョッキ・・・・!)


防弾チョッキを着ていたことを思い出す。

もちろん、私も・・・・。


よくよく見ると、桐沢さんは、出血している様子はない。


(・・・・てことは!)


気付いた瞬間、顔が燃えるみたいに熱くなる。


あず  『ちょ・・・・・・・っ!!』


浅野  『どんまい』


あず  『・・・・・・・・・・・・・』


(は、恥ずかしすぎる・・・・!!)


穴があったら入りたい。

穴がないなら逃げ出したい。


あず  『・・・・て、ていうか、桐沢さん・・・・死んだふりしないで下さいっ!』


桐沢さんが気まずそうに目を開く。


桐沢  『いや・・・・結構な衝撃だったから、一瞬だけ意識が飛んで・・・・戻ったけど、起きるに起きられない状況だったっつーか・・・・なんつーか・・・・』


あず  『・・・・と、途中っていつから聞いてたんですか・・・・』


桐沢  『"約束したじゃないですかー"あたりからかな?』


あず  『最初からじゃありませんか!!』


桐沢  『そうか?』


あず  『ひどい、ずっと騙して聞いてたなんて・・・・』


桐沢  『騙した!?なんて人聞きの悪い・・・・』


あず  『人聞きの悪い!?まぎれもない事実でしょうが!』


桐沢  『違う、あれは単なる死んだふりだ』


あず  『つまり、死んだふりで騙してたんでしょ!』


桐沢  『・・・・そうとも言う』


あず  『そうとしか言いませんっ!!こっちは心臓が止まるかと思ったんですからね!』


桐沢  『俺の心臓が止まったかと思ったんだろ?』


あず  『・・・・ど、どっちもです!!』


桐沢さんと言い合っていると、背後からヒソヒソと話し声が聞こえた。



花井  『おい、誰かあのイチャイチャ止めろよ』


八千草  『無理です、誰にも止められません』


天王寺  『俺が邪魔したる・・・・』


京橋  『蹴られますよ』


浅野  『面白いから黙って見とこう』


あず  『い、イチャイチャってなんですか!怒ってるんです、私は!!』


天王寺  『あーあー、そうかいな。そらよかった』


あず  『・・・・・』


八千草  『あずちゃん、顔が怖い・・・・』

遠くから、パトカーと救急車の音が聞こえていた。


応援のパトカーが来て、ひとまず引き上げることに。









防弾チョッキ越しとはいえ撃たれた桐沢さんは、病院へ行くことになった。


桐沢  『堺警視監』


連行されていく堺警視監に、桐沢さんが声をかけた。


堺警視監  『・・・・なんだ。・・・・これで満足か?』


振り返って、ジロリと桐沢さんを睨む。


桐沢  『さっき、正しくあることに何の意味があるのかとおしゃっていましたね』


堺警視監  『それがどうした?』


桐沢  『我々がどうやってここを突き止めたと思われますか?』


堺警視監  『何の話だ』


桐沢  『あなたの家の近所のご婦人が、あなたが連れ去られるのを目撃して、情報をくれたんですよ

そこから割り出したんです』


堺警視監  『・・・・なんだって・・・・?』


桐沢  『そのご婦人は、ご主人が単身赴任の間、堺警視監にずいぶん助けられたと言っておられました。・・・・それも、心当たりがおありでしょう?』


堺警視監  『・・・・古川さんか・・・・』


桐沢  『そうです。堺さんが危ない目にあってるなら、助けてあげてほしいと、丁寧に頭をさげられました』


堺警視監  『・・・・』


桐沢  『あなたが正しいことをした結果です。意味がありませんか?』


堺警視監  『・・・・』


桐沢  『汚い事をして手に入れたものは、こうして崩れ去ります。ですが、古川さんは・・・・あなたの善意の行いを忘れないでしょうね』


堺警視監  『・・・・』


堺警視監の表情が、和らいだようなきがするのは・・・・

私のご都合主義すぎる勝手な見方だろうか。


(やっぱり・・・・桐沢さんはカッコイイな・・・・)


悪い人を逮捕して終わり・・・・じゃなくて。

その先に、、救いを見出せるように・・・・

たとえそれが憎い相手でも、正しい方向へ導く道しるべを差し出す。


(ちゃんと気づいてくれるといいな・・・・堺警視監)


堺警視監が、一課の刑事に挟まれるようにして廃墟を出て行く。

ドアをくぐる直前、


堺警視監  『・・・・桐沢』


後姿のまま、堺警視監が桐沢さんに呼びかけた。


桐沢  『はい』


堺警視監  『君の父親・・・桐沢警視には・・・・申し訳なかった』


桐沢  『・・・・』


桐沢さんは驚きに目を見開いた。


堺警視監  『それで済むとは思わないが・・・・』


桐沢  『・・・・父は内通者を恨んではいません。ただ、目が覚めればいいと・・・・そう言っていました』


堺警視監  『・・・・あの人らしいな。お人よしにも程がある』


桐沢  『しょうがありません、そういう人です』


堺警視監  『それじゃあ伝えてくれ・・・・お宅のドラ息子のおかげで目が覚めたと』


桐沢  『・・・・分かりました』


二人のやり取りに、胸がいっぱいになる。

今度こそ、堺警視監は去っていく。


私達はその背中が見えなくなるまで見送った。


(・・・・よかった・・・・!)


私情の一切を捨てて、自分の信念と正義を貫いた桐沢さん。

きっと、苦悩も葛藤もあったはず。

だけどそれは今、こうして報われた。


だから・・・・

桐沢さんの目に、光るものがあったような気がしたけれど・・・・

私は気付かないふりをしてあげることにした。







花井  「ええっ、肋骨が折れてる!?」


電話の向こうから、ええーっと驚く二課のみんなの声が聞こえる。


あず  『そうなんです。だから念のため何日か入院だそうで・・・・』


花井  「そうか。分かった。こっちのことは俺たちに任せて、お前はボスについてろ。今日はもう遅いから、直帰しろ」


あず  『わかりました。ありがとうございます。』


受話器を置いて、病室に戻る。

・・・・桐沢さんは、なんと肋骨を骨折していた。


いくら防弾チョッキを着ていても、至近距離から撃たれた衝撃が相当だったらしい。

本人は至って元気で、「なんか痛ぇなーと思ったんだよな」なんて言って笑っている。


あず  『・・・・桐沢さん』


桐沢  『おお。あいつら大丈夫そうか?』


あず  『こっちのことは任せとけって言ってました』


桐沢  『そりゃ頼もしいな』


そう笑った桐沢さんと、目が合う。


あず  『・・・・・・・・』


桐沢  『・・・・・・・・』


あず  『・・・・あ、あの・・・・さっきのことですけど』


桐沢  『おう?』


あず  『すす、すいません・・・・言わないつもり・・・・だったんですけど・・・・』


・・・・言ってしまった。


「私まだ好きって言ってない」

今になってまた恥ずかしさがこみ上げてくる。


桐沢  『いや・・・・ありがとな』


ぽん、と桐沢さんの手が優しく頭を叩く。


桐沢  『・・・・・・・・』


あず  『・・・・・・・・』


桐沢  『・・・・もう遅いから、帰って寝ろ』


(でも・・・・もう少しだけ一緒に居たいよ・・・・)


あず  『もう少し・・・・ここに居ちゃだめですか』


桐沢  『・・・・櫻井・・・・』


あず  『・・・・すいません・・・・ワガママですよね』


桐沢  『いや、気にするな。ただ・・・・少し・・・・考えたいことがあるんだ』


そうつぶやいて窓の外を見る桐沢さんは、ひどく真剣な瞳をしていた。


(考えたいことって・・・・・何?)


聞きたくて、だけど聞くのが怖い質問を、私はぐっと飲み込んだ。







せっかく勇気を出したのに~(。>0<。)

次回最終話ですっ!!

果たして2人は無事に付き合えるのでしょうか!!