別捜査★密着24時

番外編 湯けむり〇〇事件 桐沢しゃんレポです☆

本編前で、付き合う前の設定みたいですね(‐^▽^‐)





これからプレイ予定の人はバックしてくださいっ( ̄* ̄ )






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桐沢  『せっかくの旅行だ、楽しんで来いよ』


あず  『・・・・・ありがとうございます』


差し出された宿泊券を受け取る。

せっかく当たったのに、いまひとつ気分が盛り上がらない。


(あーあ・・・・・・桐沢さんと一緒に行きたかったな・・・・・・・・しょうがないけど・・・・・・)


桐沢さんは、弱いくせに何でもジャンケンで決めたがる。

なんでも「ジャンケンは世界で一番公平な手段」なんだそうだ。

世界一公平な手段で、常に負けている桐沢さんは、ある意味すごいのかもしれない。








桐沢  『お、櫻井。まだ残ってんのか』


あず  『あ、桐沢さん・・・・・・・お疲れ様です』


私はPCから顔を上げて、ドアから入って来た桐沢さんを見上げた。


桐沢  『珍しく平和なんだからとっとと帰れ。9時だぞ』


あず  『そこをなんとか!あともうちょっとなんです』


桐沢  『何時に終わるんだ?』


あず  『えーと・・・・・・・・・・・』


(・・・・・・・・・・・・・・)


桐沢  『よし。今日はもう切り上げろ。――そうだ、飲みにでも行くか』


あず  『え!』


(桐沢さんと飲み・・・・・・・・)


桐沢  『それか、帰れ』


あず  『飲みます!』


迷うべくもなかった。









そして私たちはモンステにやってきた。


マスター  『いらっしゃい』


桐沢  『俺はとりあえずビール。櫻井は?』


あず  『私もビールで』


とりあえずのビールを頼みながら、カウンター席に着く。


マスター  『いいなぁ、デートかー』


(で、デート!)


桐沢  『じょ、上司が部下飲みに連れてきてデートもクソもあるか!』


マスター  『あーはいはい。そういうことにしといてやるよ!』


桐沢  『いいから早くビールよこせ。仕事しろ仕事!』


マスター  『・・・・・・』


マスターは無言でニヤニヤと桐沢さんに一瞥をくれると、

白く凍ったビールジョッキを手に、ビールサーバへ向かった。


(考えてみれば、二人だけで飲みなんて初めてだもんね・・・・・)


二課のメンバーが出払ってる時や、捜査中、二人でランチなら何度もあった。

立ち食いそばとか、ファストフードとか、牛丼の告野屋とか。


マスター  『はいよ』


目の前にジョッキが置かれる。


桐沢  『乾杯』


あず  『・・・・乾杯』


なんとなく照れくさいような気分で、軽くジョッキをぶつけ合った。



桐沢  『――クゥ~、うまい!』


あず  『アハハ!桐沢さん、ビール飲んで唸るなんて、オヤジ臭いですよ』


桐沢  『・・・・・・』


あず  『っかー!効くぅ~』


桐沢  『いやお前の方がオヤジ臭いだろ、絶対』


あず  『アハハ。気のせいです、気のせい。桐沢さんのオヤジっぷりには負けますよ~』


桐沢  『いや、櫻井の方がオヤジだった。100人に聞いたら120人くらいそう答えるぞ』


あず  『いやいやいや』


マスター  『どっちもどっちだな』


私たちのくだらない言い合いを、マスターがぶった切る。

桐沢さんは脱力したように笑った。




桐沢  『――あ。そういや、温泉の日程決まったか?』


あず  『今の所、再来週の水曜から金曜にかけて予約取ってみるかって話になってます』


桐沢  『そうか。まー羽伸ばして来いよ』


あず  『・・・・桐沢さんも勝てばよかったのに』


桐沢  『・・・・櫻井・・・・』


少し意外そうに眉を上げると、桐沢さんはポンポンと優しく私の頭を叩いた。


桐沢  『・・・・お前、可愛いなぁ』


あず  『かっ・・・・・・・・!・・・・し、下っ端の分際で、課長を差し置いて行くなんて、都合悪いと思っただけです!どうしてジャンケンなんかにしちゃったんですか・・・・・桐沢さん、弱いのに』


桐沢  『弱いとか言うな』


あず  『え、もしかして弱くないつもりなんですかっ!?』


(あの腕前で・・・・!)


桐沢  『いいや、弱い!』


自信満々に言うから、思わず笑ってしまう。


あず  『ハハ。ですよね・・・・・』


桐沢  『だからジャンケンにしたんだよ』


あず  『え・・・・・』


(どういう意味・・・・・・?)


桐沢  『ビールもう一杯』


早々とジョッキを空にして、次を注文する桐沢さん。


あず  『あの・・・・・どういう意味ですか?』


桐沢  『ん?』


あず  『わざと負けたんですか?』


桐沢  『そりゃあお前・・・・・4人しか行けないのに、俺が行くわけないだろ』


当たり前みたいに笑った。


あず  『・・・・・・・・・』


桐沢  『大体、上司がいたら、伸ばせる羽も伸ばせないってもんだ』


(桐沢さん、最初から行くつもりはなかったんだ・・・・・私たちのために・・・・・・)


私は目が覚めたような思いで、改めて桐沢さんを見つめた。


あず  『・・・・・・』


ハイチェアに浅く腰かけて、長い脚を持て余し気味に流している。

背もたれに掛けると、肩肘をカウンターに着いた。


桐沢  『ギムレット』


二杯目もあっという間に空にして、次のお酒を頼む。

強い瞳を持った横顔が、淡い照明に映えた。


視線を落とすと、無造作に捲られたイタリアンカラーシャツの袖から、逞しい腕が伸びている。


(・・・・普段と同じ服装、なのに・・・・・・)


この匂い立つような色気は、一体何事なのか・・・・・。

私は熱に浮かされているような心地で、桐沢さんを眺めた。


桐沢  『・・・・・櫻井?』


筋の浮き出た大きい手が、私の座るハイチェアの背もたれを掴む。

桐沢さんは、指の背で優しく私の頬を撫でた。


(ひんやり・・・・・、――って、ええっ!?)


あず  『!!』


一瞬にして我に返る。


桐沢  『どうかしたのか・・・・?ボーっとして』


あず  『・・・・あ、い、いえ・・・・・・』


見惚れてました、なんて正直に言ったら、桐沢さんはどう思うだろう。


桐沢  『・・・・・・』


あず  『・・・・・・』


桐沢  『・・・・櫻井・・・・・』


桐沢さんがまっすぐに私を見つめている。


あず  『・・・・はい』


不意に胸が締め付けられる。

だけどそれはちっとも不快じゃなくて・・・・・・くすぐったくて、甘ったるい。

そんな痛み。


心が見透かされているような、居心地の悪い視線に晒されて、逃げ出したい気分。

なのに1ミリだって桐沢さんから目を逸らせない。


桐沢  『・・・・なんか、いつもと違うな』


あず  『え?』


桐沢  『なんか・・・・・』


(・・・・・・な、何・・・・・・?)


心臓が破裂しそうにドキドキしていた。

頬の上に留まったままの桐沢さんの指。

そこから全身に熱が広がっていく。


桐沢  『――いや、やっぱなんでもねえ』


パッと離れて、桐沢さんはお通しのポップコーンを口に放り込んだ。


あず  『は、はぁっ!?』


桐沢  『ま、忘れろ。サクッと!』


あず  『あのですね、言わないなら最初から言わない。言いかけたら最後まで言う!これ常識です』


桐沢  『正論だな。カミカゼ』


あず  『正論だと思うなら最後まで言ってください。ドライマティーニ!』


桐沢  『お、結構強いのいくんだな』


あず  『桐沢さんこそ』


桐沢さんはとぼけるように肩をすくめて、ギムレットの残りを喉に流し込んだ。


あず  『あ!それより話逸らそうったって・・・・・・・』


桐沢  『まー飲め。櫻井。な!』


あず  『まだ来てません』


桐沢  『早くしてくれマスター』


なんだかグダグダのまま、夜は更けて行った・・・・。










天王寺  『宿泊券無くしたやって!?』


二課内に天王寺さんの大声が響く。


あず  『・・・・・はい』


私はめいっぱいに体を縮こまらせながらうなだれた。


あず  『こんなことなら、浅野さんに宿泊券をあげちゃえばよかった・・・・みなさんせっかくのチケットなのに、申し訳ありません』


頭を下げる。


天王寺  『オイなんでそこで俺の名前が出ぇへんのや!功労者やぞ!』


花井  『どっかで落としたのか?』


あず  『はい、たぶん・・・・・・モンステかなと思って電話したけど見当たらないって言われました』


桐沢  『悪いな、俺がついていながら――』


あず  『違います!私が調子に乗って飲みすぎたから・・・』


京橋  『ということは、つまり―― ボスと櫻井さんは二人きりで飲みに行ったということですね?』


あず  『・・・・・・』


桐沢  『・・・・・・』


まさかそこを突っ込まれるとは。

思わず言葉に詰まって、顔を見合わせる。


浅野  『沈黙は肯定』


八千草  『アハハ。汝ら、生涯愛することを誓うか』


あず  『――え、瑛希くんっ!』


桐沢  『あいにく俺の実家は仏教だ』


あず  『・・・・そういう問題ですか、桐沢さん』


桐沢  『ハハ』










旅行当日。

二課はかつてない静かさだった。

何しろ天王寺さんと浅野さんと私の3人しかいない。


桐沢さんは、先々週から、時効の迫った未解決事件を捜査する特別チームのリーダーに大抜擢されて、ほとんど課にいない。


あず  『・・・・天王寺さん、この課にハンコ妖精なんかいませんよね』

天王寺  『あ?この課どころか、この世におれへんわ、そんなもん。何言うとんねん』


あず  『ですよねぇ・・・・』


私は決裁版とファイルの山をドカンと自分のデスクにおろした。


あず  『見てください、コレ・・・・』

全部、未決で積み上げられていた書類だ。

少なくとも、昨夜11時までは。


あず  『全部、桐沢さんのハンコなり、指示なりが書かれてます』


最近、桐沢さんが課にいないのに、仕事はしっかり回っている。


あず  『このところ、ずっとこうなんですよ』


天王寺  『マジかい』


浅野  『残業』


あず  『でも浅野さん、ポータルで調べたけど、残業記録残ってないんですよ。ていうか、桐沢さんの残業記録がほとんどないんです。おかしいでしょ!?』


天王寺  『あー・・・・ボスは滅多に残業つけへんからな』

あず  『へ?』


天王寺  『本人は「うっかり忘れた」とか何とか言うてるけど』


浅野  『嘘に決まってる』

あず  『嘘ですか・・・・』


天王寺  『時間外の予算は限られとる。課長にもなると、単価が高いやろ。俺らに残業代つけさすために、自分はつけへんのや』


あず  『・・・・・』


そのエピソードが、あまりにも桐沢さんらし過ぎて。

納得のような・・・・・申し訳ないような。



天王寺  『しかし徹夜レベルやぞ、この仕事量。体壊さんといて欲しいな』


浅野さんも頷く。


(人一倍働いてるのに・・・・誰より働いてないことになってるなんて・・・・)


やりきれない思いで、私は空っぽの桐沢さんの席を見つめた。




私は書類の束の最後に不要なものを省いたて呈覧物を付けると、その山を桐沢さんのデスクに積んだ。

その一番上に、気休めの滋養強壮ドリンクを置く。


(桐沢さん、遅いな・・・・)


時計を見上げると、深夜2時だった。


(これで少しでも負担が減るといいけど・・・・)

今日上がった起案・捜査報告書・支出負担行為票・支出命令票・旅行命令簿・・・・

予算関係は全部間違いのないように再計算して、出納課の提出期限に合わせて並べ替えた。


捜査報告書や捜査資料は、大まかに要点だけを書きだして目次とインデックスを付けた。

書類は、一応、優先度の高い順に並べたつもり。


(あとは――天王寺さん、ごめんなさい!!)


心の中で手を合わせながら、代決でもいけそうな、重要度の低い書類を天王寺さんのデスクに置く。


せめてもの缶コーヒーと、「今度ランチ奢ります」という誓約書を添えて。


(よし。帰ろう)


PCの電源を落として、バッグを手に取る。