ボルテージさんの恋愛ゲーム【特別捜査★密着24時】
愛する桐沢しゃんの完全レポです。
ネタばれありです!
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堺警視監の手口は暴かれた。
でも、過去の事件をいくら漁っても
指定暴力団との癒着の証拠は尻尾すら掴めない。
過去の事件がダメなら、新しく出る証拠をかすめ取ればいい。
それも、堺警視監があれこれ細工を掏る前に・・・・・。
京橋 『明日の夜に予定されている麻薬取引摘発は堺警視監が指揮するそうです』
桐沢 『そうだったな』
京橋 『ちょっとダメ元で調べてみたところ・・・・・・同日、同時刻に、大口取引の情報が』
桐沢 『本当か。よく掴んだ。で、どこでだ?』
京橋 『桜刃組の本部です』
天王寺 『本部やと!?』
花井 『大胆なことするな~』
八千草 『警察は別件の摘発だから、却って本部の方が目立たないと判断したんでしょうか』
浅野 『トウダイ・・・・・』
あず 『灯台下暗し?』
八千草 『まさにそうですね』
桐沢 『・・・・・・』
少し考え込んでいた桐沢さんが、立ち上がった。
花井 『ボス?』
桐沢 『野村に直談判してくる。大口取引の摘発は、秘密裏に進めるべきだ』
天王寺 『・・・・・まさか』
桐沢 『堺警視監の耳には、今回の捜査情報は一切入れない』
その場にいた全員が息を飲むのがわかった。
刑事部長でもある堺警視監に黙って摘発を行う。
それがどれだけ大きな、そしてどれだけ危険な判断か、誰もが解っていた。
でも、もう私たちにはそれしか、残された道はない・・・・・・。
3時ちょうど。
会議室のドアが開いて、桐沢さんが入ってくる。
桐沢 『全員そろってるな』
花井 『はい』
桐沢 『摘発のGOサインが出た』
天王寺 『いよいよですね』
京橋 『ようやく尻尾を掴めます』
みんなが勢い込んだその時、
桐沢さんの後ろから、一課の3人が現れた。
一同 『え!?』
天王寺 『ボス、まさかその3バカ・・・・いや、一課の3人も・・・・・』
桐沢 『ああ。会議に加わってもらう』
会議に、と桐沢さんは言った。
(摘発に、じゃなくて・・・・・?)
花井 『大丈夫なんですか?』
一課の3人 『なんだと!?』
桐沢 『大丈夫だ。責任は俺が取る』
一課の3人 『!!?』
一課の3人はギョッとしたように桐沢さんを見つめた。
徳田 『・・・・・・』
桐沢 『・・・・・・?』
浦田 『・・・・・・』
園田 『・・・・・・』
桐沢 『どうした、席に着け』
徳田 『・・・・は、はぁ・・・・・』
3人は多少挙動不審になりつつ私の後ろの席に座った。
徳田 『・・・・・聞いたか?』
園田 『はい。な、何を考えてるんだ、あの男・・・・・』
ひそひそ話を始める。
浦田 『ウチの課長は「何かあったらお前らの責任だぞ!」が口癖みたいなもんなのにねぇ~』
徳田 『コ、コラッ!』
園田 『シィッ!!』
(・・・・・・そうなんだ)
なんだか妙に誇らしい気分で、私はホワイトボードを見つめた。
事件内容を最初から一通り説明し終えると、
桐沢さんは真剣な表情で一課の3人に向き合った。
桐沢 『相手は堺警視監だ。証拠が掴めなかった時、失敗した時のリスクは大きい。それを含んだ上で、摘発に加わるか、どうする?』
一課の3人 『・・・・・・・・』
桐沢 『この件に関しては、お前ら3人それぞれが判断してくれ。出世街道から外れる危険を冒せないと思うなら、捜査に参加しなくてもいい。こればっかりは・・・・・俺の人生じゃないからな』
徳田 『わ、我々は・・・・・・』
口ごもる徳田さん。
桐沢 『安心しろ、断ったからって、どうこうしようってわけじゃない』
園田 『だ、だったらどうして会議に参加なんか・・・・』
桐沢 『最初に言っただろ。俺はお前らを区別しない』
一課の3人 『・・・・・・・』
桐沢 『堺警視監の件は、もう俺たちの独断じゃなくなった。野村警視の許可を得た正式な捜査だからな』
3人は、なんとも言えない表情で、顔を見合わせている。
戸惑ったような様子・・・・・・だけど、いつもの嫌味な目ではなかった。
桐沢 『どうする?』
徳田 『・・・・はみだし二課だけに任せておけるか』
園田 『その通りだ』
浦田 『そうですね』
桐沢 『じゃあ・・・・参加するんだな?』
徳田 『しょ、しょうがないからな』
あとの2人も頷く。
桐沢さんはニッと笑った。
桐沢 『よし。やるからには、しっかりやれよ。俺が「3人を貸してくれて助かった」と糸井課長に感謝するか・・・・「とっとと引き取ってくれ」と突っ返すかは、お前達の働き次第だ』
徳田 『望むところだ』
桐沢 『ただし俺の評価は甘くないぞ。覚悟はいいな?』
徳田 『愚問だな』
(・・・・いつもながら、すごいなぁ)
3人はきっと、全力を尽くすだろう。
こうやって、気の合わない人からもベストの力を引き出すのが、
リーダーのあるべき姿なのかもしれない。
そんなことを考えながら、私はホワイトボードに向かう桐沢さんを眺めた。
(やっとうちに着いた・・・・・)
明日の摘発に備えて、細やかなところまで確認したり、
打ち合わせをしたりしているうちに、帰りは11時を過ぎてしまった。
(早くお風呂に入って寝よう・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ?)
鍵が開いてる。
(なんで・・・・・?)
朝、ちゃんと鍵をかけて家を出たはず。
嫌な予感が冷たく背筋を撫でる。
私は恐る恐る、部屋に足を踏み入れた。
(なに・・・・・・これ・・・・・・)
アパートに入って、立ちすくむ。
部屋は、たった今、竜巻が直撃したかのような有様。
引き出しはひっくり返され、テレビは床に落ちて、PCデスクは倒されている。
割れた窓から風が差し込んで、切り裂かれたカーテンがヒラヒラと揺れていた。
赤いペンキがぶちまけられたベッド。
壁には「深入りするな」の赤い文字。
「深入りするな」・・・・・・・
文字から滴る赤が、まるで血みたいに見えた。
(う、うそ・・・・・・・)
足元から恐怖が這い上がる。
「深入りするな」・・・・・堺警視監の件以外思い浮かばない。
足がガクガクと震え始めた。
(誰か・・・・・・・た、助けて・・・・・・)
震える手で携帯を取り出す。
私は桐沢さんの携帯に電話をかけた。
桐沢 『はい、桐沢』
あず 『・・・・・・・』
桐沢 『櫻井、聞こえるか?どうした?』
あず 『き、桐沢さ・・・・ん・・・・・・』
桐沢さんの声を聞いた途端、
安心して膝から崩れてしまいそうになる。
気が抜けたのか、言葉がうまく出てこない。
桐沢 『・・・櫻井?どうした?』
あず 『・・・・あ、あの・・・・・・・・・・』
桐沢 『・・・・櫻井?何かあったのか』
ただ事でないと察したのか、桐沢さんの声色が変わる。
あず 『・・・・あの、部屋が・・・・・』
桐沢 『部屋?お前のアパートか?』
あず 『は、はい・・・誰かに荒らされてて、窓が割れてて・・・・』
呆然としたまま、とぎれとぎれに浮かんでくる単語を口にする。
桐沢 『・・・・・お前は、無事か?』
息をのむような沈黙の後、桐沢さんが静かにそう言った。
あず 『・・・はい・・・大丈夫です』
桐沢 『そうか。よかった』
ほっとしたのが電話越しに解った。
あず 『でも、私・・・ど、どうすれば・・・・』
桐沢 『しっかりしろ、櫻井!』
あず 『!』
桐沢 『お前は刑事だろ!動揺するんじゃない!』
桐沢さんの檄が飛んで、ハッとする。
あず 『・・・・・・はい』
(そうだ・・・・動揺してる場合じゃない)
桐沢 『刑事として、お前はまずどうするべきだ?』
あず 『・・・・鑑識を呼びます』
桐沢 『そうだ。できるな?』
あず 『はい。取り乱してすいません』
桐沢 『よし。俺もすぐそっちに行く。お前はやるべきことをやれ。いいな?』
あず 『はい』
(そうだ。やるべきことをやらなくちゃ)
桐沢さんとの電話を終えると、私はすぐに鑑識の電話番号を押した。