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夕方も遅くなり、桐沢さんと課に残った私は、引き続きデータを入力していた。
すると、突然、桐沢さんが自分のデスクをひっくり返し始めた。
あず 『桐沢さん?どうしたんですか?』
桐沢 『ちょっと探し物』
そう言って、引き出しから物という物をすべて出していく。
飴玉、インスタント味噌汁、忘年会の時らしいバカ騒ぎ写真、
手持ち花火、サマージャンボ宝くじ、
冷えピタ、団扇、クーポンマガジン・・・・・。
(なんでそんなフザけたものしか入ってないの・・・・)
呆れ気味で桐沢さんの様子を見ていると・・・・
桐沢 『あった!』
若干驚く。
桐沢さんが取り出したのは、古ぼけた小冊子。
ぱらぱらとめくって、ふと手を止めると、
桐沢さんは一心にその部分を読み始めた。
(何が書いてあるんだろう・・・・)
桐沢さんはそのページに付箋をつけると、PCに向かった。
あず 『・・・・・何かわかりました?』
一通り作業を終えるのを待って、その内容を尋ねる。
桐沢 『ああ・・・・堺警視監が4年前に警視庁に来たのは知ってるな?』
あず 『はい』
桐沢 『その前は、広島県警に所属してたんだ』
あず 『え!そうなんですか?』
初耳だった。
桐沢 『広島で、麻薬摘発件数向上で表彰されてたんだが・・・・見ろ』
桐沢さんはこちらに小冊子を差し出した。
付箋の付いているところを開く。
そこには、今より少し若い堺警視監の写真と、
表彰の記事、麻薬摘発の簡単な概要が載っていた。
桐沢 『摘発場所は桜刃組のシマだった』
あず 『・・・・・!ってことは・・・・広島にいた頃から癒着があったってことですか!?』
桐沢 『おそらくそうだろうな』
あず 『・・・・・根深そうですね』
桐沢 『まったくだ・・・・・』
(あれ・・・・・・?)
どこか沈んだ様子の桐沢さん。
あず 『・・・・・・・あの・・・・・桐沢さん』
桐沢 『なんだ?』
あず 『どうかしたんですか?』
桐沢 『何がだ?』
あず 『いえ・・・・ちょっといつもより元気がないように見えたから・・・・』
桐沢さんはちょっと驚いたように眉毛を上げると、頷いて小さく笑った。
桐沢 『・・・・・花火、やるか』
あず 『・・・・・はい?』
桐沢 『机あさってたら、手持ち花火が出てきたんだ』
あず 『湿気てそうですけど・・・・』
桐沢 『試してみないと解らんだろ。よしっ、屋上に行くぞ!』
あず 『は、はい・・・・・・!!』
私はさっさと課を出て行く桐沢さんを追いかけた。
桐沢 『お。点いたぞ!奇跡だな』
外はすっかり暗くなっていた。
私の隣にしゃがみ込んで、
シューシューと音を立てて火花を散らす花火を見ながら、
桐沢さんは楽しげに笑った。
あず 『ていうか、花火が机に入ってる時点で奇跡ですよ』
桐沢 『ああ、去年納涼会のくじ引きで当てたんだよ。それっきり、机に入れっぱなしになってたんだ』
ハハっと、弾けるような笑い声を立てるけど、
桐沢さんは、やっぱりどこか沈んでいるように見えた。
(でも…話したくないのかな)
花火に目を戻す。
燃え尽きた花火が、一瞬だけオレンジ色に輝いて消えた。
桐沢 『ホラ』
私に2本目の花火を握らせて、
火を点けながら、桐沢さんはポツリと口を開いた。
桐沢 『…俺の親父は、昔広島県警の警視だったんだ』
あず 『え!そうだったんですか!…”だった”っていうことは、もう退職されてるんですね?』
桐沢 『ああ。10年以上前にな…ただ、定年で退職したわけじゃない。当時まだ42だった』
あず 『え…』
広島県警…。
嫌な予感が背中を舐める。
桐沢 『親父が薬物銃器対策課の課長に就任してから麻薬の摘発がガクッと落ちたんだ。それからしばらくして、桜刃組に情報が洩れてることが分かって…だけど、内通者は結局見つからなかった』
あず 『…まさか、お父さんが疑われたんですか?』
桐沢 『いや。だとしたら親父は逮捕だ。息子の俺が警視庁で刑事やってられるわけないだろ』
あず 『あ、そっか…』
桐沢 『俺はそん時、都内の高校に通ってた。広島にはいなかったから、詳しいいきさつは知らないんだけど…』
桐沢さんは3本目に火をつけて、
その鮮やかな火花を眺めながら言葉を続ける。
桐沢 『ただ、親父は課長として責任を取って退職する形になった』
あず 『そんな…』
桐沢 『さっき調べたら、堺警視監は親父が課長になった年に薬物銃器対策課に異動になってた。まさかこんな風に絡んでくるなんて考えてもみなかったよ』
あず 『じゃあ…直属の部下だったってことですか?』
桐沢 『そうだろうな・・・。 で、親父が辞めた年から、地に落ちた摘発件数をどんどん増加させて…それで、表彰されたんだ』
あず 『…情報を横流ししていたのは、堺警視監だったんですか…?』
桐沢 『さあ…そいつはまだ分からない。』
あず 『…情報を漏らしていたら摘発件数が減って、内通者がいると問題になったから…だから、今のスタイルにシフトしたんじゃありませんか?このままじゃ自分の身が危ないと思って…摘発件数を伸ばしながら、両者とも利益を得られる方法に…!』
なんて卑怯なんだろう。
腹が立って、思わず語尾が荒くなる。
桐沢 『その”今のスタイル”の構造を解かないうちはなんとも言えないだろ』
あず 『そうですけど…どうして何も悪くない桐沢さんのお父さんが…そんなのおかしいです…!』
桐沢 『いや、当たり前だよ。おかしくなんかない』
あず 『……え!?どうしてですか?』
桐沢 『前に言ったろ?なにかあった時に責任を取るために、課長がいるんだって…あれは、親父の言葉だ。それに、俺も、そう思ってる』
あず 『……』
3本目の花火が消えて、足元に灰が音もなく落ちた。
桐沢 『…ただ、新たにこういう事実を知ると…な』
桐沢さんは大きなため息をついた。
桐沢 『…やっぱり、やりきれない気持ちも…ある』
あず 『…桐沢さん…』
ぽつりと落とされた桐沢さんの言葉に、
ぎゅうっと胸が締め付けられる。
強くて、明るくて、豪快で…
決して折れない、頼れるみんなのボス。
(抱きしめてあげたい…)
私は自然にそう思っていた。
(だけど…)
ここは、警視庁。
私たちは上司と部下。
私は、そんなことをする勇気はなかった。
せめて今できることは…
私は思い切って桐沢さんの手を握った。
桐沢 『……!』
桐沢さんは驚いたように身を固くして、息をのんだ。
あず 『……』
桐沢 『…あ、分かったぞ』
桐沢さんはパッと私から離れた。
桐沢 『さてはお前、俺を慰めてるつもりなんだろう?』
そういうと、ぐいっと私の目を覗き込んできた。
あず 『……っ!』
急に近くなった距離に、心臓がドキンッと大きく高鳴った。
真剣な、でもどこか悲しそうな瞳に、吸い込まれそうになる。
桐沢 『櫻井……』
肩に置かれた桐沢さんの手の温かさ。
いつもより少しだけ甘い声の響き。
桐沢さんの瞳が迷うように揺れた。
あず 『桐沢さん……』
昨日のことが、頭を過ぎる…
(やめて。せっかく忘れようとしたのに…)
ふっと、息を吐くと、桐沢さんは冗談めかして言った。
桐沢 『よし。んじゃーここはおとなしく慰めてもらうか!』
あず 『え?』
にやりと笑った次の瞬間、桐沢さんはふわりと私を包み込んだ。
あず 『!!』
心臓が破裂しそうなくらいドキドキし始める。
桐沢 『……』
あず 『……』
桐沢 『…櫻井。ありがとな』
あず 『……』
何も言えなかった。
桐沢さんの心臓が、私と同じくらい、
ドキドキと高鳴っているのを感じたから……。
桐沢ルート2周目なんですが・・・・
前回のスパエンの選択肢忘れちゃった・・・・
なんだか今回自信ない・・・( °д°)・・・・