『〇〇ちゃ…ん……』
『〇…〇……ち…ゃん……』
『…………………』
『〇〇ちゃ…ん……こっちにおいで………』
『〇〇……こっちおいで………』
『〇〇ちゃ……出てお……い……でよ……』
背後から、くぐもった低い声でハッキリと聞こえてくる 私を呼ぶ声…。
目を開けると私は真っ暗な部屋の中にいる。
距離感も掴めない真っ暗闇の中で、背後から途切れながらも自分の名前を呼ぶ声がしている。
背筋に悪寒が走る…
恐る恐る後ろを振り返ると、真っ暗闇の中にポツンと古い昔ながらの硝子の引き戸が ハッキリクッキリと存在している。
その向こう側……
黒いボヤッとした人影が映っている
『〇〇ちゃ… おい…で…………』
『〇…〇……こっち………おい……で……』
黒い人影が一人二人と増えていき、まるでソレが硝子戸にぴったり張り付いているかのような ベタッとした影を映し出している。
(イメージ)
私は 心の中で「ぁぁ……どうしよう」と呟いた。
今日までの日々積み重ねてきた、自分のダークサイドの行いが満タンになってしまったんだ…
だから そんな私を呼びにきたのか……
ついに…やってしまったんだ…
暗闇の中、不安でその場にしゃがみ込み 体を小さく丸めて、私は自分がここにいる事に気づかれないようにと息を潜めて様子を伺った…
硝子戸の先にいる影の正体は、本当は次のステージを一緒に過ごしていく仲間かも知れないのに…。
本当は飛躍するために、その箱から飛び出しなさいと呼びにきたガイドかもしれないのに…。
そう思ったりもするのだけど、判断がつかず ただ黒い影に警戒して、その部屋の隅から動けないまま ジッと硝子戸を見つめていた。