「季節おりおりの花々に囲まれて、育まれる私たちの日常の中にあって
いつも変わりなく咲く一輪の花・・・それは、「家族」と言う名の花園に咲く
愛する妻の・・・優しい母の・・・笑顔花です。」
ちょっとクサイ台詞でしょうか?
けれども、そんな言葉がぴったりだと思える、素敵な笑顔のご遺影が、40代の女性をお見送りする
式場の花祭壇に掲げられ、多くのご友人やご親族の涙を誘うご葬儀がありました。
学生時代からのご友人が述べられたご弔辞の中には、当時から色あせない泣き笑いのエピソードが
たくさん盛り込まれ、家族以上に分かり合えていただろう青春時代にタイムスリップしたかのように
声は震えながらも楽しげに語っていらっしゃいました。
まだ中学1年生の一人息子さんを残して逝かれる無念は、同じ母親としても切なく、気丈に対応して
おられるご主人の隣に座った、不安そうな表情の彼には、かける言葉が見つかりませんでした。
メモリアルボードに飾られた写真は、どれも家族3人で出かけられた旅先でのスナップや、お子さんの
入学式・卒業式の際の幸せそうな笑顔、どれも明るく元気パワー全開の母親らしいお姿ばかりです。
PTA活動にも積極的に力を尽くしていらしたそうですから、わが子のみならず大勢の子どもさん達や
保護者の皆さんにも慕われ、「〇〇くんのおかあさん」として人気者だったに違いありません。
2年ほど前に癌の宣告を受け、手術や辛い治療にも一切弱音を吐くことなく、前向きに生きる望みを
持ち続けて闘病に向き合ってこられたという故人。ご友人がお見舞いに行っても、かえって元気を
もらって帰るほどだったと、語っていらっしゃいました。その強さはどのように培われていたのでしょうか。
お若い方は病魔の進行も速いために、別人のように痩せてしまわれることも多いようですが
このお母さんも、お元気な頃の写真と同じ方には見えないほど、細く小さくなられてはいたものの
安らかな寝顔は、ご遺影の笑顔ほどではないにしろ、かすかに微笑んでいるようにも見えました。
会葬礼状には、故人の生前のご様子に加え、ご家族の感謝の思いが切々と綴られ、「息子のことは
心配しなくても、立派に育てていくから・・・」と父親の決意も添えられていました。閉式後の献花の際
長い列をなしてご友人の皆さんが柩にお花を手向けておられる間、式場の隅に隠れるように立ちすくみ
顔を覆って震えながら、泣いていらっしゃるご主人の大柄な背中が、悲しみの深さを物語っていました。
ご出棺の際にも、喪主の隣でご遺影を抱くご長男の瞳から、ぽろぽろと大粒の涙がこぼれ落ちています。
尽きない涙を我慢することなく、悲しみを吐き出しながらゆっくりと日々を過ごし、お母さんの笑顔と
向き合えるようになったら「どうか、君がしっかりとお父さんを支えてあげて欲しい」と、心の中で願いました。
お母さんはきっと、愛するご家族が強く生きてゆかれることを、いちばん望んでおられるのですから・・・。
父と息子がつなぐ手には、いつも母のぬくもりが重なっているはずです。
朝、お二人の目覚めと一緒に、胸の中の笑顔花も明るく咲き開き、「今日も元気に頑張って!」と
パワーを授けてくださることでしょう。